外からみた、まちの魅力? 〜igokuツアーのアテンドを通して〜
皆さん、こんにちは。
福島県いわき市の市職員イガリと申します。2019年に、「いわきの地域包括ケア igoku(いごく)」というプロジェクトで、ありがたいことに、グッドデザイン金賞を頂くことができました。
igokuがどんなプロジェクトか詳しくお知りになりたい方は、 suumoさんに取材して頂いたレポートをお読みください。
リンク先を読むのがめんどくさい方むけに超ざっくり説明すると、福島県いわき市で市の職員が、ローカルにいるフリーランスのクリエイターとチームを組んで、「老いや死」のタブーを乗り越えるべく、「igoku(いわきの方言で”うごく”の意味)」というプロジェクトを2017年に立ち上げた。プロジェクトは、WEBやらフリーペーパーの発行という情報発信に加え、年に一度、「老いや死」を、擬似的に体験できる「igokuフェス」というイベントの大きく2つで構成されており、2019年にグッドデザイン金賞受賞させてもらったという感じです。
igokuの聖地巡礼?!
ありがたいことに、igokuのファンと言いますか、応援してくださる方が、いわきだけではなく、全国に少なからずいらっしゃいます。ローカルの役所発の、しかも介護・福祉のプロジェクトが全国の方に面白がっていただけるなんて。あらためてこの場を借りてお礼を。皆さんいつも本当にありがとうございます!
9月のシルバーウィークに、関東から7名の方がigokuを体感しに一泊二日でいわきにお越しくださいました。秋分の日のお昼に、いわきに到着。そこから、その日の夜まで、いわきを、igokuを案内させていただきました。
1 いきなり秘境へ
せっかくお越しいただいた。できるだけいわきらしい、igokuらしい場所や体験を、ということでお昼は、いきなりいわきの秘境、igokuの聖地である好間(よしま)町北好間の食堂「お食事処 好間家」へ。
それぞれにお好きなメニューを注文し、
「うまい!」
「ボリュームが多い!」
「ビール飲んじゃうか」
とワイワイやった結果、、、
好間家さん、ごちそうさまでしたー!
2 igokuのレジェンド
「好間家」さんに昼食を食べにただ寄ったわけではありません。この地(好間町北好間)は、igoku最強のレジェンドがおられる聖地なのです。そのレジェンドこそ、
カタギシさん!
かつて炭鉱で栄えたエリア。今は学校も廃校になり、高齢者が多く暮らします。そんな地域でも、片岸さんの手にかかると、様子がちがってきます。自分たちより先輩の方々を月に一度、集会所にお呼びし、体操やらレクリエーションを楽しんでもらっている間に、自分たちは料理をつくります。先輩がたが楽しみ終わったタイミングで、出来立てのあたたかい料理を出す。
家から出てきてもらう、体を動かしてもらう、そして、普段はお一人で過ごされている先輩がたに、あたたかくおいしい手料理を出し、みんなで食べる。高齢者の「フレイル」対策のなかでも、これほどステキな取り組みを他に知りません。
また、地域の小学校が閉校となった。かつて、子どもたちの声で賑やかだった夏祭りも寂しくなった。普通なら地域は沈んでいくだけです。が、カタギシさんは違います。
「かつていた子どもの代わりに、カカシを作ろう!」
「カカシを夏祭りの会場広場に並べたら、ぱっと見、賑わってるじゃん!」
と思いつくや、カカシの制作に入ります。
初年度は13体のカカシを製作。
次年度は30体。その翌年には100体。
世界のトップ企業も真っ青の急成長ぶりですw
このカカシ制作。さきほどレクリエーションを楽しんでいた、地域のパイセン高齢者に作業を「あえて」分担して手伝ってもらっています。
「カカシつくるの手伝ってよー」
「○○さん、綿詰めるの上手なんだから、ちょっと手を貸してよ」
とカタギシさんは地域のパイセンに声をかけます。そうすることで、「すること」と「やりがい」を、そして手伝ってもらったあとの「ありがとう。助かったよ」の感謝まで、パイセンたちにお贈りしてるんじゃないかとボクは見ています。
そんな、
・地域全体の介護予防の場づくり
・コミュニティにおけるイベントの起こし方
・誰ひとり取りこぼさない役割の創出などなど
デザイナーであり、プロデューサーであり、リーダーでもある、スーパー・コミュニティ・クリエイターカタギシさん。
igokuでもさんざん取り上げさせてもらい、igokuでは超有名なレジェンド。
「好間家」のすぐ近くにある「北好間集会所」で、レジェンドの話をたっぷり聞かせてもらいました。
レジェンドに聞きたいこともたくさんあるだろうと思い、2時間たっぷり時間を用意したんですが、、、
気がつくと、3時間ちかく経ってました。
時空をゆがめるほどの、レジェンドの強力な魅力。おそるべし。
3 もうひとつの聖地
後ろ髪をひかれながら、レジェンドにバイバイしつつ、次の目的地へ。
igokuのもうひとつの聖地、内郷白水町川平(かわだいら)。
ここも先の北好間とおなじ、旧産炭地。いわきの炭鉱には「一山一家」ということばがあります。炭鉱の「ヤマ」は、ワン・ファミリーだという意味ですね。だから、かつての炭鉱町は、市内のほかの地区にはない、つながりの強さ、コミュニティの面白さがあるように感じられます。
上の写真は、私がigokuの取材で、はじめて川平集会所を訪れた際のものです。衝撃を受けました。
