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よくわかるアンダーテールの設定と個人的考察

どうも、こんにちは。いえっさです。

今回はアンダーテールについて解説するnoteを書きました。このゲームはとても面白いんですが、話があまりに複雑すぎて一度プレイしただけは物語の全貌がつかめません。そこで話を簡潔にまとめながら、自分なりの考察を書きました。無論ネタバレ全開です。「1回プレイしてみたけど、なんかいまいち話が掴めなかったな~」くらいの人が読むのを推奨します。なお、文中や図表に出てくる「ソウル」と「タマシイ」という2つの単語は同一の意味を示します。

それでは以下どうそ。

●冒頭概要

まずこのゲームは、簡単な歴史背景の説明から始まります。内容は

かつて人間とモンスターは争い、モンスターはその戦いに敗れた。モンスターは降伏し、人間は生き残ったモンスター達を魔法によるバリアで地下世界に閉じ込めた。そうして月日が経ったある日、一人の人間の子どもがその地下世界へと落ちてしまう。

というものです。

非常にシンプルな話ですが、ゲームを進めていくとそんな単純な話ではないということがわかってきます。まずはこの世界の設定を中心に見ていきます。

●人間とモンスターとソウルの関係

戦争の原因は、モンスターが秘める可能性に人間が恐れを抱いたことでした。この世界では「人間はモンスターよりも圧倒的に強い」のですが、モンスターは人間のソウルを取り込むことで強大なパワーを得ることができるのです。そして、その力を恐れた人間はモンスターに総攻撃を仕掛けたのでした。

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また身体だけでなく、ソウルも人間の方が遥かに強く、一人の人間のソウルは、戦争によって失われたモンスターのソウルの総計に等しいくらい強いといいます。アンダーテール界の人間は、まるで超サイヤ人の可能性を恐れて彼らを抹殺したフリーザのようです。あまりいいものとして描かれていません。

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弱いがソウルを取り込み強くなれるモンスター
強いがソウルを取り込めない人間

この世界の人間とモンスターの違いは、簡単に言えば以上のように表すことができます。

●ソウルの取り込み方

ソウルを取り込むには、まず誰かからソウルを抽出しなければならないのですが、それにはすさまじいパワーが必要になり、そして当然のことながら、ソウルを抜かれたモンスターは死んでしまいます。かと言って、死んだモンスターからソウルを抽出しようにも、モンスターは死んでしばらくすると身体がチリとなり、ソウルもそれに合わせて消滅してしまいます

*しかし いきたモンスターからタマシイを ちゅうしゅつするには
 すさまじいパワーが ひつよう…
*むろん タマシイをぬいた しゅんかん ほんたいが しぼうするのは 
 いうまでもない。
*また ニンゲンのタマシイは からだのそとへ でても そんざいしつづ
 けるが…

おおくのモンスターの タマシイは しぬと すぐに きえてしまう

  • 対して人間はある力(後述)により、死後もソウルが存続します。さらに、人間が人間の、モンスターがモンスターのソウルを取り込むことはそれぞれ不可能となっています。故にモンスターだけが人間のソウルを取り込んで強くなれる可能性を秘めているのです。

*いきたモンスターは ほかのモンスターのタマシイをとりこむことは で
 きない。
*ニンゲンがべつのニンゲンの タマシイをとりこめないのと おなじだ…

●命名ミスリード

ここで少し話が変わりますが、一度プレイ開始時点のことを話しましょう。実はこの時点ですでに面白い仕掛けが用意されています。

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「落ちた人間の名前は?」というキャラクラーを命名させるスタートはRPGの王道とも言える始まりですが、実は操作することになるキャラクター(後にフリスクと判明)と、このテキストが示している「落ちた人間」は別人なのです

どういうことかというと、実は穴に落ちた人間は、操作キャラ(フリスク)を含め、すでに8人もいて、プレーヤーが操作するのはその8人目(フリスク)であり、冒頭の命名は「1人目」に対してなのです。ゲーム内のキャラクターたちも、プレーヤーが操作する8人目(フリスク)を決して名前で呼ばずに、「あなた」とか「お前さん」とか「きみ」とか、あくまで二人称で呼びます。後から見返すとよくできているなと感心するところです。
後にこの8人目は「フリスク」という名前であることが明かされます。以下画像は、フリスクを二人称で呼ぶゲーム内キャラクター達の例です。

