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【囲碁】第78期本因坊戦第7局のちょっとした感想
こんにちは。
IGOcompany【U】です。
囲碁をビジネスに起業して「宇佐美囲碁教室」っていう教室を運営したり、武蔵小杉の「永代塾囲碁サロン」にて指導碁や交流会をしたり、
「新百合囲碁学園」の学園長を任されたりしながら、世田谷や麹町、大学などでも囲碁を教えて、ご飯を食べてます。
今は書籍を鋭意作成中だったりします。
(言い訳なんですが…)毎日noteが、ちょっとだけ滞っている時は、本を書いている時が多いです。
とはいえ、
有料記事を購入してくれている人に報いるためにも、しっかり発信は続けていかないといけないなと思ったりもしています(すみません!)。
いや、ペーパーバックを含めると3回目の出版なので、少しは慣れたかなと思っていたんですが、本を書き終わった後の出版作業が1日では終わらず、何度も失敗して、ちょっと気が滅入っています(笑。
本当だったら、
昨日、おとといで本因坊戦の感想でも書いてみようかなと思っていたんですが…。
ちなみに、
前回出版した、
【囲碁】三々定石の基本事項を総まとめ あなたは三々定石を知っていると自信を持って言えますか? | 宇佐美 太郎 |本 | 通販 | Amazon
は、ありがたいことに2ヶ月弱で179冊のご購入がありました!
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囲碁の本って、棋士の先生でも千冊、二千冊くらいしか出版されないようですので、そういう意味では(本屋に置いてあるワケでも、特に宣伝をしたワケでもないので)結構善戦しているんじゃないかと思います。
今思うと、だいぶ文章が拙いトコロがあるんですが、まあ、最初の1冊なので(申し訳ありませんが)大目に見てもらって。
これから10冊、20冊と継続的に書いていけば成長していくんじゃないかと思っています。引き続き、頑張って行きます。
それから、今日初めてデータの詳細を見たんですが、ひとりブブラジルの方が購入してくれているようです。
なんか「おぉ」って思ったりもしましたね(嬉しい)。。。
まあ、
本の話はこの辺にして、
今日のnoteは、
【囲碁】第78期本因坊戦第7局のちょっとした感想を書いてみます。
以前、
第3局の大盤解説会に行ってみたって記事を載せましたが、
今期の本因坊戦は、大盤解説会にも参加して、仲間内で研究もしたり、生徒さんに質問されたので詳しく調べたりと、個人的には「全局しっかり勉強したな」ってシリーズでした。印象深い着手がいくつもありますね。
5局目、6局目も1日目の棋譜を教材の参考にしたりしたので、今思えば、全部の対局をちゃんとnoteにまとめておけば良かったなと。。。
さてさて、
今回は、
第7局目のちょっとした感想です。
まあ、僕が偉そうに解説するのはオソレオオイので、こういう考え方もあるんだなと読んでいただければ!
少しでも参考になれば嬉しいです^^。
個人的には、封じ手が勝負の綾になったんじゃないかなと感じました。
本因坊戦は、来期から5番勝負になって、封じ手そのものがなくなりますので、最後の(また復活するかもしれませんが)7番勝負で封じ手がポイントになったっていうのは、ちょっと感慨深いものがあったりもします。
それでは、書いていきます!
【第7局1日目の棋譜 1手目~70手目まで】
7番勝負は、1局目から手番は黒白黒白と交互に打ち進めるんですが、
7局目は握り直し、
黒が井山文裕本因坊、白が一力遼棋聖となりました。
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【黒17のツケから仕掛ける】
白16手目まで、落ち着いた布石だなぁと思っていた瞬間、
黒17のツケ。
こっから仕掛けるのは、その場の思いつきだけでは難しいので、井山先生の研究手なのかもしれません。
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この部分を詳しく研究しようと思って、AIにかけてみたりもしたんですが、難しくて結論は出なかったです。
生徒さんには、強気なら上ハネ、落ち着いて打つなら下ハネ、難しくしたくなければノビもありそうですねと気持ちで着手を説明しました。
【黒17手目では】
黒17手目では、AやBのハサミが好点になりますので、そちらに打つ手もあったでしょう。
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19路盤を打つ時の着手の優先順位は、
基本的には
①自分の石の強弱
②相手の石の強弱
③どちらもなければ、広いトコロ
と考えますので、黒(自分)の弱い石がなければ、白(相手)の弱い石を攻める発想が自然です。
【白30まででひと段落】
研究しても結論が出なかったので、ひと段落の白30手目までの局面を示してみます。
下の図をご覧になって、どう思いますでしょうか?
