駿馬の血を継ぐ若駒たちへ 【sport】
三菱自動車でモータースポーツに長らく関わってきたOBとして、ささやかな支援をしてきた現役社員プライベートチームが送り出したエクリプスクロスPHEVがデビュー戦でクラス準優勝という成果を得た。
ごく僅かの人たちに向けてではあったが、彼らの活動への支援を呼び掛けるために書き連ねた一文を改めて記す。
(photo by 鮫島大湖)
駿馬が目を覚まし再び大地を駆けようとするその陰で一頭の若駒が生まれた。自力で立ち上がったその馬は、連戦無敗の名も受け継いだ。
三菱エクリプスクロスPHEVラリー。国内ラリーに出場するための競技車両だ。しかし三菱自動車が再開を表明した正規のモータースポーツプログラム下で生まれたものではない。三菱自動車の技術センターで日々、商品を磨き続ける若者たちがグラスルーツのラリーフィールドに送り出すために自力で生み出した一台だ。実力は未知数、趣味じゃないかと言われればそうかもしれない。だが私には分かる。彼らが見つめる先には間違いなく一人ひとりのAmbitionがある。
「モータースポーツは必ず販売促進に貢献する」。30数年前、そう信じてマーケットの最前線で売り手のマインドチェンジも含めて孤軍奮闘した若き日の自分の姿が彼らと重なる。
成果を得るまでには長い時間を要した。販促面に限らず、自費でサービスエンジニアをラリーやレースの現場に帯同し限られた時間での確実な整備、トラブルシューティングのスキルを獲得させてきたことは数年後、海外ラリーへのディーラーメカニック派遣という三菱自動車のオフィシャルな活動としても結実した。
そう、モータースポーツは人材育成にも大きく貢献できるのだ。彼ら技術者が仕事を終えた後の自らの時間と労力を費やして形にした一台を通して得られるものは、間違いなく三菱自動車の商品に投影される種子となるはずだ。
ありがとう。私たちが大切にしてきたSpiritを受け継いでくれて。君たち若駒の奮闘に期待する。
2022年4月
中田 由彦 (コラムニスト/三菱自動車OB)
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