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●命名をミスリードさせる意味

普通、ゲームを開始して、「名前をつけてください」と言われれば、ほとんどの人は自分の名前をつけるでしょう。制作スタッフは明らかに1人目とプレイヤー(あなた)がリンクすることを意図しています。つまりこのことはこのゲーム世界において必要な舞台装置であるということです。実際にそういうストーリーになります(後述)。

というわけで、命名ミスリードの話については一旦ここまでにして、再び設定の方に話を戻しましょう。

●バリアとソウルと人間の関係

さて、もうひとつの大事な設定である「バリアとソウルの関係」についても言及しなければなりません。ゲームの根幹に関わる大事な設定です。それを説明するにあたって、まず地下世界に落ちた1人目の行動をおさらいします。

1人目は、かなりの悪意を持った人物であることがゲームを進めていくうちにわかります。1人目は地下世界に落ちた後、モンスターの王家に助けられ、しばらく彼らと楽しく暮らします。しかし、1人目は水面下で王家の息子アズリエルの協力を得て、ある恐ろしい計画を企てます。それは、

自分のソウルをアズリエルに吸収させ、それによって力を得たアズリエルがバリアを突破し、さらに外界で人間のソウルを6つ集め、1人目のソウルと合わせて7人の人間のソウルを取り込み、それによって得た力でバリアを壊してモンスターたちを地下世界から解放する。

というものです。

この世界唯一の出口に張られているバリアは、モンスターと人間のソウル1つずつで「突破」することができます。しかし、「破壊」するには7つもの人間のソウルが必要になります。バリアを抜けるのか、壊すのかは、大きな違いがあります。

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結界をくぐるには人間のソウル1つだけでは足りない

またこの計画は、アズリエルの様子から、1人目の主導であったとわかります。以下画像は、1人目とアズリエルが計画について話す様子です(セリフはアズリエル)。

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●計画から見える1人目の異常性

ところで、1人目のソウルを取り出すには、上述した通り1人目が死ぬ必要があります。上の「お花を取ってくるね」というアズリエルのセリフは、バターカップの花(金鳳花)のことであり、これは、地下生活の中でたまたま毒性があることがわかった花です。これを見つけた1人目は、この毒を利用して自死し、自らのソウルをアズリエルに託すことに決めたのです。目的のためなら自死すら厭わない1人目は明らかに常軌を逸しています。

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計画を実行し、実際に1人目が息絶え、その現実を目の当たりにしたアズリエルは、予定通りとわかっていながらも「こんな計画もういやだ」とその恐ろしさに震えます。アズリエルは1人目と違い、まっとうな心を持ったモンスターであったといえるでしょう。しかし、実際に1人目が死んでしまった後ではもう計画を実行する他なく、アズリエルは1人目のソウルを吸収し、バリアを抜ける力を得ました。それから今度はバリアを破壊する力を得るべく、6人の人間のソウルを求めて1人目の死体と一緒に外界へ出ていったのです。

●なぜアズリエルは1人目の死体を持って行ったのか

上でさらっと書きましたが、なぜアズリエルはソウルを求め外界へ出るのに、1人目の死体を持って行ったのでしょうか。特にソウルを取り込むにあたって、対象の身体が必要になるということはありません。人間のソウルを6つ集めてくるというのは、すなわち人間に戦争を仕掛けるということですから、1人目の死体は地下世界に置いてくる方が安全です。実際、詳細は後述しますが、アズリエルが1人目の死体を抱えて外界に出たことが致命傷となって、アズリエルはソウルの回収を失敗してしまいます。

この理由は、Pルート(誰も殺さないルート)をクリアすると明かされます。

1人目と ボクの タマシイを 1つに
ゆうごう させたとき…
からだを うごかす ちからも 2人に
わかれちゃったんだ
1人目は じぶんで タマシイのぬけた じぶんの
からだを もちあげた。
そして ニンゲンの むらへ いったときも
あいつが こういったんだ…
「ぜんりょくで こうげき しよう」って。
でもボクは はんたいした。

