海外医学部 国別メリットとデメリット
前回、海外の医学部(メディカルスクール)メリットとデメリットを説明しました。
今回特定の国、地域についてPros(メリット)とCons(デメリット)を説明していきたいと思います。
私見と偏見が多く入ってます笑
本記事は、純ジャパ(日本生まれ・育ち日本語が母国語)かつ個人での留学を検討されている方を対象にしています。特に再受験や資金に限りがある一般家庭の方を対象にしています。
用語について
医学部=学部課程 日本と同じで高校卒業後に入る通常の大学学部課程です。一般に多くの国でこの6年制課程を採用しています。中には5年制や7年制のコースもあります。医学課程の履修時間の短い大学を選ぶと日本の医師国家試験受験資格に影響するので注意が必要です。
メディカルスクール=大学院課程 日本でいうところの大学学部卒業後に入るのが一般的なコースです。イメージとしては、法科大学院の医師版です。修業年限は一般に4年です。 原則として学士の取得またはプレメディカルという医学部準備課程を卒業する必要があります。予備コースやファウンデーションコースと呼ばれるものとは別なので注意してください。
※メディカルスクールは5または6年制ではないので"日本の国家試験の受験資格がない"や"予備試験からの受験になる"という情報を多々聞きますが間違いです。 現地の医師免許を所持している場合、本試験コースとなる場合が多いようです。
国によりシステムは千差万別ですが、日本に帰国を希望する場合、卒業と同時に現地免許を取れる欧米圏が良いと思います。非大卒・高卒生ならば欧州が第一の選択肢になると思います。状況やバックグラウンドは人によりきりなので一概に〇〇が良いというのは言えないですが・・多くの欧州の大学では、(国試の申請期限の)7月末までに卒業証書が手に入る。卒業と同時に免許を取得することができます。この二つの条件を満たせない場合、卒業後に1年から数年をロスする可能性があります。*1(2024年現在)
*1 日本の免許だけでなく第3国での活動も含めてロスする可能性があります。
ハンガリー🇭🇺
医学部6年制 +1年予備コース
Pros:在学している日本人が多い。日本人卒業生の実績も多い。学費無料生活費付きの政府奨学金があります。アジア人が多い。
Cons:通常入学の場合、学費が高い。留年率、退学率の高さが目立ちます。
日本人が最も多く留学している国です。英語に不安がある学生にとっては心強いのではないでしょうか。特にアジア人学生が多いため、訛りや英語力の部分で同級生とコミュニケーションが取りやすいかと思います。
事務局が精力的に広告を打ち込み、日本での国家試験合格者を出し、実績が功を奏で入学希望者が増えました。
現在は毎年100~200人以上入学しているのではないでしょうか。
個人留学はできず(試験を受け合格したとしても、入学を拒否されますw)
非常に学費が高く、事務局への手数料も高額(320万円)と聞いております。
デメリットとしては、期末試験は口頭試験が基本であり、人によって不平等であったり難易度が違うなどの依怙贔屓があったりするようです。また口頭試問自体が、日本人学生にあまり馴染みがないため、苦労される方が多いようです。
デメリットを多く書きましたが、ハンガリー政府の奨学生として入学する場合は学費が無料になるだけでなく生活費の補助もあるため、一番コスパがいいのではないのでしょうか。
ハンガリー語の授業:必須
チェコ🇨🇿
医学部6年制
Pros:在学している日本人が多い。日本人卒業生の実績も多い。
Cons:学費が高い。留年率、退学率の高さが目立ちます。国・大学としての対応に疑念が残ります。
こちらもハンガリーと同じ業者が事務局を運営しています。
ハンガリーと違い個人でも大学に入学できます。
しかしビザの申請が複雑であり、相応の覚悟は必要です。
ハンガリーと違い、政府奨学金はありません。
チェコ語の授業:必須
ルーマニア🇷🇴
医学部6年制
Pros:日本人卒業生も割といます。
Cons:学費や生活費が安めです。国・大学としての対応に疑念が残ります。
ハンガリーよりも卒業しやすいという噂を聞きましたが真偽はわかりません。
ルーマニア語が他の東欧と違いラテン語系統に分類されるため、スペイン語やイタリア語の習得に後々役立つ可能性があります。
現在は真偽不明ですが、かつて担当教授に賄賂を渡さなければ単位をえられないといったことがあったという噂を聞いています。
2024年、シェンゲン協定に部分的に加盟しました。これにより空路・海路では、他のEU/EEA シェンゲン加盟国に入国審査なしで渡航できるようになっています。
ルーマニア語の授業:必須(国立のみ)
イタリア🇮🇹
医学部6年制
Pros:(国立)学費がとても安い。 (私立)入学プロセスの容易さ、 ビザの取得の容易さ
Cons:生活費は高い。(国立)入学難易度が高い。卒業率が高い(私立)学費が高い。日本人の卒業生はまだほとんどいません。
