お客さんの来店・来場を望めない今は事業ドメイン(自分は何屋か?)を見直す機会

来店・来場の商売のピンチ

不要不急の外出を控えるべしという状況でお客様の来店・来場に頼る店舗・イベントの商売はすべてが大変な状況になっていると思います。

公的な支援を頼りながらひたすら耐える・状況が過ぎ去るのを待つ、というのもひとつのやり方だとは思いますが、今の状況が1ヶ月・2ヶ月で終わるのか、半年・1年、あるいはそれ以上続くのか、誰にもわからない状態であるのも間違いのないところです。

そのような中、いま何か考えることはないか、できることはないか。そんなヒントになればと思ってこの記事を書いています。

ここでの提案が事業ドメインの見直しです。

事業ドメイン(自分は何屋か?)とは

マーケティングの世界で有名な話なのですが、昔、アメリカで「自分たちは鉄道事業の会社だ」と思っていた会社は鉄道の衰退とともに衰退し、「自分たちは輸送事業の会社だ」と捉えた会社は航空事業への転換に成功したというのがあります。

日本にいる私たちの身近な例としては、フィルムカメラからデジカメへの移行に伴って、自らをずっと「フィルム会社」と捉えていたコダックは衰退し、「ナノテクノロジーの会社」と捉え直した富士フイルムは化粧品などの会社として時代の変化に見事に対応することができました。

このような、「自分は何の事業の会社なのか。何屋なのか」というのを事業ドメイン(=領域)といいます。
事業ドメインをどう定めるかで会社の進む道、戦う場所などががらりと変わってきますし、時代・環境の変化にうまく適合していけるのかどうかも変わってくるわけです。

では、いま困難に直面している店舗・イベントの商売にとって具体的にどのような事業ドメインの見直しがありえるでしょうか? いくつか考えてみました。もし何かのヒントになることがあれば嬉しいです。

例えば碁会所・囲碁サロンでは

私は囲碁業界と関わりが深いので、まずは碁会所・囲碁サロンについて詳しくみてみます。

場所貸し業・道具貸し業だとするならば来店がなければ全く成り立たないわけですが、お客さんに提供している価値は何かを1つ1つ見直してみるならば、常連さんたちのコミュニティであったり、月例リーグ戦のようなイベント企画であったり、囲碁教室であったり、席亭や囲碁インストラクターの指導碁であったりするはずです。

これまで場所貸し・道具貸しの商売だと思っていた(←固定観念?)が、見直してみたらコミュニティーサービス、教育サービスというのが事業の本質なのかもしれない。それならばお客さんの来店が困難なときにはオンラインのサービスを展開できることになります。

そしてこのことには副産物があって、1つには足を悪くして来店できなくなったお客さん(高齢層の多い碁会所で現実に耳にする話です)へのサービスが提供できますし、何よりもこれまで地域に限定されていた商圏が全国、全世界に広がることにもなります。

飲食店では

例えば飲食店。「場所と食事を提供する事業」から「食事を提供する事業」へ捉え直せば弁当や宅配のことを考えていくことになります。調理技術・レシピにこそ真の価値があって、それを活かす方法もあるかもしれません。

また、特に夜のお店の場合、お客さんに提供しているいちばんの価値は実は飲食物でなく、お店の人との、あるいは常連さん同士でのコミュニケーションなのかもしれません。それならばオンライン酒場の事業展開が考えられます。

整体師は

飲食とともに来店必須の度合いの高そうな業種として整体師を例にあげさせていただきました。
来店いただいての施術が必須に思えますが、もしかすると提供している真の価値は人間の体の仕組みについての深い理解なのかもしれません。まさに事業ドメインの見直しになりますが、やはりオンラインの展開が可能でしょう。

最後に

なに無責任な御託を並べているんだ、店舗を持っている意味もなくなるじゃないか、と思われるかもしれません。

早くからテレワークに移行したGMOの熊谷社長は、業績が落ちないことがわかって、駅前の一等地にオフィスを構えることへの疑義が生まれたと書かれていました。

三重大学は前期のすべての学部・大学院の授業をオンラインで行うと発表しましたが、これもいわば。広大なキャンパスと多くの建物の必要性が揺らぐ話でもあります。

いま私たちが直面しているのは、もしかすると一過性の問題などでなく、文明史における大きな転換点かもなのかもしれないのです。
幸か不幸か(不幸に決まってるだろ!と怒鳴られそうです)接客に追われる時間の減った今、じっくりいろいろ考えてみる機会になるのではないでしょうか。

Zoomでのフリーディスカッションなどもやっていければと思います。

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