そう、1人目の死体は、アズリエルではなく1人目の意思によって持ち出されたのです。身体を動かす力が2人に分かれたと言っても、基本体はアズリエルですから、1人目が主導権を握るには、近くに自分の本体(死体)がなければならなかったのでしょう。そして同じシーンで、1人目が人間に強い恨みがあったことも判明します。

離してくれなかった
にくしみが強いってことは

理由や詳細を聞かずとも、憎しみの強さが推し量れるとはよほどの憎しみです。また、1人目がイビト山にのぼった理由も暗に語られます。

キミ(フリスク)も あのでんせつは しってるよね?
「イビト山にのぼったものはにどともどらない」
キミは どうして そんな山に のぼったの?
ちょっと バカを やっちゃっただけ?
それとも それが うんめい だったのかな?
それとも…
ううん…いずれにせよ
1人目が あの山に のぼった理由はね…
じつは そんないいものじゃ なかったんだ…

明言こそ避けていますが、「そんないいものじゃなかった」という部分を安直に読み解くなら、これは自死でしょう。もしかすると、1人目は地上でいじめや迫害に遭っていたのかもしれません。何にせよ、死ぬつもりで訪れたイビト山で地下世界に落ち、幸運(?)にもアズリエルに助けられ、復讐する機会を得た、というのが真相であると考えられます。

・1人目の人物像

さて、このように1人目は人間に強い恨みを持っていた一方で、モンスターとは良好な関係を築いていたようです。1人目はアズリエルと仲良く過ごし、アズゴアやトリエルからも心配されるような存在でした。

「*〇〇〇…
*きこえる?めを さまして…
*〇〇〇!*ケツイを ちからに かえるんだ!
*あきらめるな…
*きみは ニンゲンとモンスターの みらいをになうもの…

上は、1人目が死んだ(自死した)時に、声をかけるトリエルとアズゴアの様子です。特にアズゴアの「きみは人間とモンスターの未来を担うもの」という期待の様子からして、1人目は、少なくとも地下世界では希望的な人物であったことがうかがえます。

しかし、モンスターを想う気持ちがあったわけでもないようです。本計画の一因を担ったバターカップの花の毒性を見つけたのは、ある勘違いからアズゴアが誤ってそれを口にして苦しむ姿を見たためなのですが、それを見た1人目はその様子を「笑い飛ばしていた」のです。モンスターを想う優しい人間の行動ではありません。

*とうさんに バタースコッチパイをつくってあげようとしたときのことでしょ?
*レシピに 「バター カップ1」ってかいてあったから…
*「バターカップ」っていう はなをつんできて いれたらどくが あったんだよね。
*そうそう! それで とうさんメチャクチャ ぐあいが わるくなっちゃってさ。
*すっごい はんせいしたよ…かあさんも カンカンだったし。
キミみたいにわらいとばせればよかったんだけど…
                      ビデオテープ3の記録より

●サイコパス要素を持つ1人目と私たちプレイヤー

こうした様子から、1人目の人格を表すには「サイコパス」という言葉が最も適切かもしれません。

最大の特徴は「良心の欠如」であり、他人の痛みに対する共感が全く無く、自己中心的な行動をして相手を苦しめても快楽は感じるが、罪悪感は微塵も感じない[9]。「人の心や人権、尊厳を平気で踏みにじる行動をしながら、そのことに心が動かない」という特徴があり、良心の呵責なく他者を傷つけることができる[10]。         Wikipediaより「サイコパス」

またサイコパスには、「口が達者で表面は魅力的」という特徴もあり、モンスターと友好な関係を築いていたであろう1人目の特徴としてぴったりと一致します。

●アズリエルによる計画の頓挫

上述した通り、外界に出たアズリエルは計画に反し、人間6人のソウルを奪うことをしませんでした。この時1人目とアズリエルの間では、行動権の奪い合いがあったと思われます。結局1人目の死体を抱えて外界に出たことが仇となり、人間に「1人目を殺したモンスターだ」と勘違いされ、攻撃を受けボロボロになってしまいます。1人目のソウルを取り込み強大な力を得たアズリエルですから、反撃しようと思えばいくらでもできたはずですが、それでもアズリエルは「人間と戦争なんてしたくなかった」と言います。なんていい子なんでしょうか。

