海外医学部のメリット・デメリット
あまり語られない海外の医学部のメリットを語りたいです。
Pros(メリット)
欧州の場合🇪🇺
入試が簡単
・これは多くの事務局であげているメリットですが、日本の大学に比べ入試競争率が低く点を取れば合格が容易です。これが一番大きいのではないかと思います。年齢や経歴による差別はほとんどの場合ありません。
経済的援助のオプションがある
・学費が安い大学や学費無料の他、生活費を支給してくれる国もあります。
・多くの国で卒業と同時に現地の医師免許が取得できる。
現地で働く予定はない。現地語ができない。そのような場合でも、多くの恩恵を受けることができます。
日本の国家試験受験可能
・まず海外医学部卒の人が日本の医師免許を受験したい場合、海外の医師免許取得が必須になります。海外での医師免許(医師活動を行える資格)がない場合、本試験を受験することができません。実は卒業するだけではダメなのです。 卒業後に試験を受けて取得する国の場合:申請のタイミングを逃し1年先延ばしになったり、予備試験からの受験が必要になります。EUでは、卒業前に国家試験(認定試験・そもそも試験がない)がある場合がほとんどで、卒業と同時のタイミングで免許証を取得できます。 私の知る限りでは、EU圏の学位・免許で申請を行い、本試験コースの受験資格が得られなかったパターンは聞いたことがありません。
海外での活動も容易
日本の大学を卒業後も一定の研修を終え海外で活動することもできます。
欧州や海外(英語プログラム)の大学を卒業した場合、日本の大学よりもメリットがあるので紹介します。
・EUは専門職の免許を相互承認しています。EU内の学位であれば、EU圏内の申請がスムーズになります。日本の大学卒業の場合、学位や免許を個別に審査することになっていて、プロセスが非常に複雑です。
※よく欧州医師免許やEU医師免許と書かれている方がいますがあれは間違いです。EU加盟国内で相互承認しており加盟国内で原則有効なのは確かですが、欧州連合(EU)が発行した医師免許というものは存在しません。
ハンガリーならハンガリー、アイルランドならアイルランドの医師免許という具合です。
・もう一つ大きなメリットとして、日本の医師免許を取得する前であっても第3国で医師活動ができる可能性があります。現地語がわからなくても、中東や一部アジアなどの国でも欧州の医師免許を使い初期研修(インターン)を開始することができます。英語圏のアイルランドでは、EU圏の大学出身者以外では、初期研修を受け入れていません。こういった国で最初のキャリアを確立したい場合、EU圏内の大学を卒業することが必須になります。
特に成績証明書やシラバス、必要書類が英語で用意されている場合が多いので、第3国に書類を提出するときに日本の大学(英語で全ての書類を用意している大学は少ない)と比べ、この点は優位です。 公式翻訳を求めれれると 場合によっては数百万円の費用がかかってしまうこともあります。
欧州以外の場合
修業年限をカットできる(大学在学者、学士持ちのみ)
日本には編入・学士入学制度があり、通常より短い期間で医学部を卒業することができます。
元々米国のメディカルスクール(医師養成の4年制大学院)を模しており 3年次に編入する制度でしたが、近年では2年次編入となっており恩恵があまりありません。
選抜方法が一般入試よりもブラックボックスであり、学力だけでは合格することは難しいとされています。
世界には、大卒者向けに4年で卒業できる国が少数ながらあります。
アメリカやカナダそしてフィリピンでは、基本的に4+4年制で全ての大学でメディカルスクール制度をとっています。アメリカ人、カナダ人用に4年制のカリキュラムを提供している南米・カリブ諸国の大学もあります。
他にイギリス、オーストラリア、ニュージーランドといった英連邦の国においても通常の学部課程(5,6年制)とは別に4年制のメディカルスクールを併設しています。ただしこれらの国では、外国人の学費は非常に高額です。
メディカルスクール・学士入学の多くは、非常に倍率が高く、外国人である日本人が入学するには非常に狭き門です。多くの場合、現地国籍者や永住権保持者に限定しています。
カリブ海の大学は、入学が容易かつ日本人も入学可能であるものの学費が非常に高額です。一部の大学では、米国の認証機関や国際機関からの認定を受けていない大学もおおくあり注意が必要です。
メディカルスクール課程においても (現地・第3国の)医師免許を取得した場合、通常の6年制課程と同様、一般に日本においても本試験認定されています。
まだ実現した人はいないと思いますが海外で高校や学士課程を飛び級した場合”24歳未満”で日本で医師になることも可能と思われます。ただし医師法第2章第三条に「未成年者には、免許を与えない。」という記述があるため18歳以上である必要はあります。
・Cons(デメリット)
日本の医師国家試験受験資格
現時点では、英語圏先進国、EUの医学部を卒業後 現地免許を取得している場合、現時点では本試験認定されていますが、今後、制度が変わる可能性もあります。
