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Weekly iGEM〜過去のナットウキナーゼiGEMプロジェクト〜
トップ画像: NYCU_Taipei(2021)のwikiより
今週から、井上が担当するWeekly iGEM連載企画が始まります✨
第一弾は、納豆キナーゼに関する過去のiGEM研究についてです。
私たちは今年納豆に着目した研究をするため、今回は数少ない過去の「納豆関連」プロジェクトのうちの一つ、”Natto it Out” についてまとめてみました。
<概要>
2021年大会出場のNYCU-Taipeiチームは、心血管系疾患を予防するための有望なサプリメントとして役立つ可能性のあるナットウキナーゼに着目しました。ナットウキナーゼは優れた血栓溶解剤として知られているため、本プロジェクトでは、深部静脈血栓症に対する納豆キナーゼの効果等を調べたのちに、社会から深部静脈血栓症をなくすことを目標としました。
<もっと詳しく>
深部静脈血栓症とは?
→下肢の静脈に血栓ができることで発症し、痛み、腫れ、圧痛、発赤、温感、血流障害を引き起こします。組織の壊死を引き起こすため、患者は切断の危険にさらされる、無視できない病気です。
納豆キナーゼはこの深部静脈血栓症を予防する有用な物質であり、かつ他のアミノ酸系の医薬品と比べて副作用が少ないことで知られています!
そこで、このチームは
①唾液中のDダイマーを検出するコンパクトなシステム(唾液中のd-ダイマーの吸光度強度を検査する家庭用検査キット)
②小腸でナットウキナーゼを生産し続ける大腸菌
の開発をしました。
①Dタイマー検知キットの開発
→血栓の分解に由来する産物であり、臨床的には深部静脈血栓症のリスクの初期検出に使用されています。
このチームが開発したデバイスは、唾液からDタイマー濃度を検査した後にスマホのアプリで深部静脈血栓症のリスクを計算し、患者の推奨ナットウキナーゼ摂取量を表示するシステムです。現代的ですね。
②ナットウキナーゼを生産する腸内細菌製剤の開発
このチームは合成生物学を用いて、深部静脈血栓症のリスク予防に役立つ生産改良型ナットウキナーゼを生産できる遺伝子編集大腸菌ニッスル1917の設計もしました。BphP1-QPAS1光誘導システムと組み合わせることで、前述のアプリを通じてナットウキナーゼの生産を遠隔制御することができるようなものです。
詳しい仕組みを説明します。まず大腸菌ニッスル1917は、長期保存を確実にするために凍結乾燥され、腸溶性コーティングされたHPMCカプセルとともに小腸に送られます。カプセルが溶けた後、大腸菌ニッスル1917製剤は小腸に放出され、ここで、大腸菌製品は小腸内でコロニーを形成し、常にナットウキナーゼを放出することができるようになるのです。最後に、製品の生物学的安全性を保証するために、マゼフ毒素-抗毒素系をキルスイッチとして採用しているため、一定期間後には大腸菌が体内で死滅するように設計されています。
いかがでしたか?やや難しい話だったかもしれませんが、過去のiGEMチームのプロジェクトはこのように驚くような発想力と技術で社会課題を解決しているところが面白いですよね! (ナレーション: 梶川)