こうかいしないよ
ぼくはただしいこと

そうしてアズリエルは1人目の死体を抱え、傷だらけの身体で地下世界へ帰ります。なんとか地下世界に逃げ帰ったアズリエルでしたが、そこで力尽き、お城には1人目の死体と、死んだアズリエルのチリが残りました。ここで大事なのは、モンスターであるアズリエルのソウルは肉体と共に消滅した一方、人間である一人目のソウルは死後も存在し続けた、ということです。

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●怒れる王アズゴア、離反する妃トリエル

この一連の騒動は王アズゴアからすれば、「無垢な子どもが、モンスターの為に自らを犠牲にして外界に出たが、人間によって返り討ちに遭ってしまった」という風に見えたでしょう。愛する子どもを二人同時に失ったアズゴア王は、悲しみと怒りに震えます。

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そこで、1人目の死体を地下室に保管し、これから地下世界に落ちてくる人間7人のソウルを奪い、バリアを破って人間界へ攻め入ることを宣言します。この宣言にモンスターたちは希望を見出し喜びましたが、妻トリエルはこれに反対し、アズゴアの元を去りました。トリエルはアズゴアとは反対に、人間が落ちてくるであろう穴近くの遺跡に移住し、落ちてきた人間を保護しようとしたのです。

その時さらに、地下室の棺桶に閉じ込められたままでは1人目が不憫だと思ったのか、トリエルは1人目の死体を持ち去り、彼を遺跡近くの黄色い花の下(ゲームスタート地点)に埋葬しました。このことが後に1人目が復活する契機となってしまいます。

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この後は、トリエルの保護も虚しく、落ちてきた人間6人(2~7人目)はみな地下世界から脱出しようとし、トリエルのもとを離れ、アズゴアに殺されソウルを奪われてしまいます。そして8人目(フリスク)が落ちてきて、彼を操作するところから私たちのプレイが始まるのです。

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●アズゴアの研究

一方、宣戦布告を誓ったアズゴアは、落ちてきた人間のソウルを奪う計画を推し進めると同時に、科学者たちにソウルの研究を依頼します。バリアを壊すのに、落ちてくる人間を待つだけでは時間がかかり過ぎると踏んだアズゴアは、モンスターのソウルも利用することを考えたのでしょう。

もちろん上で説明した通り、モンスターのソウルは死後すぐに消滅し利用することができません。しかしアズゴアが依頼したこの研究によって、人間のソウルがなぜ死後も存在できるのかが判明します。

それは、人間のソウルには「ケツイ」という「生き続けたいという意志」、「運命を変えたいという強い気持ち」が存在したためでした。

*ついに やった。
*かんせいした そうちをつかいニンゲンのタマシイから ある
 “ようそ”を ちゅうしゅつした。
*ニンゲンが しんだあともタマシイがきえないのは このようその おか
 げだ。
*いきつづけたいという いし…
*うんめいを かえたいという つよいきもち。
*わたしは この ちからを…「ケツイ」と よぶことにした。

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同時に、科学者アルフィーは人間の身体からケツイを抽出することに成功します。続けて、抽出したケツイを死んでチリになる前(ソウルが消滅する直前)のモンスターに注入することを考えます。そうすれば、モンスターのソウルは死後も人間のそれと同様に存在を保ち、これまで利用不可能だったモンスターのソウルが利用可能になると考えたのです。

*王は 国民ぜんいんに“うごかなくなった”モンスターをさしだすよう お
 ふれを だした。きょう その モンスターたちが はこびこまれてき
 た。
*いまは まだ いしきのないからだが そんざいするけれど すぐに ち
 りに なってしまう。
*でも そのまえに 「ケツイ」を ちゅうにゅうしたら…?
*しんだあとも タマシイを しょうめつさせない ほうほうが みつかれ
 ば…
*わたしたちが じゆうになるひは おもったより はやく おとずれるか
 もしれない。

●アルフィーの実験その1

モンスターのソウルを取り出す実験が成功したとしても、バリアを突破するには膨大な量のモンスターのソウルが必要になるため、次はソウルを保存するための器が必要ということになりました。※戦争で失ったモンスターのソウル総計と、人間一人のソウルが同じ強さであるということを思い出しましょう。

