イギリス発音について
SSBE (Standard Southern British English)
イギリス発音と一口にいっても、本当に様々な発音があります。皆さんよくご存知のRP(Recieved Pronunciation)、London の下町で話されるCockney, Manchester のMancunian Accent, Newcastle のGeordie accent, 数え上げればきりがありません。
ここで取り上げている発音は、主にイギリス南東部のアクセントと言われる、SSBE (Standard Southern Briitish English) と呼ばれるものであり、RPではありません。
日本で人気らしいRPは、1869年に初めてその定義が使われうようになったそうで、元々、裕福な特権階級の人々が話すアクセントの事を呼んでおり、社会的には上流階級との強い関連性がありました。王室メンバーや英国のCostume Drama(時代劇)等で聞かれる発音です。とても上品で教養高そうな、美しい響きではありますが、現代の英国社会で一般的に広く話されているか、というと、そうでもありません。ささっとググってみたところ、英国人口の5%しかRP話者はいない、という数値が出てきました。
ここで扱うSSBEは、階級システムや居住地に関係なく、一番「クセのない」英語とされており、辞書に出てくる発音記号もSSBEの発音となっています。いわゆる「標準アクセント」です。
冒頭に書いたように、イギリスには様々な発音があり、南と北では全く違います。(日本でも違いますよね!) ここでは触れませんが、北の人たちの発音もとても温かいフレンドリーな響きのする、味わいのあるアクセントです。(主観ですが。)是非、いろんなアクセントに触れてみて頂きたいと思います。
イギリス発音の特徴
1.喉が開き気味で鼻腔をあまり使っていない
試しに、鼻をつまんで「あいうえお」と言ってみてください。ちょっと鼻にかかったような、鼻詰まりっぽい声になりませんか?イギリス人がこれをやると、鼻をつまんでいる時とつまんでいない時と、全く変わらない音で「あいうえお」の母音を発音するはずです。
全員がそう発音するというデータはありませんが(笑)、少なくとも私の周囲のイギリス人はそのように発音しました。
この発声方法を真似すると、ちょっとイギリス人っぽい発音に近づきます。
どうなっているかというと、まず、鼻腔をあまり使っていません。
風邪で鼻が詰まった時に英語を話すと、いつもより上手に聞こえる、、、という経験がある方はいらっしゃいませんでしょうか。鼻腔をあまり使わないイギリス人の状態に自然となっているんでしょう。
また、日本語話者は一般的に声が高く、イギリス英語話者は声が低い、と思いませんか?データを取ったわけではないですが、テレビを見ていてもイギリスの女性は日本女性に比べて、声が低い人が多い印象です。
イギリス英語の発音は、日本語の発音に比べて、舌の位置が低い事が多いです。少し舌の奥が下がっていて、その結果喉が日本人より開いている状態である事が多いのです。
その結果、声も低めになるのでは、と思います。
お医者さんに行った時に「喉を見せてください」と舌の奥を下げられる事があるかと思いますが、あれを自力でやる感じです。
あくびをした時も舌が下がります。次にあくびが出た機会に、ふっと自分の舌の位置を意識してみてください。できれば、あくびが終わる前に舌の位置をそこで止めてみてください!
喉が開いている感覚がわかるかと思います。
合唱や声楽をやっている方は、この感覚はわかりやすいんじゃないかと思います。
舌を下げる感覚がつかめたら、舌を下げた状態で鼻をつまんで「あいうえお」と言ってみてください。どうでしょう?出来たかな?
実際の母音や子音の発音の話に入る前に、まだちょっと話したい事があるので、続きを読みがてらにでも、「鼻をつまんであいうえお」を練習してみてください!
