
Photo by
hinata_toriko
【ショートストーリー】価値のない物を売る古道具屋。
その店は、アンティークショップと呼ぶには、
雑然としすぎていた。
骨董屋にしては、
あまり値打ちのある品物は置いていない。
まさに、古道具屋であった。
ほこりをかぶった書棚。
ところどころ欠けている火鉢。
よれよれのシルクハット。壊れた柱時計。
そんな物が秩序なく、ところ狭しと置かれている。
彼女は、2週間に1度程度の割合でこの店に足を運ぶ。
腕時計を探すためだった。
ただ古いだけで、
修理しても動くことのないような時計を
集める癖があった。
趣味というより、癖と言った方が適切だった。
彼女は、その時計が指している時刻に、
言葉で表わすことのできない感情を抱いていた。
何十年か前のその時刻に、
この時計はどんな状況にあったのか。
あれこれ想いをめぐらすことが好きだった。
いいなと思ったら応援しよう!
