美しい器。「バカなフリ」も「頭いいフリ」もしなくていいんだよ
僕は言った。
バカなフリはしなくていいよ
あなたは、夕方、
家を抜け出して
僕に電話してくれた。
とても苦しそうだった。
美しい人。
あなたはバカじゃない。
僕はよく知っている。
ずっと見てきたから。
美しい人。
僕の知らない本を読んでいた。
僕の知らない音楽を聞いていた。
小学校低学年の僕を連れて
池袋や渋谷の汚い街を歩いた。
30代の男性が振り返る。
10代の男性が目で追う。
50代の男性が盗み見る。
奔放で邪悪で、
蠱惑的な僕の女王様。
僕は誇らしかった。