近年、急激に日本人留学生が増えている国です。
経済状況が良くないと言われているものの、G7の一角を担っている先進国です。多くの人が憧れる国です。
国立大学に入学した場合、日本の国公立大学より費用を抑えらえるかもしれません。年間の学費30万円〜程度です。
2024年 急激に志願者が増え、難易度がインフレしています。
IMATという試験の結果で合否判定されるのですが、2020年 大学によっては3割台だった合格ラインは、現在はどこも7割以上の得点が必要です。
不正解の場合、マイナスポイントになるので、実態としては、かなりの得点力が必要になります。
イタリア語の授業:必須(国立のみ) 少し厳しいらしいです。
私立では、イタリア語の授業や要件のないところもあるようです。
おすすめ度としては高い国です。
デメリットとしては、日本人実績がない大学が多いため、大学が規定書類を作成してくれるのか、本試験の書類審査に通るのか、不安がつきまとう部分はあるかと思います。
スロバキア🇸🇰
医学部6年制
Pros:日本人卒業生も割といます。学費が他のチェコやハンガリーより安いです。
Cons:卒業の難易度が高いです。国・大学としての対応にも疑念が残ります。
元々同じ国であったチェコと同じような内容です。
2024年 ビザの取得時、トラブルが発生しているようです。
スロバキア語の授業:必須
ポーランド🇵🇱
医学部6年制
ポーランド語の授業:必須
ハンガリーやチェコと似たような状況です。
cons:個人でも受験しやすく、個人での留学もしやすい国ではあります。日本人卒業生も複数います。
pros:人々の態度が冷たいとよく聞きます。医師免許の登録において研修が必要かつLEKという試験に合格する必要があるようです。こちら調査中です。
ポーランド語の授業:必須
イギリス🇬🇧
医学部(イングランド🏴5年制:その他6年制)、学士入学:4年制
難易度としてはかなり高い部類になります。
外国人が入れる大学もありますが、難易度は非常に高いです。
英国市民権がない場合、非常に学費が高いです。年間500万円〜
学士入学もほとんどの大学で外国人は受け付けていません。
アイルランド🇮🇪
医学部6年制、学士入学:4年制
外国人が入れる大学もありますが、難易度学費共に高いです。
*ここまでヨーロッパについて説明しました。東欧は特に日本人にとって馴染みがなく、治安や生活レベルを心配される方も多いと思いますが、実は西ヨーロッパよりも犯罪が少なかったり、街並みも綺麗であったりします。(ただ国によると思います)かつ周りの学生もほとんどがヨーロッパの先進国出身者で比較的な裕福な方が多いです。
*アイルランドやマルタなどの英語圏のEU国において、初期研修を開始するときに、出身大学がEU/EEA圏内であることが条件であったりするなどの条件があります。
*アイルランドの医師免許登録フォーム
https://www.medicalcouncil.ie/registration-applications/first-time-applicants/internship-registration.html
アメリカ🇺🇸&カナダ🇨🇦
メディカルスクール:4年制(一部3年制もあり)
米国では、現地大学の学位が必要です。
ほとんどの場合外国人は入学不可です。
カリブ海🇬🇩🇦🇼🇧🇧
メディカルスクール:4年制
米国やカナダのメディカルスクールに入れなかった人が来るようです。
2年間島の中で基礎教育をうけ、臨床の学年は米国本土またはイギリスなどの病院で実習を行います。学費は非常に高く 留年、退学率ともに高いです。
155円のレートで 2,000万円〜3,000万円程度の大学が多いようです。
日本人の卒業生実績もあります。
*詐欺大学が存在するので注意してください。
*卒業生の実績があるのか。WHO Directoryに登録されているか確認してください。
オーストラリア🇦🇺&ニュージーランド🇳🇿
学部6年制 メディカルスクール(学士入学)4年制
日本医師免許取得の卒業生実績がある国です。
学部コース,メディカルスクールともに卒業時に医師免許の取得ができるため、本試験認定されているようです。
学費が高く、入学要件も厳しいため
現地国籍の所持者や私立医学部に行けるような家庭でなければ一般に難しいと思われます。
中国🇨🇳
医学部5年制、6年制、7年制
Pros:修業年限が短い、学費生活費が安い、日本食も食べられる。政府奨学金もあります。
Cons:政治的な情勢、現地の医師免許取得(中国語必須)が難しい(取得していない場合、日本の本試験を受験できません。)年齢制限があります。
デメリットとして一番にあがるのは、現地の医師免許取得が難しいことです。中国語は日本人にとって思ったよりも難しい言語と言われています(発音)。インターンも必要です。
履修時間や日本の教育内容との違いから、認定プロセスで問題になることがあるようです。慎重に検討された方が良いと思います。