*モンスターのタマシイをいれる うつわが ひつようになる。
*いきたモンスターは ほかの モンスターのタマシイを とりこむことは
 できない。
*ニンゲンが べつのニンゲンの タマシイを とりこめないのと おなじ
 だ…
*それなら…ニンゲンでも モンスターでも/ないものなら うつわになる
 かもしれない…

*こうほを きめた。
*アズゴアには まだ いってない。おどろかせたいから ないしょに し
 ておこう…
*おしろの にわの まんなかに ある とくべつなもの。
*いちばん さいしょに さいた きんいろの はな。
*そとの せかいから もちこまれた はな。
*あの はなは 女王が おしろを でていく ちょくぜんに あらわれ
 た。
*もしも…タマシイを もたないものが いきる いしを てに
 いれたら どうなるのだろう?

モンスターはモンスターのソウルを取り込めないため、生物ではない「きんいろの花」がモンスターのソウルを保管する器の候補となりました。

この花は「トリエルがお城を出ていく直前、つまり一人目とアズリエルが死んだ直後に現れた外の世界から持ち込まれた花」という説明があります。アズリエルたちが外の世界から持ち帰ってきたもので間違いないでしょう。アズリエルが外界へ出た時、「アズリエルは外の世界で1人目の死体をきんいろの花のベッドに横たえた」とあり、この時の接触によって種が持ち込まれたのだと考えられます(いわゆるひっつき虫)。

ひっつき虫(ひっつきむし)は、動物の体やヒトの衣類に張り付いて分布域を広める種子散布様式をもつ植物の種子(果実)の俗称[1]。wikipediaより

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●アルフィーの実験その2

ここまで順調に進んできた実験も、次第に暗礁に乗り上げます。まず、ケツイを注入した死にかけのモンスターがチリにならず、ソウルが手に入らないのです。

*もんだい はっせい。
*モンスターの からだが ちりに ならなくて タマシイが てにはいら
 ない。おそうしき用に ちりは/かえすって やくそく したのに。
*いぞくから「どうなってるんだ」って といあわせが きてる…
*どうしよう…

さらにうつわの方も、ケツイを注入しても何も起こりませんでした。

*「うつわ」の じっけんは しっぱい。
*べつの サンプルを つかった ばあいと たいさは なかった。
*でもいい…どうせ あつかいづらい そざい だったし。
*いちど タネが くっつくと とれないから…

「別のサンプルを使った場合と大差なかった」というのは、つまりモンスターにケツイを注入した場合と大差なかった、ということでしょう。どちらも動きがなかったということです。ただモンスターの方は遺族から返却を迫られていたので「どうしよう…」と焦り、きんいろの花については、どうせ植物だから「でもいい…どうせ扱いづらい素材だったし」とドライな反応だったのだと考えられます。

●アルフィーの実験その3

完全に行き詰まったかに見えた実験に動きが見えます。なんと、死んだかに見えた(死後ケツイを注入したものの、チリにならずソウルを取り出せなかった)モンスターたちが起き、動き始めたのです。

*うごかなくなったモンスターたちが…
*…ぜんいん めをさました。
*みんな なにごとも なかった/みたいに あるきまわったり/はなしをし
 たり してる。
*みんな もう しんじゃってる はずなのに…?

*じっけんは いきづまっちゃったけど…
*でも なんとか ハッピーエンドに できたのかな…?
*ニンゲンのタマシイはアズゴアにかえして 「うつわ」は おしろの
 にわに もどした…
*それから ひけんしゃの かぞくには 「ぜんいん いきかえった」
 って つたえた。
*あした みんなを おうちに かえしてあげるんだ。(^-^)

アルフィーは、ケツイの抽出に使った人間のソウルをアズゴアに返し、遺族には生き帰ったモンスターを返すと伝え、きんいろの花はお城に庭に返しました。結局、モンスターのソウルを利用するという目的は達成できませんでしたが、ひとまず誰も悲しまない結果に着地できたと安心したのです。

しかしこれだけの人体実験を繰り返して、何事もなく終わるはずがありません。生き返ったと思った被検体のモンスターたちは、人間のケツイを受け入れきれず、原形を失い、果てはお互いが融合したぐちゃぐちゃのキメラになってしまったのです。

*ウソ… どうしよう…どうしよう…!!

