金魚すくいのビジネスモデルから着想される『カルチャーエコノミー』
皆様お元気でしょうか。イガなおです。
僕は佐藤順一さんというアニメ監督の作品がとても好きです。中でも「ARIAシリーズ」は最高で、ありふれた日常の中に、自分の「好き(非日常)」を見つけ出す主人公をみて、自分の見方次第で世界は如何様にも変わるのだな、ということを思い出させてくれます。
好きすぎてベネチアにも行きました(舞台のモデルがベネチアなのです)。
さて、今回は金魚すくいのビジネスモデルから着想される『カルチャーエコノミー』というお話をしたいと思います。サービスの届け方について、参考になればと思います。
今日、上述の佐藤さん監修の「スケッチブック 〜full color's〜」を家で見ていたのですが、作中で「お祭り回」があり、金魚すくいをするシーンを見て、ふと疑問に思ったことがありました。
「金魚すくいって、なんで売れ続けるんだ?」
金魚すくいを生業にしている方に誤解を招かないように分解すると、スマホや洗濯機やアニメは日々変化している一方、金魚すくいは
「サービス内容は昔から大きく変化していないのに、なぜ買われ続けるのか」
という問いです。
結論から言うと、金魚すくいが与える価値が、サービスのクオリティでないからだと思ってます。
ではどんな価値を与えているのか、考察していきます。
まず、金魚すくいにおいては、見かけ上取引されているのは、挑戦料(お金)と金魚(商品)ですが、金魚自体をメインの価値としているサービスではありません。
「金魚すくいはしたいけど、金魚は持ち帰らなくていい」という人がほとんどであることは、想像頂けると思います。
金魚すくいの歴史を調べてみると、江戸後期から登場しているようで、ずいぶん長い歴史を持っていますが、元々は制限時間内に何匹すくえるか、というタイムアタックのゲームだったようで、金魚の持ち帰りはなかったようです
(ちなみに、当初はポイ(金魚をすくうための和紙が貼られたアレ)ではなく、網や手ですくっていたそうです)。
では、金魚すくいの体験が面白いから売れている、ということでしょうか。
惜しい気もしますが、ありふれたいつも通りの休日に金魚すくいの屋台があっても、やる人はなかなかいないと思います。全日本金魚すくい選手権の選抜選手くらいのものです(そんな選手権があるのか)。
「金魚すくい」が売れるのは決まって、「お祭り」の夜です。
「金魚すくい」だけだとユーザーには届かなくて、「お祭り」と組み合わさると刺さるのはなぜか。
ここを紐解くには、「お祭りの正体」を掴まなくてはいけません。
「お祭り」の構成要素は、大きく以下の2点。
① 非日常をくれるメインイベント(〇〇踊り、花火大会等)が開催される
② メインイベントに人が集まるので、周辺に屋台が出店する
①に関し、「お祭り」における花火(メインイベント)が持つべき特性は、「非日常感(エンタメ要素)」と「和による文化への帰属感」の2つです。
後者は、りんご飴や射的の屋台や花火を見て「コレだよコレ」というどこか懐かしくなるような、あの気持ちのことです。
でもって、「和の文化≒昔から日本でやる恒例行事」とも言い換えられます。
日本の花火は世界的に見ても独自の進化を遂げていて、海外がエンタメショー内の演出の一部として扱われるのに対し、日本では花火単体で見世物として成立するものとなっており、立派な「和の文化」になっています。
そんなわけで、非日常を味わえるほどのクオリティでありつつ、和の文化という性質も持っているために、花火はお祭りのメインイベントになります。
さて、ここで②の屋台にフォーカスすると、その必須条件は、
『メインイベントである「花火」でぶち上げた「文化への帰属感」を損なわないこと』です。
和を感じたくてお客さんはお祭りに来ているのに、「EDMを爆音でかけるカクテル屋」などあろうものなら雰囲気ぶち壊しです。
逆に言うと、「和の文化」を担保していれば、サービスの内容を大きく進化させずとも、売れ続けるということにならないでしょうか。
ここで、「金魚すくい」はというと、前述から、江戸から続く立派な和の文化であることがわかります。
これが、「昔ながらの金魚すくい」が現代でもその形を保ったまま売れ続ける理由だと思います。
ここから得られる学びには、
『実店舗を出店するときは、「ユーザーがその空間に何を求めて来るか」を押さえておくと、生存戦略が決まりそう』
ということもあるのですが、もう一つ、
『文化に乗っかったサービスは人間の帰属感を満たすため、売れ続ける』
ということがあって、こっちのほうが大きなポイントだと思います。
『カルチャーエコノミー』
といった具合でしょうか。
こんな感じで、サービス提供の際には既存の文化に忍び込ませると、クオリティのハードルが若干下がって、かつ競合相手がかなり限定されるよ、というお話でした。
金魚すくいパイセン、この学びをありがとうございます。
p.s.
梶原空さん。好きです。僕と付き合ってください。