【一人論文抄読会】vol.2〜Ad26.COV2.Sワクチンブースター効果って??
Sablerolles RSG, Rietdijk WJR, Goorhuis A, Postma DF, Visser LG, Geers D, Schmitz KS, Garcia Garrido HM, Koopmans MPG, Dalm VASH, Kootstra NA, Huckriede ALW, Lafeber M, van Baarle D, GeurtsvanKessel CH, de Vries RD, van der Kuy PHM; SWITCH Research Group. Immunogenicity and Reactogenicity of Vaccine Boosters after Ad26.COV2.S Priming. N Engl J Med. 2022 Jan 19. doi: 10.1056/NEJMoa2116747. Epub ahead of print. PMID: 35045226.
せっかくなので、コロナについての論文を読んでみました。
背景
Ad26.COV2.S ワクチンは、一回で免疫をつけるタイプのワクチンで、コロナに有効だとされていたけど、m RNAをベースにしたワクチンより、免疫原性が低い、という問題があったが、そのブースター効果については、よく分かっていない。
方法
・単盲検、多施設、ランダム化比較試験。
・Ad26.COV2.Sワクチンブースト投与28日後に、Ad26.COV2.Sワクチンの免疫原性と反応原性について評価。
・ブーストなし、COV2.Sブースト、mRNA-1273 ブースト(モデルナ)、 a BNT162b2(ファイザー) ブーストで比較。
・S蛋白結合抗体、中和抗体、S蛋白特異的T細胞、反応原性について分析。
・モデルナとファイザーについても後で比較。
結果
・ブーストしたら、S蛋白結合抗体、中和抗体、T細胞反応は向上!
・結合抗体は,mRNAを用いたワクチンを含む異種混合レジメンで、同種混合ブースターよりも有意に増加していた。
・モデルナでのブーストが一番免疫原性が高かった。
・ブースター投与後2日間の局所・全身反応は、大体軽度から中等度。
結論
・ワクチンブーストは、受容できる安全性があって、免疫原性を高める!
・どのワクチンでも、ブーストしないよりは、いい。
・最も強いブースター効果は、mRNAを用いたワクチンだった。
以下、詳細・・・
●背景・研究目的
・ヨーロッパでは4つのコロナワクチンがある。
(中等〜重度コロナ予防に効果的)
→mRNA系:モデルナ、ファイザー
→アデノウイルスベクター系:オクスフォード、ジョンソン&ジョンソン(Ad26.COV2.S:今回の研究対象ワクチン)
・Ad26.COV2.Sは、他のワクチンと違って、一回で済むのがメリットで、液性・細胞性免疫の両方を活性化する。
が、mRNA系ワクチンの方が、抗体価が高い、という結果が出ている。
とはいえ、T細胞免疫については、評価してないので、入院に対する効果はエビデンスがまだ微妙。
・ワクチンを混ぜてみたら、より免疫原性が向上するかも。。?
・追加接種については、いまいち分かってなかった。
→ので、今回、調べてみたよー、ていう研究。
●方法など(上記記載以外)
・参加者→18〜65歳、基礎疾患(コロナ既感染、癌で治療中の人、免疫不全者、易感染性の人、糖尿病、固形癌、骨転移のある人)がある人は除外、Ad26.COV2.Sワクチン接種後3ヶ月後に評価。
・ワクチン用量→Ad26.COV2.S(≧8.92×1010ウイルス粒子)、mRNA-1273(100μg)、BNT162b2(30μg)⇨製品特性概要通り
・副作用の評価:アンケート(1週間、PCにて)、血液検査(接種当日、28日後)
・免疫原性の評価:抗原特異的抗体、S蛋白結合抗体、中和抗体、S蛋白特異的T細胞を血液検査で評価(接種28日後)
●結果
・元々参加者は697人いた。が、実際に被験者としてデータを用いたのは、461人。
→78人は基準を満たさず、18人は参加拒否、140人はその他の理由。
→461人の内訳:114人(105)はブースータなし、116人(106)はAd26.COV2.Sワクチンブースト、116人(112)はモデルナ、115人(111)はファイザー。
※最終人数は()内;解析した人数
◉ブーストした被験者で結合抗体価、中和抗体価、T細胞の反応性が有意に上昇!
→同種ワクチンより、異種ワクチン(mRNAベースのワクチン)でブーストした方が、結合抗体価レベル、中和抗体価、S蛋白特異的T細胞反応性が高かった!
→増加率は、モデルナの方がファイザーより高かった。
・1回目の接種では、89.6%の被験者でS蛋白特異的結合抗体価の上昇、74.2%で中和抗体価、65.4%でS蛋白特異的T細胞の上昇がみられた。
※T細胞の反応性は、インターフェロンγレベルで評価。
※T細胞反応性:モデルナブースト→91.7%、ファイザー→91.5%、Ad26.COB2.S→72.2%
・副作用については、そんなにひどくなく、入院まで行った人は0で、大体が2日以内に治っていた。
●考察
・抗体価、T細胞反応性、いずれにおいても、同種ワクチンより異種ワクチン、もっと言えば、モデルナが一番優れている。
が、まだ研究が十分じゃないし、この研究でも人数が限られてるから、一応、この研究ではモデルナブーストは安全ぽいけど、、更なる研究が必要!
・Ad26.COB2.Sの追加接種による効果は、8ヶ月で、重症化を防ぐのに役立つ。
・コロナ感染防御には、中和抗体、S蛋白特異的T細胞が非常に重要な役割を果たしており、T細胞の反応についての研究によって、より深くブースター反応について知ることができそう。
・この研究では、ブーストまでの期間が、3ヶ月だったけど、2〜6ヶ月で研究した論文では、より期間を開けたブーストの方が良さげな感じだった。
・ブーストに関しては、ブーストまでの期間と人口、コロナ感染拡大のレベル、コロナワクチンを打てる人と打てない人の格差が、課題。
〜感想〜
NEJMの購読を始めて、流し読みではなく、初めてちゃんと??読んだ論文です🎶
追加接種って、違うワクチンの方がいい、とか、モデルナが一番よさげ、など、、恥ずかしながら、初めて知った情報がたくさんありました。
というか、そもそも、モデルナとファイザーしか知らず、アメリカでは、4種類のワクチンがある、ということすら知らなかった。。反省。。
もっと言えば、どのようにこれらのワクチンが働いてるのか、とか、、医学生としてもう少し勉強しないとなぁ。。と思いました(⌒-⌒; )
にしても、当たり前にワクチンを全国民が打てる日本って、すごいなぁ。。と思いました。