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ボカロ文化は現代版和歌

皆様いかがお過ごしでしょうか。イガなおです。

今日はまず一言言わせてください。

広い道なのにわざわざ、しかも道の端っこを歩いている僕の横50cmを自転車で駆けていく勢の方々。

なぜそこを通ったのでしょうか。ガラガラの電車で隣に座ってくるようなものではないでしょうか。びっくりするから辞めてくださらないでしょうか。松下村塾。

今日は、VOCALOID(ボカロ)から着想した和歌との繋がりについて書いていきたいと思います。お付き合いください。

変化の時代においての生き方

IT評論家の尾原和啓氏は変化の時代、共有の時代において、以下3種の生き方があると論じている。

①最先端を走りつづけ、自分の好きなことを仕事にする(社内起業、社外起業的な生き方)
②伝統職(昔からあるが古くならないもの)につく
③発展途上国へ行き生活費を下げ、自給自足的生活(セルフベーシックインカム)をする

もし、君が新しいことに挑戦したいと考えるなら、①の好きを追究する生き方が求められる。

つまり、自分だけの武器を磨く必要性がある。

どれくらいのコミットすればよいのだろうか。

ここで、1万時間の法則と呼ばれるものがある(たしか「天才!成功する人々の法則」という本に書いてある)。
「その業界のプロ」までには5〜10年(1万時間)かかるというものだ。

よって、少なくとも向こう10年以上は廃れることのない業界にリソースをつぎ込みたいと僕は思った。

こんな背景から、長い期間続いているものと、そうでないものをラベリングしていた時期がある。

そんな中、音声合成技術 ボーカロイド(VOCALOID、ボカロ)は古くなっていないことに気がついた。

ボーカロイドの歴史

ボーカロイドの歴史は2004年に遡る。

2004年11月 「MEIKO」発売 VOCALID日本語ライブラリ第1弾
2006年2月 「KAITO」発売 VOCALOID日本語ライブラリ第2弾
2007年8月 「初音ミク」発売 キャラクター・ボーカル・シリーズ第1弾

wikipedia「VOCALOID」

初代ボーカロイドは初音ミクではなく、「MEIKO」であるらしい。
そう、僕はにわかである。

MEIKOのパッケージ

この頃からキャラのイメージイラストはあったものの、明確にキャラ設定を打ち出したのは、初音ミクが最初のようだ。

キャラ設定といっても、驚くことに公式の設定は以下の3点のみである。

【初音ミクの公式設定】
 ・年齢16歳
 ・身長158cm
 ・体重42kg

しかし、一定ボカロに触れた機会をもった人は分かるだろうが、「初音ミク=ネギ」のイメージが存在する(「初音ミク ネギ」で検索すると大量の画像がヒットする)。

このイメージはどうやって形成されたのだろうか。

初音ミクのキャライメージ

初音ミクには2種類のキャライメージが存在すると僕は考えている。

一つは、コミュニティに共通のイメージ
もうひとつは、ユーザー一人ひとりが独自にもつイメージだ。


前者の共通のイメージについて述べる。

上記のネギイメージの起源は、ニコニコ動画に投稿された一つの動画「【動画】VOCALOID2初音ミクに「levan Polkka」を歌わせてみた」によるものだ。

(ちなみに、彼等がミクにネギを持たせたのは動画「ロイツマ・ガール」に由来する。これは、ロイツマというカルテットが歌うフィンランド民謡levan Polkkaに、日本のアニメ「BLEACH」のキャラクターである井上織姫が長ネギを回すシーンを組み合わせたフラッシュアニメーションである)

この動画が起点となって、ユーザーの間で初音ミク=ネギのイメージが形成され、多くの2次創作がネット上で投稿、共有され、キャライメージが醸成されていった。

この現象を言い表す言葉として、SNSが普及してからよく耳にする「インターネット・ミーム」という言葉がある。

インターネット・ミーム(Internet meme)とはインターネットを通じて人から人へと、通常は模倣として拡がっていく行動・コンセプト・メディアのことである

wikipedia 「インターネット・ミーム」

過去にネット上で流行したアイスバケツチャレンジや、アルバイトが店の冷蔵庫の中に入る、といったものもこれに含まれる。
「みんながやってて面白そうだから、マネしてやってみよう」と言って流行る現象だ。

上述の「ネギをもつ初音ミクのイメージ」も、このインターネット・ミームの一種と言えよう。


一方で、上述のネギのようにコミュニティに共通のイメージが形成される場合があるのとは別に、ユーザー一人ひとりにとって、十人十色の初音ミク像が存在していると僕は感じている。

前述の「ユーザー一人ひとりが独自にもつイメージ」だ。

僕らが「初音ミク」に関する情報を得るのは、ネット上に投稿されたコンテンツからであることが多い(近年はオフライン展開もしているが)。

ネット上には初音ミクを用いた楽曲が多数投稿されており、その全てに世界観、物語が内包されている。
ユーザーはそれらのストーリーを自分から摂取し、初音ミクに対する文脈をつくりあげる。

ラブソングを多く聴く人にとっては初音ミクは「恋する少女」だし、
ロックを多く聴く人にとっては「かっこいいボーカリスト」だ。

また、小説のように物語性を多く含む楽曲も多数存在し、そうしたコンテンツに触れ続けたユーザーは、その物語が紡ぐイメージをそのまま「初音ミク」に投影するだろう。

このように、初音ミクのキャライメージは、コミュニテイに共通したものと、ユーザー一人一人が独自にもつものの2種類がある。

後者は、戦争に対する印象が人それぞれであるように、以前から存在していた概念だが、文脈がより多様化しているのは、ネットによって一人ひとりが世界観を発信する手段と、それを共有するプラットフォームが準備できたため加速したと考えられる。

こうしたイメージの醸成に関わる要素を古来からの日本文化に置き換えるならば、

 ・ボカロコンテンツ→和歌
 ・ニコニコ動画→小倉百人一首
 ・初音ミク→季語

だ。
和歌のモチーフとなる月や桜の季語のイメージは千差万別である点が、初音ミクとリンクする。


平安時代と異なるのは、インターネットの力によって、生活環境や住んでいる場所が違っていてもその人の和歌を受け取ることができるようになった点だろうか。

藤原家という編集社に全国各地から、和歌の持ち込みがされているような状態とも言える。


このように、ボカロ文化が日本で流行しているのも、日本の古来からの文化と似ている面が多く、日本人にとって親和性の高いコンテンツであるためだと僕は思う。

従って、冒頭で述べたボカロが古くならないということも、既に文化化しているためだと言えよう。


ところで、和歌と言えば、平安貴族の間では、女性に対し素敵な和歌を送る人間がモテたという話がある。

翻って、今は、どうだ?

今のボカロ楽曲は、アマチュアのものであってもプロ並のクオリティのものも少なくない。

ヲタクよ、立ち上がれ。

時代の追い風が吹いている。

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