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くっいた

*いぞくから ひっきりなしに でんわがくる… みんなは いつ かえっ
 てくるのかって。
*なんて こたえればいいの?もう でんわが なっても むし してる。

エルリック兄弟もびっくりのとんもない人体実験をしてしまったアルフィーですが、これによって彼女はゴミ捨て場にふさぎ込みむようになり、さらに自分に一切の自信を持てない卑屈な性格になっていきます。

*さいきんは ずっとゴミすてばに いる。
*わたしに ふさわしい ばしょ。

●フラウィという悲しき存在

また、きんいろの花もアルフィーの知らないところで悲しい存在と化していました。

*あの はなが きえた。

きんいろの花は、単なる植物ではなく、アズリエルのチリを含んだ花であったため、ケツイを注入されたその花は、ケツイに加えてアズリエルの人格や記憶を備えて生まれることになりました。アズリエルは、突然花の姿で生き返り、ソウルのないからっぽの存在として再びこの世に蘇ったのです。これがフラウィ(=ケツイによって蘇ったソウルのないアズリエル)です。

こうしてフラウィとして復活したアズリエルですが、フラウィとなった後、彼は不安と寂しさから両親に会いましたが、彼らに優しくされてもまったく心が動きませんでした。アズリエルのソウルは死んだ時に肉体と共に消滅してしまったため、フラウィは愛を感じることができなくなっていたのです。

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しばらくどう努力しても愛を感じることのできなかったフラウィは世界に絶望し自死を試みます。しかし、死ぬ間際になって「死にたくない!」という意志がフラウィにこみ上げてきます。そして気づくと、最初にいたお城の庭に戻っていたのです。ここで、フラウィは自分の「セーブ能力」に気づきす。フラウィは、死んでも、自分がやり直したいと思えば最初からやり直せるようになったのです。これがフラウィに注入された人間のケツイによる力です。

フラウィはこの力を使い、世界で色々なことを試します。最初は人助けをしたり、みんなと友達になったり、ケツイの力をいいことに使おうとしましたが、あらゆることを試すと、モンスターたちの反応がすべて読めてしまい、飽きてしまいました。そんな時ふと、「こいつらを全員殺してみたらどうなるんだろう」という好奇心が湧いてきます。そしてそれすらもやり尽くして、ありとあらゆるループを繰り返しているうちに、より深く屈折し、「この世界は殺すか、殺されるかだ」といった狂人的思想を持った歪んだ存在となってしまったのでした。

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●アルフィーが犯した罪の大きさ

こうして物語を追っていくと、アルフィーの罪の大きさは甚大だと言わざるを得ません。自身もそれを認め、Pルートでは、罪を告白し償う生き方をすることを決めますが、アズリエルからしたらたまったものではないでしょう。

うちあける

アズリエルはとても悲しい存在です。地下世界に落ちてきた1人目を助け、仲良く暮らし、協力し、人間に復讐することもなく、最後まで友を想って優しく死んだのに、知らぬ間に人体実験の被害者となりソウルを持たない存在として勝手に生み出され、しかもゲーム内で何度も生をループし、どうやっても自分は幸せになれないことを理解させられたのですから、まさに悲哀の権化ともいえる存在です。そんなフラウィがゲーム開始時点のように歪んだ性格になってしまうのも無理はないでしょう。

しかも、プレイヤーという自分の力の及ばない新しい存在が表れてもなお、このフラウィが幸せになるルートはないのです。フラウィがソウルを取り戻して元の姿に戻るとか、戻れないけど幸せに成仏していくとか、そういう救いのある終わり方がフラウィには存在しません。

●Pルートの結末

Pルートという、一見ハッピーエンドに思える結末でさえ、フラウィだけは悲惨な結末を迎えます。何度も生をループし、世界に絶望したフラウィが唯一予測のできない存在が、プレイヤー(あなた)だったわけですが(詳しくは後述)、だからこそ彼にとってプレイヤーだけが自分を満たしてくれる唯一の存在だったのです。そうして、フラウィはプレイヤーがこのゲームをクリアしないように、ソウルの力を得てプレイヤーを倒しにかかります(Nルートではオメガフラウィとなって同じことを試みる)。