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級位者の内は黒17、19の二子が取られて悔しいと感じるかもしれませんが、
出来た図を見ると黒の石が上に運んでいて先手なので、僕は、ちょっと黒が打ちやすい局面なのかなと思いました。
【黒31で主導権を取ったように感じました】
左下隅、黒31を先手で打てれば、黒は満足でしょう。
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【白36をどう打つか】
白32から頭を出すように打ち、白34に対して黒は35のハネ。
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白36の手は、このnoteを読んでいる方のほとんどはAにオサエる一手だと思います。隅で小さくてもしっかり生きておくことをオススメします。
部分的に多少悪くなったって、そう打っていて十分ですね。
【陣笠の愚形はツライけど、我慢】
とはいえ、
実戦は「黒に封鎖されて小さく生かされたら、白はもう勝てない」と思ったのでしょう。白36と上にハネました。
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黒37のアテに対して、まさかツギは打たないだろうと見ていたんですが、なんと白38のツギ。この形は「陣笠」の愚形と言われているので、教室の生徒さんが打ったりすると、ちょっと悪い形ですね、って注意したりする手になります。
一力先生は、それを百も承知で、我慢の進行を選びました。
凄い手厚いと言いますか、じっくりしていますね。二枚腰的な(昭和の方だったらワカル表現)。
【白48のツギから形勢は黒に傾く】
白44の手は、石が張っていますね。
普通は、逃げは一間、攻めはケイマと言いますので、立場が弱い時は一間トビで逃げるのが普通なんですが、貴方も弱いでしょうって主張しているような着手です。
この後、
そんなに不自然な手ではないのですが、
白48のツギから形勢が黒に傾いていったようです。
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白48では、やはり左下隅の白石に一手入れておきたいトコロだったんじゃないかと思います。
【AIにかけてみると】
白48ではどう打つのが良かったかというと、白1の出切りから黒△の三子をしっかり取っておくのも有力だったようです。
この進行も良いと感じますが、一力先生はこの展開を良しとは思わなかったんでしょうね。
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【白70手までの進行】
黒49と急所に迫り、黒51と出切りを防ぎ、白52に対して(黒53と白54を交換してから)黒55と分断していった段階では、黒が80%以上評価値が良くなりました。僕のAIではそこまででもなかったんですが、中継のAIの評価値は90%を超えていたようです。
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白52の石を飲み込みながら、黒の石が強くなっていったので、白22の左に切る手の威力もだいぶ軽減されました。
黒57は手厚い一手で、ここで白を分断していく発想も自然だと思います。
白70のカケツギは形が良いですが、生徒さんには白Aのカケツギもオススメしておきました。根本をツナギましょうと。
さて、ここで黒の井山先生の封じ手です。
【僕が勝負の綾と感じた封じ手について】
先程も書きましたが、
ずっと続いていた歴史ある本因坊戦の(とりあえず)最後の封じ手です。
個人的には、AのハサミやCのカタツキくらいで打っていそうです。
少し甘いかもしれませんが、Bのカケから決めて打ってしまうような発想もどうかなと思いました。
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その最後の封じ手をどこに打ったかというと「黒71!」。
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この手は、部分的には悪手の意味もある難しい一手です。
決めてしまうことによって、左上隅の白石を強くしつつ、三々への入る味もなくしているからです。
ただ、このようなコウダテのような一手を封じ手にするような発想は、二日制の碁のテクニックのように使われることもあるのです。
そこに打てば、相手は必ず応じるワケで、そこからのことを一晩中考えられるワケですよね。
昭和の頃は、こういう露骨な手を打ってしまうと、美しくないみたいな感覚もあって、選び難いみたいな感覚が棋士の皆さんの中であったりもしたんですが、令和の今は、ルールの範囲内である種のテクニックとして、普通に受け入れられています。
で、
僕はこの手が勝負の綾と表現したんですが、
二日制の碁じゃなければ、封じ手の手じゃなければ、井山先生も黒71手目でここには打たなかったと思うんですね。
(井山先生の着手に、僕が何かを言えるワケでもないんですが)封じ手を決めないといけないから、とりあえず相手が応じる所に打ってみようって感覚も(少しは)あったんじゃないかと思います。
この交換をしてしまった事で、ずっと良かった黒の形勢が、だんだんと白に傾いてしまった、そんなキッカケの着手になってしまったように、僕は感じてしまいました。
本因坊戦最後の封じ手が、勝負の綾となってしまったんじゃないかと。。。
youtubeでこの後の中継もありますので、もし宜しければご覧下さい。
この後に、上辺の白模様が大きくなってしまい、白が優勢を築いていきます。
もちろん、ここからも様々な応手があるのですが、
結果は、一力先生の白番中押し勝ち。
第78期本因坊戦は、一力先生が制しました。
公)本因坊戦第7局は一力遼棋聖が井山裕太本因坊の12連覇を阻み、タイトル奪取。棋聖、本因坊の二冠になり、大詰めを迎えている名人リーグで優勝すれば、史上3人目の「大三冠」リーチです。逆に井山さんは11年ぶりの三大タイトル保持数ゼロに。シリーズは世代交代を告げる画期となりました。 pic.twitter.com/zXdhQDP2q5
— 朝日新聞囲碁取材班 (@asahi_igo) July 20, 2023
この10年、勝負の世界の頂点で、最も重い責任を背負って誰よりも長く戦い続けた人
— 大淵浩太郎(囲碁棋士) (@Q3pdPrgL5SDiDhi) July 20, 2023
それは大谷翔平選手でも羽生結弦選手でも藤井聡太先生でもなく、囲碁棋士の井山裕太先生だった
闇夜を越えて囲碁界に光が当てられるようになった時、この時代の井山先生の戦いは永遠の伝説になると信じてる
絶対に pic.twitter.com/0uPglaXhFj
本当に見ごたえのある本因坊戦7番勝負でした。
一力新本因坊、おめでとうございます!
そして、井山先生も、本当に素晴らしい対局を見せていただき、ありがとうございます!!
以上、
簡単ではありますが、
第78期本因坊戦第7局の(あくまで個人的な)ちょっとした感想です。
最後まで読んでいただき、
ありがとうございました!
また次回のnoteでお会いしましょう!!
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