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三谷八段、安斎八段、李八段最後の登山

三谷哲也八段は安斎伸彰や李沂修八段などを誘って山に登っていた。

低い山から始め、どんどん高い山へ挑戦していく。

三人で登った最高峰は日光白根山で標高2577メートルだ。

登山の行程を決めるのは三谷の役目。

始発で4時間かけて山へ行き、7時間登山。
4時間かけて終電で東京に到着するのが三谷のプランだ。

『日程がきつすぎるんじゃないか?』と安斎は思ったが
李は異議を挟まない。
安齋はこの強行軍を了承する。

予定よりやや遅れたため、日が沈んでしまった。
真っ暗な中、三人は下山する。

『ヘッドライトを用意してなく、スマホの灯りだけが頼りでした。
進行方向に崖などがあったら大惨事になっていたと思います。
人生で最も死を意識しました』
と安斎八段は振り返る。

暗闇の下山という危機を潜り抜けた直後、
『終電が近いのでお風呂は15分だけです』
と三谷八段に言われた安斎八段と李八段は顔を見合わせた。

帰路で
『こんなにきついとは思わなかった。
安斎君が止めないから大丈夫だと思ったのに…』
と李八段。
直後に『俺もそう思ったよ』と
安斎八段は返答した。

帰りの電車は行きの何倍も長く感じたという。

この日光白根山が三人で行く最後の登山になった。

二人が断ったのではなく、
三谷八段が誘わなくなったのだ。
三谷は一人でさらに険しい登山に挑戦する。

プロ棋士が旅行の日程を決めると
『登山だけ』とか『電車に乗るだけ』
などという『遊び』がない日程になることがある。

『登山に行く』と言っていたら
食事も風呂も観光もなく、
『登山』だけの日程になる場合がある。
避けたいならしっかり意見するのがいいでしょう。

ちなみに安斎八段は深夜バスや徒歩で京都に行く旅行。
李八段は本多忠勝など歴史上の人物ゆかりの場所へ旅行することになった。


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