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『ドリームプラン』計画と想いのバランス vol.543
テニスを嗜む人であれば、一度は聞いたことがある名前だろうウィリアムズ姉妹。
10年ほど前世界ランクの上位にいて、グランドスラムを何度も達成している選手です。
当時、ちょうど学生でテニスをしていた私からすれば、彼女らのテニスはまさに規格外。
他の女子選手などとは比較にならないほどの強さで、男子に混じっても上位に入れるのではないかと囁かれるほどの実力者でした。
そんな彼女たちの半生を描いた映画です。
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リチャード・ウィリアムズは優勝したテニスプレイヤーが4万ドルの小切手を受け取る姿をテレビで見て、自分の子どもをテニスプレイヤーに育てることを決意する。テニスの経験がない彼は独学でテニスの教育法を研究して78ページにも及ぶ計画書を作成し、常識破りの計画を実行に移す。ギャングがはびこるカリフォルニア州コンプトンの公営テニスコートで、周囲からの批判や数々の問題に立ち向かいながら奮闘する父のもと、姉妹はその才能を開花させていく。
重すぎる愛情?それすらも受け止めて
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このウィリアムズ姉妹の半生は、父親のプランと呼ばれる人生設計書の上で成り立っています。
周囲から見ればそれはスパルタ敎育にも近いものなのかもしれません。
それでも、彼女らは全く文句を言わずに、父を信じそしてテニスを愛し続けました。
それは、プロ選手となって話すインタビューの中の節々にも感じられます。
これは、父のプラン以上に愛情を強く感じていたからなのでしょう。
時代や地域がら、黒人差別が抜けきれない環境で育った姉妹を、例えテニスがなくなったとしても生きていけるようにという愛情。
テニスは孤独なスポーツ?
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テニスは孤独なスポーツとよく言われます。
コートに立った時にはいつも一人。
大きな大会があろうとも、その大会に必ず家族が引率できるとは限りません。
それでも、自分のいつものプレーができずに何をすればいいかわからなくなってしまう状況だって存在します。
そんな時でも、このウィリアムズ姉妹には家族がいました。
辛い状況に陥らないようにと父親がいつも守ってくれていたのです。
テニスはプレーするのは一人かもしれませんが、このウィリアムズ姉妹はいつも家族で戦っていたのでした。
だからこそ、常に楽しんで試合に挑むことができていたのでしょう。
どんなに辛く大変な状況でも、楽しむというのを忘れないという一つの教えのようにも感じます。
啐啄同時の期
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そんな彼女らも、いつまで立っても公式戦に出してくれない父に少し苛立ちを感じ始めます。
初めて彼女が父に疑問を呈して、不貞腐れた瞬間だったのかもしれません。
父としては、娘がどんな状況になっても生きていけるようにと最高の道を作ってあげていた気になっていたのでしょう。
しかし、彼女はその道を今度は自分で作り上げていく時期に入ったのです。
両者共に不安の中での決断だったはずです。
父も父でこれから歩んでいく道が辛くなっていくことをわかっているからこそ、決断を渋っていたのでした。
しかし、彼女の覚悟が決まった時、自然と父も判断を彼女に託すようになっていったのです。
これこそが両者共に揃って次の道へと進もうとしている啐啄同時の期だったのでしょう。