キー局と系列局とは?

テレビ局のビジネスモデルを理解しているテレビ局社員は意外と少ないのですが、そこで今回はキー局と系列局の関係性を簡単に書いてみたいなと思います。

総務省が2012年に公表した放送局の経営分析に関する調査研究研究結果(概要)の内容を元に一部書いております。売上比率に変動があるにせよ8年前の内容とは言え、基本的には変わっていないと思います。なお、基本的には在京キー局の地上波においてのビジネスモデルとなり、有料放送事業者とは異なりますのでご了承下さい。

キー局依存の系列局

先ほどの資料が古いのですが、今でもそんなに変わらないかなと思います。その中で面白いグラフがあったので抜粋しようかと思います。

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放送局の経営分析に関する調査研究研究結果(概要)より引用
上記の2008年のシェアとなりますが、キー局は今でも5社しかなく、当時は全体の8%の社員しかいないのにも関わらず、テレビ業界全体の営業利益の約75%を稼ぐという事業構造でした。

なぜ、このようなキー局依存の系列局体制になったかと言いますと、歴史を辿ると長くなりますが、いわゆる「県域放送免許制度」に由来する部分もあり、これは1957年のいわゆる「大量一括免許」を行った田中角栄郵政大臣時代まで遡ります。詳細は長くなるので、ご興味がある方は以下をご参照下さい。
放送局免許をめぐる一本化調整とその帰結 -NHK文化研究所

その後、1970年代のネットワーク再編という現在の「系列局」と呼ばれる放送網が確立していく行くこととなります。現在だと5系列あります。
・日本テレビ系列
・テレビ朝日系列
・TBS系列
・テレビ東京系列
・フジテレビ系列

県域放送と系列局の仕組み

さて、この「県域放送」というのが鍵となります。
例えば、関東で流れているゴールデンのテレビ番組が関西でも同じタイミングで見れますよね?傍から見ると「関東でも関西でも同じだよね!だから同じ会社じゃないの?」と思われるかも知れませんが、放送局の人からすれば違うのと下手をすれば怒られます。

例えば、これを読まれている方が「しゃべくり007」を見ていると仮定しましょう。関東だと「日本テレビ」として放送しており、関西だと「読売テレビ」として放送している事になります。つまり、それぞれの地区の放送免許によって、放送している事業者が異なります。そのため、今回のケースで言えば、関東広域のみで放送できる免許を持っている放送局たる日本テレビが自社のネットワーク(日本テレビ系列)に加盟している各道府県の系列局の電波をお借りして、全国に番組を放送している事になります。

当然ながら、本数こそ限られているものの系列局が全国に番組を届けることもあるので、その場合は、各都道府県の電波をお借りして放送するという事になります。例えば、「ミヤネ屋」や「秘密のケンミンSHOW極」などは読売テレビが制作し、日本テレビ系列を通じて全国に放送しているので何か番組内でトラブった時は日本テレビではなく、読売テレビの問題となります。

ただし、いわゆる放送事故と呼ばわれる物に関しては、電波上の放送局間の責任分界点として、何らかの事故が発生して当該局において放送出来なかった場合は、その当該局の責任となり、他の局には責任がありません。上記のケースで言えば、「ミヤネ屋」の番組内で「日本テレビ」においてCM送出が正しく行われなかった場合は、あくまで「日本テレビ」の責任となり、「読売テレビ」には責任はない事になります。


最後に余談ですが、基本的な構図としては…キー局と地方局を代表する関西地区と東海地区という構図で大抵喧々諤々しており、特にキー局と準キー局(特に関西)は犬猿の仲である局が多いです。例えば、テレビ朝日系列のテレビ朝日と朝日放送の関係性は業界内でも有名です。まあ、朝日放送の方がテレビ朝日よりも早く開局しているなどと言った理由もあります…(笑)

以上が全国でテレビを見れる仕組み系列局の仕組みとなります。


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