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ローカルメディア、岐路ふたたび 【think local】
25年前に創刊し、本県にフリーペーパーの無料宅配というフォーマットを定着させた情報誌が休刊となった。10年少々前は私自身も関与していたこともあり、創刊以来心血を注いだT社長、生え抜き編集長のY氏には労いの言葉を贈りたい。
力尽きたというより、よく今までもったなというのが正直な感想だ。フリーペーパーの無料宅配というビジネスモデルは、とうに過去のものになっていた。
フリーペーパーの発行原資は広告料だ。当該誌のページ数は私が関わっていた時期よりも100ページ少ない。広告料収入の激減はクオリティーにも現れていたので、テコ入れはあったが休刊は予想できた。
25年前、当該フリーペーパー創刊によりいくつもの有料情報誌(私が異業種サラリーマンながら編集協力や連載を執筆予定だった数誌を含め)が消滅し、競合誌やタブロイド紙など多くのフリーペーパーが創刊・追随した。
現在それらの多くは姿を消し、いよいよその本丸にも及んだといったところだろう。メディア後進地域の本県は、これからが新たな岐路にあると思える。
ネットを含めて情報が無料で入手できる環境が当たり前になってしまった地域は、案外「弱い」と思う。なぜなら、
ネットは知りたいことは教えてくれるが、知らないことまでは教えてくれないからだ。
そこに紙媒体の意義がある。ローカル誌とはいえ相応の有力誌が消えるということは、知らない情報に触れる機会の喪失だ。目当ての情報を見つけた誌面の中に、何か刺激を受ける知らない情報への接触ができなくなる。話題の映画の上映館を調べたら近くに新しいレストランが開業していたから行ってみようと、というような行動喚起はダウンしよう。
つまり地域(経済)にとっては、いいことはないということだ。
新聞、ラジオ以外(テレビ局は、無い)の本県所在の情報産業事業者が新たな媒体(特に印刷・紙)を創出しようという動きは、今のところない。
もしこのメディア後進地域にチャンスがあるとしたら、フリーペーパー各社が避けてきた、眼中になかった有料情報誌しかあるまい。そのためには地方の印刷会社や制作会社の一事業ではなく、出版社(出版ビジネス)として成立させる覚悟は要るだろう。
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