2024 中医学や伝統医学の履修時間が認められなくなっているようです。
中国政府の政府奨学金を取得できる場合、学費無料、生活費の支給があるため、ハンガリー同様、日本の大学よりも安く卒業することも可能です。ただし中国にルーツがあり、中国語に堪能でなければ 日常の生活面も含めて厳しい道のりになるのではないかと思います。
ストレートでいっても、日本や海外医師免許取得に10年近くの年月を要することもあります。
フィリピン🇵🇭
メディカルスクール:4年制
Pros:(大卒にとっては)修業年限が短い、学費生活費が安い、日本食も食べられる
Cons:先進国との文化の違い、現地の医師免許取得不可・日本の本試験を受験できません。実習が非常に厳しい&理不尽がつきもの。学校の質
・原則として、外国人はフィリピンの医師国家試験を受験するのにはハードルが高く、免許登録はできません=日本の国家試験の本試験認定はされません! 以前に本試験認定されたパターンとして、アメリカの医師免許(USMLE step2まで合格し)ECFMG取得された方、(日本人ではありませんが)フィリピン卒業後、母国で医師免許取得の後、日本に戻り申請された方がいます。
・デメリット 他国東欧でもしばしばあることですが、”事務室”の質の低い大学があるということです。事務室なんてそんなに学生生活に関係ない!と思っているあなた要注意です。日本への修学金支援そして医師国家試験試験への書類は締切日が非常に大事です。日本では、証明書(自動発行機)機械で発行もしくはすぐ対応してくれることがほとんどですが、フィリピンの場合、1ヶ月や半年、そもそも発行申請したことを忘れられているということが多々あるようです。これは大学によって様々です。なので事前リサーチが非常に大事になります。
・メリットとしては、英語が公用語の1つです。このメリットは大きいと思います。ヨーロッパも英語話者の多い国は多々ありますが、あくまで公用語は現地語のため公式文書やオフィシャルな場面では苦労することがあります。
・現地語の授業はない場合がほとんどですが、実習においてある程度、現地語の習得を求められるケースもあるようです。
マレーシア🇲🇾
医学部5年制、メディカルスクール:4年制
Pros:特になし(現地校の場合)
Cons:学費が高い。現地の医師免許取得不可・日本の本試験を受験できません。
他国と比べるとメリットがなくなってしまいましたが、マレーシアにはオーストラリアやアイルだんどの分校医学部や英語圏の医学部に編入できるコースがあったりします。学費は、非常に高いですが、編入先国や本校の国の医師免許を取れるチャンスがあります。この場合チャレンジする価値はあると思います。
マレーシアは、外国人に対してとても厳しい政策をとっており、現地の医師免許は取得できません。この場合、あえてマレーシアを選ぶメリットはないように思います。フィリピンよりは治安がいいようには思います。
タイ🇹🇭
タイにも4年制の留学生向けメディカルスクールがあるようです。
調査中です。
*東南アジアについて
物価が安いのが東南アジアのメリットですが、その分デメリットもあります。ハードウェア的な面ではもちろんインフラの整備が日本や欧州、他の国に比べ遅れています。ソフトウェア的な面 短期的な滞在で気づかないかもしれませんが、やはり現地人は日本人とは考え方が異なる方が多いということです。もちろん人や国により千差万別です。周りの人に対してストレスを感じることは多いと思います。
最後に
斡旋業者を使わない個人の留学であっても先進国(東欧は含めない)であれば、想定外かつクリティカルなアクシデントのリスクは少ないと思われます。
学費や生活費を考え、東欧(EU加盟国含む)や途上国に行く場合は、現地に信頼できる人がいるもしくは"情報を持っている"ことが大事です。日本(又は常識の通じる先進国)と同じように考えてはいけません。
ハンガリーやチェコについて
例)センメルワイス大学 18,000USD * 155 = 279万円/年
学費+事務局手数料 を合わせると6年間2,000万円〜 となります。
さらに多くの方は、予備コース(入試対策)から通われているため、
6年+1年、2000万円+生活費+αのコストが必要です。
予備コースは大学の正規の課程ではないため、学歴になるかも微妙です。
高卒・現役生から進学希望の方も多いようですが、現在の円安の状況では、国内の上位私大よりも高い学費となります。政府奨学金等のアドバンテージがなく、日本に戻ってくる可能性100%であれば、あえて海外に行く必要があるのか考えた方が良いかと思われます。
ブラックボックスの日本の医学部受験ですが、2浪の年齢までかつ通常の経歴であればハンディになることは少ないです。一般受験であれば、ある程度の年齢であっても合格を出してくれる大学は存在します。
訂正必要箇所や指摘がありましたら、コメントいただけますと幸いです。
適宜記事のアップデートを行なっています。