アズリエル
きみしかいない

しかし、ソウルの力を得て、アズリエルの心を取り戻したフラウィは、今度はその良心が原因となって、プレイヤーを倒すことができません。すべてをやり尽くした世界で、自分を満たしてくれる唯一の存在がいなくならないように引き留めたい。しかし、引き留めるための力を得ると、今度は優しい心が復活し、そんな気が失せてしまう。なんとかわいそうな運命なのでしょうか。

はなのすがた

ソウルの力で心を取り戻したアズリエルは、その優しさから、取り込んだソウルの力でバリアを破ってモンスターを解放し、その後でソウルをみんなの元に返します。ソウルを返すということは、自分は再び花の姿に戻り、何も感じない存在になるということです。Pルートでは最後に仲間たちが外界で楽しむエンディングが流れますが、その裏でフラウィは、何も感じない存在として悲しく生き、さらにケツイのために死ねない存在として、永遠と退屈な地下世界をさまよい続けるのです。Pルートをクリアしたところで満足している人は、ぜひNかGルートをクリアしたところで世界を保存して、フラウィを解放してあげてはいかがでしょうか。

エンディング

アルフィーがフラウィについて知っているのは「あの はなが きえた。」までなので、きっと彼女はフラウィの生のあらましは知らないでしょう。彼女は実験によって悲惨な姿になってしまった被検体モンスターの遺族たちに謝り、罪を償う生き方すると決めますが、フラウィの中にいるアズリエルの苦悩を知ったらどうなのるでしょうか。今度こそ自尊心が壊れ切ってしまうかもしれません。

●フラウィというキャラクターについて

さて、このフラウィというキャラクターは、背景を知ると同情しますが、やっていることや思想そのものだけを見れば非常に危険なものです。実際、1週目のプレイでは、ほとんどのプレイヤーはフラウィに嫌悪感を抱くでしょう。しかしフラウィの行動や思想はよくよく考えると、現実のゲームプレイヤー(あなた)となんら変わりありません。何度もやり直せる世界で様々なルートを試し、色んなキャラクターの反応を楽しみ、飽きたらそれらすべてリセットをし、今度は試しにすべてを殺してみる。心当たりはありませんか?

通常プレイを通して、フラウィは非常に歪んだ性格でプレイヤーをなじってきますが、実はプレイヤー本人もソウルのなくなったフラウィとなんら変わらない残虐性を持っているのです。フラウィは、まるでゲームプレイヤーの生き写しです。いや、ソウルを持っているにも関わらず、そんな残虐性を秘めている私たちプレイヤーは、フラウィよりもよほど性質が悪いと言えるかもしれません。

●Gルートについて

そして、ソウルがあるにも関わらず残虐性を秘めた存在は、プレイヤー以外にももう一人います。そう、1人目です。
過程や本質は違えど、1人目とプレイヤーとフラウィは残虐性を持った存在と言えます。フラウィは、ゲーム後半にて自分たちのことを「ぼくらのような化け物」とくくって自虐してみせます。

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●プレイヤーと1人目の共鳴

プレイヤーがこのような残虐性を奥底に秘めているからこそ、ゲーム開始時にプレイヤーは同じく残虐性を持つ1人目として名前を当てがわれます。
プレイヤーがゲーム開始地点(1人目が埋葬されている場所)に降り立った時、1人目は自分に近い存在としてプレイヤー(あなた)と共鳴し始め、プレイヤーの行動に応じて力が呼び起こされることとなっていくのです。

8人目(フリスク)の身体を通じてプレイヤー(あなた)と共鳴し始めた1人目は、最初は自身をコントロールできませんが、プレイヤーが虐殺を繰り返し、1人目とより似た残虐性を持つほどに、徐々に共鳴の度合いを増していきます。そしてGルートを完全にクリアすることで、1人目はプレイヤーを超えた存在として復活します。その後、Gルートの世界では、どうやっても1人目の意志が優先され、世界そのものを消すことになります。1人目は、「プレイヤーが殺戮を繰り返し、力をつけることによって自分が蘇った」といいます。