2.イギリス発音は「縦方向」のイメージ
アメリカ発音って、文章ではうまく説明できないのですが、舌も口も横に開き気味の音がします。
例えば「hot」という時、アメリカ発音は「ハット」と「ホット」の間、でもかなり「ハット」に近い音を出します。
イギリス発音の「hot」は、舌は細く、後舌は下がり、口も縦に開いて「ホット」と発音します。「ハット」には絶対聞こえません。ちなみに日本語の「お」は、口周りをあまり動かさず、舌も比較的上部に位置して平たい状態で発音するので、日本語の感覚で「ホット」というと、縦の音の感じが足りないです。
「apple」の母音も、それぞれの音の特徴が如実に現れる音です。アメリカ発音では、舌が横に広がり、「あ」と「え」の間のような音になりますよね。舌の位置も高めで、舌の横の部分が上の奥歯あたりについているのではと思います。
対してイギリス発音の場合は極めてシンプル。少し笑っているようなイメージで口を開け、舌は下顎の中に収めます。舌の横端が下の奥歯の裏に触れるようにセットしてください。その状態で「あ」というと、日本語の「あ」に近い音になります。といっても、日本語の「あ」は、人それぞれ違っていて、どちらかというと「cup」の母音に近い人も多くいるので一概には言えないのですが。
とはいえ、イギリス発音は、舌も口も、アメリカ発音の時ほど横方向に広がる事がなく、縦方向を意識したほうがコツがつかみやすいと思います。アメリカ発音は舌の定位置も少し高めなので、ちょっと喉が潰れたような声になりがちですが、イギリス発音は舌の定位置が低めなので、喉の開いた声になる傾向があります。
とここまで書いてふと思いましたが、北部の英国人はちょっと違うかも、、、、。
これはSSBEのお話、という事でよろしくお願いいたします。
3.淡々としている
appleの母音の違いでもわかると思うのですが、イギリス発音の方が、シンプルな、淡々とした、なんというか素っ気ない音がします。すみません、この音の表現は全て主観になるのですが、多分わかってもらえるのではないでしょうか。この淡々さが、ある人には「気取っている」と聞こえ、ある人には上品に聞こえる、と私なりに観察しています。
この淡々さはイントネーションの違いでも明らかです。
アメリカ英語話者は、イギリス英語話者に比べると、話す時の音程の上下が激しい人が多いです。単語一つの中にもかなりの抑揚があったりします。イギリス発音に慣れている私がアメリカ発音のインタビューなどを見ると、たまにその音程の上下の激しさに圧倒される事があります。良く言えば感情豊かに聞こえます。
対してイギリス英語話者のインタビューは、お経でも読んでいるのかと思うくらいに抑揚が無いことが多いです。もちろんコメディーなんかでは大げさに話してたりしますが、普段の会話ではアメリカ人ほど音程が激しく上下しません。淡々としています。
イギリス発音が好きな人にはそれが落ち着いて聞こえ、苦手な人には素っ気なく聞こえる事と思います。
4. r の発音
大事なことを忘れていました。rの発音です。イギリス英語では、スペルには書いてあるのに、無視して発音しないrがあります。
イギリス英語では基本的に、rの後が母音の時のみ、rを発音します(rain, tree等)。
例外もあります。here, there はrの後が e ですが、発音しません。
r の後が子音の場合、または r が単語末にある場合は発音しません(heart, water 等)。
アメリカ発音に慣れていて、rで舌を巻くクセのついている人にとっては、まずはここが一番の難関になります。rが見えているのに無視する、というのは、なかなか難しいと思いますが、頑張って無視しましょう!
さて、そろそろ喉を開く感覚は掴めたでしょうか?まだの方は焦らず、いっぱいあくびをして練習してみてください。
次はようやく母音の発音の説明に入ります。IPA (International Phonetic Alphabet) を使って各音を一つずつ解説していきます。
ところで、私がここで説明する口の形は、必ずしもネイティブのそれと同じではありません。というのも、ネイティブは無意識になんの苦もなく出来る舌の形や位置を、私達日本語ネイティイブがマスターして即座に常に実行に移すのは至難の業だからです。頭ではわかっているけどどうしても舌をそのようには動かせない、またはゆっくり考えながらやれば出来るようになったけど、実際英語を話す時にはそんな事を実行していられない、という事態に陥る事が非常に多いです。
なので、実際に私が色々試行錯誤しながら、英語ネイティブと同じような音が出せる、現時点で私が最適と思っているやり方を説明します。それぞれのレッスンに英語ネイティブの口の形と私推奨の口の形を添付し、また、英語ネイティブの音声と私のやり方でやっている私の音声が聞けるようにしておきますので、ご確認ください。
それでは、必ず鏡を用意して 次のページにお進みください。