川平地区は、地域の集まりになかなか出てこない男性が参加しやすいように、「夜」にあつまる場をつくっています。高齢男性の閉じこもりを防ぎ、ご本人も地域も元気でつながろうという思いからの「夜のつどい」。なんてステキな想いと取り組みなんだと、igoku編集チーム全員で意気込んで集会所の戸を開けたのを昨日のように覚えています。
「若い人が来てくれたー」といきなり訪れた我々を歓迎してくれただけで、とても嬉しかったんですが、宴もたけなわになるにつれ、上の写真のありまさまですw. 目にペットボトルのキャップをはめながら、カラオケの歌声に合わせて踊るという、究極のおもてなしを受けました。
その夜の感動は、↓こちらの記事をどうぞ。
そんなigokuの聖地のひとつである川平。今回は地元区長であり、いわき有数のジェントルマン馬目区長に、地域を代表して、集会所にお越しいただきました。
地域のこれまでとこれからのこと、「夜のつどい」への思い、コミュニティの大事さなどの区長のお話を聞きつつ、皆さんもご自身の地域やお仕事のケースと比較したり、引き寄せたりしながら、豊かなコミュニケーションの時間が流れました。
川平集会所のすぐ裏手にある、車で川の中を渡れる「洗い越し」。思い出づくりに、車内ではキャーキャー言いながら、車で川を走行しつつ、川平に別れをつげました。
かつての炭鉱の歴史を、ギュッと詰め込んだ「みろく沢炭鉱資料館」にも立ち寄り、igokuで表彰させていただいた、故渡辺為雄さんの功績をしのびつつ、資料館にいらした息子さんと少しお話をさせてもらいました。
渡辺為雄さんについては、こちらの動画を是非ご覧ください。
4 座学?もたっぷり!
「これで、約6時間におよぶ、いわき・igokuツアー:旧産炭地編は以上です。あとは軽く飲みますか。」
では終わらないのが、igokuツアー。
現地を見て、食べて、話した「実地」のあとに、「座学」です。
座学の講師をつとめますのは、もちろん、igoku編集チームが誇る江尻浩二郎先生。
日中に訪れた地域のこと、歴史、伝統文化、食、伝統芸能など、現地を訪れたあとだから出てくる質問の数々。江尻先生は、次々とわかりやすく解説してくださいます。
現地を体験・五感で感じる→浮かんでくる質問→わかりやすい解説→深まる理解→さらなる質問→わかりやすい解説
いわきの魚に、福島の地酒もあいまって、学びの渦は、飲み放題の時間を超えて、ぐるぐる深く楽しく回転を強めていきました。
5 奇跡の柏餅から北上
翌日、一行は北上し、いわきの最北端:久ノ浜で柏餅に舌鼓をうったそうです。久ノ浜の柏餅といえば、これまたigokuでは大変お世話になった、故片寄清次さんの和菓子店『菓匠 梅月』
80歳のときに、東日本大震災で、お店もご自宅も失います。そこからたった1年で奇跡の復活。五代目となるお孫さんが、いわきに戻り、お店の跡をつぐまで頑張るとの思いで、90歳を超えても、現役でお店に立たれていました。
現在はお孫さんがお店を切り盛りされている「梅月」へ向かい、その後、そのまま北上し、相双地域をめぐり、郡山で旅はゴールとなりました。郡山からは新幹線で帰路へ。
全くもって自信がない?!
いわきを、igokuをめぐる今回の旅の行程は以上となります。
お越しいただいた皆さんには、本当に感謝しかありません。
また、お時間を割いて対応してくださった北二区のレジェンド、川平の馬目区長、江尻先生にも、これまた感謝しかありません。
だ・け・ど
このツアー、楽しかったんだろうか?
実りがあったんだろうか?
わざわざ、いわきに来る価値があったんだろうか?
と、アテンドした私は思ってしまっています。
決して、いわきの魅力がないわけでも、ご協力いただいた皆さんがどうこうということではありません。ご協力いただいた皆さんはサイコーだったし、いわきの魅力もあると思っています。
ただただ、アテンドした自分の自己肯定感が低いだけなのかもしれません。
中と外。
内部と外部。
外向け用の観光地と普段のくらし
ずっとこの街に暮らし続けている自分にとって、外からお客様をお迎えした今回のツアー。あらためて、自分が暮らすまちを見つめなおす機会となりました。
今回の旅がどうだったのか。
外から訪れてくださった皆さんに、いわきはどう映ったのか?
うじうじ一人で悩んでないで、メールで感想を聞いてみようと思います。
そして、いわきのigokuツアーについては、これからも仲間たちと模索しつつ、企てていきたいと思います。
仲間の小松理虔くんが書いた、この「神」noteも是非お読みください!
お越しくださったみなさん、
ご対応くださったみんさん、
本当にありがとうございましたー!
P.S ツアーといえば、埼玉県の高校生がいわきを訪れ、棺桶に入るところから旅がはじまるというとんでもない「igoku体験ツアー」が、もう4回実施されています。こちらのツアーについても、どこかのタイミングで書いてみたいと思います。
そんなigokuツアーについてもたっぷり書かれた、igokuのすべてが分かる、その名も『igoku本』。こちらのオンラインショップからご購入できますので、ご興味をもたれた方は是非!
お読みいただきありがとうございました。
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