悟った
力

ラスボスが復活してバッドエンド。だけで終わらないのがアンダーテールです。復活した1人目が世界を消して(リセットして)、やり直そうとするのには理由があります。

次へ

1人目の目的は人間へ復讐することですから、1人目としては少なくともバリアを突破しなくてはなりません。しかし、モンスターがすべて消えたGルートの世界では、もはやそれは叶わないのです。なぜなら、バリアを突破するには人間のソウルとモンスターのソウルが一つずつ必要だからです。バリアを抜けるのに必要なモンスターはすでにプレイヤーが皆殺しにしてしまっています。したがって、復活した1人目は、人類を抹殺するという目的の為に世界をリセットしなければならなかったのです。

●取引によるソウルの譲渡と世界の復活

1人目の言う通り、「次に進んだ」プレイヤーは、その際に1人目から取引を持ち掛けられることになります。それは、プレイヤーのソウルと引き換えにゲーム世界を復活させてやるというものです。本来ゲームをリセットすれば、1人目は再びフリスクの身体の中でプレイヤーの殺戮を待つしかない存在になります。しかも首尾よくプレイヤーがGルートに進んでも、復活こそすれ、やはりモンスターの殺戮が原因で地上に帰れない状況になってしまいます。このがんじがらめから抜け出すため、1人目は、ソウルの取引を持ち掛けたのです。

お前は、私が求めるものを持っている。

それを差し出せ。

そうすればこの世界を復活させてやろう。


1人目は、アンダーテールというゲーム世界を、自分がソウルを持った状態(プレイヤーのソウルを乗っ取った状態)で始まるようにすれば、次の世界でプレイヤーがNやPルートを進んだ時に、1人目として復活しながらにして外界へ出られると考えたのです。

このことは、Gルートをクリアした後にさらにGルートをもう1回クリアすることでさらによくわかります。Gルートを2回クリアすると、1人目は他のルートに行ってみてはどうか、とプレイヤーにアドバイスします。

だが、お前と私は同類ではない…そうだな?
このタマシイは不可思議な感情に満ち溢れている
お前がこの世界を作りなおしては
何度でも破壊を繰り返すことには理由がある
お前は…お前の心はゆがみ、ひずみ、壊れている
私には、もはやお前の感情は理解できない
しかし、それでも私はお前に提案せねばならない
いま一度この世界を作り直すかと。
お前には別のルートのほうがふさわしいのでは…?

またこのセリフからわかることは、やはり1人目は単なる狂人ではないということです。意味もなく殺戮を繰り返すプレイヤーのことを「理解できない」とし、「同類ではない」と表現しているわけですから、裏を返せば、1人目はたとえサイコパス的要素があったとしても、その行動には明確な理由や信念があるということです。

Gルートの繰り返しは、1人目もドン引きの異常性ということですが、ともかく1人目としては、プレイヤーがGルートを進む限り外界へ出ることができないわけですから、やはりプレイヤーが別ルートへ進むことを提案しなくてはなりません。それが最後のセリフに続くわけです。

別

●Gルートをクリアした後のP及びNルートエンディング

この辺りは有名なエンディングですね。無事にプレイヤーのソウルの持った状態で外界へと出た1人目は、Gルートの時と同様に覚醒します。なんとも気味の悪いエンディングですが、1人目からすると長い時を経て再びチャンスが巡ってきたのですから、万感の思いかもしれません。

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●まとめ

予想以上に長くなってしまいましたが、これでこのnoteはおしまいです。このゲームはすべてを明確に語ってくれるわけではないので、道中様々なところで憶測の域を出ない記事になってしまいましたが、こうして考察する余地のあるゲームはやはり面白いですね。

そして今回はまったく触れませんでしたが、フラウィやプレイヤーによる世界のループに気づいているゲームキャラクターがいます。それがサンズ(とパピルス)です。このあたりは特に明確な資料がなく、考察が難しいのですが、端々に気になる描写が散りばめられています。

サンズとパピルス
一度も死んでいないじゃないか

彼らに触れだすと一層話が終わらなくなってしまうので、今回はここで終了します。また気が向いたらそのあたりについて記事を書いてみようかなともいます。

というわけで、ここまで読んでいただいてありがとうございました。

終わり






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