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『学習指導要領の未来(第2章)』国の方針から教育の変遷を読み解く vol.320

これまで幾度となく変化してきた学習指導要領。

近年は10年に1度のペースで変化を続け、時代に即した教育内容を提示してきました。

学習指導要領はまさに国家が育てて行きたい人間像の顕在化された書物です。

つまりそこを読み解けば、社会がどのように変化してきたのか、そしてさまざまな問題に対してどのように解決しようとしてきたのかが見られる非常に有益な情報が詰まっています。

しかし、公文書は使われている単語も難しく、内容も深いためなかなか気軽に読み進めることはできません。

そこで今回は、この本の第2章に記載されている、主に小学校学習指導要領の変遷と併せて解き進めて行きます。

指導要領の変遷

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/idea/1304360_002.pdf

これが学習指導要領の変遷になります。

パッと見た時に何を感じますでしょうか?

おそらく以前までの私であれば、ただの知識としてこれらを捉えていたと思います。

つまり、記載されている情報をただの情報として鵜呑みにしていたのです。

ただ、この変遷の裏にある時代背景を知ればより、その理解は深まります。

戦前後の学習指導要領

例えば一番最初の学習指導要領ができたのは、ここには記載されていませんが戦後間も無くの1947年です。

それ以前にも教育研究がされてきたとはいえ、完全なる下地を作る段階。

そこではなすことによって学ぶ経験主義がありました。

そのため、教科学習の形がいち早く作られてきたのです。

その4年後の昭和26年に最初の改訂がされ、教科学習の一層の充実と、これまで教科外の学習として設定されていた自由研究(今の部活動や委員会活動等)が廃止され分断されていったのです。

その後の昭和33年の改訂では、戦後間も無く作ったことで、十分に考慮できなかった教科間の連携を図った系統的な学習を取り入れました。

その次の昭和43年の改訂では、国民生活の向上、国際的地位の回復による指導要領の責任の大きさに鑑みて、その児童の成長段階に適した学習を行えるように、より改善が進んでいった。

ゆとり教育スタート

昭和52年の改訂では、文科省からの資料にあります通り、いわゆるゆとり教育と言われるものが施行されます。

最近では世間的にも一般的な知識になってきた「最近の若者はゆとり世代だから〜」と口に出すおじさんも実はゆとり世代という事実も改めて認識できるのではないでしょうか?

そして、この頃から経済的にも全体の最低水準が上昇してきた日本では、高等学校への進学90%以上となります。

それに伴って、知識の伝達だけの授業が問題視されるようになり、授業改革が進められるようになってきました。

今年度の高等学校の指導要領改訂の中の主軸になっている、探究の時間はこのときにできた”ゆとりの時間”が原型になっています。

そう考えると、これほど前から中止されてきたにも関わらず変化できなかった教育現場の、旧態依然の気質の重さを改めて痛感します。

時代の変化が顕在化

平成元年の改訂では、より社会の変化に順応した人材の育成を目指すように明記されます。

国際化、高齢化、価値観の多様化、核家族化、情報化、物質的な豊かさ、社会が大きく変化していく中で、その社会の変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成を目指すように教育も変化していったのです。

それが平成10年の改訂にも大きく現れてきた”生きる力”の育成にもつながるのです。

覚えるための知識ではなく、使えるための知識、知るための知識ではなく、深めるための知識といったところでしょうか。

総合的な学習の時間は一層の充実が図られ、各教科においても教科学習をどう教えるかに重きを置くようになったのです。

平成20年の改訂では、60年ぶりに教育基本法が改正されよりこれからの教育の目的・目標が明分化された。

そして、平成29年の改訂。

これまでの生活に生かしていく力を備えていく教育に加えて、その教育のもとで学び、どのような社会を実現していくかという創造主思考が加えられた。

これが指導要領の変遷である。

社会の変化との結びつきを考えて

このように見てくると、指導要領がいかにして社会に則って変化してきたかが見て取れる。

つまり、私たちは常に社会の動きと連動し、育てたい生徒像を心に留め、なんのために教育するかを深く考えていかなければならない。

旧態依然となった学校業務を作業のようにこなしていては、社会の変化など到底目にも止まらずに過ぎ去っていくことでしょう。

私たち教員こそが外に目を向け、常に変化に敏感にあり、児童生徒を育てていく。

これこそが真の教育、指導要領の役目と言えるのでしょう。

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