現在も認定も個別審査となっており、100%確実は保証されていません。(実態として欧州の医学部出身者で、申請者に落ち度があった場合を除いて、却下になったケースは筆者の知る限りいません。)4500時間以上の履修時間と、海外の医師免許を取得している場合、ほぼ100%本試験認定となっているようです。
しかしながら、日本で活動を希望する方が多いので、これは一番のデメリットになるのではないでしょうか。そのため一般の純ジャパ高卒生であるのであれば、日本で活動するために最初から海外進学はあまりオススメできません。よほど海外に興味があり、かつ語学力をつけたいのであれば別ですが。
言語の障壁
海外なので、外国語で授業を受けることになります。
多くの日本人にとって、英語で授業をうけ、理解し内容を覚えるのは相当ににハードルが高いと思われます。さらに多くの場合、現地後の習得が求められます。これは国よってまちまちですが、非英語圏のヨーロッパで現地語なしで、日常生活を乗り越えるのは難しいです。
文化の違い
海外生活のない方は、第一に言語バリアーを心配される方が多いですが、言葉に以上に文化・生活習慣の違いによるストレスを抱えることが多いです。
国により文化風習、人々の考え方は違うので、合わせていく必要があります。幸い日本は、欧州等の学校に比べると比較的、勉強も含めて厳しい環境の中で育っているため適合はしやすいのかと考えています。
一方で、東南アジア等に進学する場合、大きく日本と文化が変わるので注意が必要です。
留年率・退学率の高さ
入試が簡単な所もあり、進級に耐えうるほどの学力、モチベーションがない学生が一定数することも関係しています。
しかしながら、学力・モチベーションの両方が非常に高い方でも留年されてしまう方はいます。
*海外大学の方が一般に進級・卒業が厳しいとされていますが、国や大学によりきりで、全ての国・大学で厳しいわけでもなく、厳しさの感じ方、条件も人によりきりなのです。
大学生活でサバイブしていくために必要なものは情報です。情報収集力(人脈や対人スキル)がものをいいます。国、大学によっては、試験のスタイルが日本とは違い、そのスタイルに適応できず留年してしまう方も多くいるようです。特にヨーロッパでは、口頭試問による試験が一般的で、多くの日本人がこのスタイルに適合しない可能性があります。
日本の大学と違い、進級が”当たり前”ではないのです。
今後、私の知り得る限り各国の留年事情も別途記事にしたいと思います。
人種・外国人差別
これは国・大学によりきりなので一概にいえません。
1.欧州(非英語圏)の場合
制度上は、外国人に対する差別はほとんどないと思います。
入学試験や学費において、EU国籍者かnon-EU出身者で違いがあったりします。
正し東欧においては入局管理が厳しく、EU出身ではない外国人に対する対応が厳しいことが多いとされています。
私個人の感想経験ですが、今いる国では 街にいる人々や同級生から差別的な対応をされたことは現時点ではありません。しかし行政の部分で差別的な扱いを感じたことは多々あります。
行政的な部分では東欧は共産主義の名残りのようなものがあります。個人レベルでは、英語圏や西欧の方が外国人・人種差別があるような気がします。これはまた別の記事において説明します。
2.欧州以外の場合
欧州の方が差別が多いイメージですが、法律・制度上最も差別が多いのは東寄りのアジア圏(特に東南アジア)です。
多くの東南アジア諸国では、外国人に医師免許の取得を許可していません。これは、日本で国家試験を受ける場合大きな障壁になります。
※日本の医師国家試験の申請において、本試験の認定を受けることができません。
医師免許に限った話ではないですが、観光名所では、現地人の何倍もの入場料が必要であったり、現地で働いた時は外国人税なるものがあったりします。土地を買ったり、現地で起業することができません。そのため、現地で働きたい、将来的に自分でクリニックを持ちたいと思った時の障壁があります。
一方で欧州(EU圏)は、外国人であっても法令・制度上は平等であることがほとんどです。外国人であることが理由で制度上、活動が制限されることはほとんどありません。
海外医師免許について
EU🇪🇺:国家試験は在学中、卒業と同時に医師免許が発行されることが多い。ポーランドの場合、卒業後に現地免許取得のため注意が必要です。
中国🇨🇳:卒業後にインターンを行い受験資格を獲得、国家試験を受験(中国語) 備考:2024年の認定より漢方や東洋医学の履修時間が認められなくなっているため受験資格の申請に注意が必要です。
フィリピン🇵🇭:卒業後にインターンを行い受験資格を獲得、国家試験を受験。外国人の場合、多くの場合、免許の発行はされない。
備考:最終学年は1年間フルに実習があるため、卒業時期は8~9月となり、卒業年に日本の国家資格申請は行えません。
今後も日本と海外の医学部、制度の違いについて説明していきたいと思います。
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