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「Komaカー」とそれにまつわる奇妙なエピソード

どうも初めまして、いえさぶです。基本はXに雑記を投稿していますが、そっちでは書き切れないことをここに書き殴っていきます。何卒よろしくお願いします。


さて、記念すべきNoteでの最初の投稿は、とある小さな変形ロボと、それに秘められた数奇なエピソードについてです。

ある日、私は友人と共にミニカーのイベントに出店し、無事イベントを終えて帰路に着いていました。そして、その道中のとある骨董品店でそれに出会いました。

所狭しと骨董品が置かれた店内には私の愛してやまないミニカーも転々と置かれていて、カテゴリ分けされていない店内からそれを見つけ出すのは一種の宝探しのようで、私は珍品がないかと必死で探しました。

あらかた店内を漁ったあと、レジ前に置かれた小さな棚が目に入りました。そこにはネッツトヨタ特注のトヨタ・ラウムのチョロQ、チープミニカーマニア御用達のサマーメタル製のプルバックカー、要するに細々としたサイズのミニカーが置かれていました。私の目に、爽やかなメタリック・グリーンの成形色が飛び込んできました。

今回の主役、「Komaカー」

チョロQと同タイプのダンロップの刻印が入ったゴム製のリアタイヤ、それとは対照的なプラ製のフロントタイヤ、そして何よりもそのスタイリングとトヨタのコンセプトカー・FX-1という他にはないマニアックな車種選択、私は確信しました。「これはタカラの『メカ戦士』だ!」

タカラの「メカ戦士」。発売は1984年ごろと見られ、ラインナップは
・バギータイプ
・4WDタイプ
・FX−1タイプ
・ポルシェタイプ
の4種類、カラーバリエーションはそれぞれに赤と青の2種類。単発に終わったシリーズで、非常に資料が少ないロボットトイ。しかし、後にこのおもちゃは名を変え、海の向こうでもう一仕事することになるのです。

タカラの「メカ戦士」。画像はオークションより引用。

彼らはどんな仕事をしたかというと、サイバトロン星からやってきた、善と悪の超ロボット生命体のエキサイティングな闘いに参加することになったのです。そう、皆さんご存知「トランスフォーマー 」の一員としてラインナップされました。

「ミニスパイ」と名を変え、
トランスフォーマー の一員に加わったメカ戦士。
写真はTFWikiより引用。

タカラのメカ戦士たちは「ミニスパイ」と名を変え、白や黄色の新たなカラーバリエーションを与えられ、当時のトランスフォーマーシリーズの売り文句であった「ラブサイン」(摩擦熱によりオートボット、ディセプティコンのマークが浮かび上がる)ステッカーを貼り付けられ、晴れてトランスフォーマーの仲間入りを果たしました。

しかし、彼らは通常ラインナップとして販売されたわけではありませんでした。彼らは当時のトランスフォーマーシリーズで最も廉価で、最も小さい戦士たち、俗に「ミニボット」と呼ばれるクラスのおもちゃに、なんとオマケとして付属し流通したのです。
メカ戦士は当時通常のトランスフォーマーにはなかった、プルバックモーターによる走行ギミックが搭載されていたので、何ならミニボットより遊びの幅は大きいわけです。しかも最廉価クラスが商品本体なので、相当豪華なオマケと言えます。

「Komaカー」のロボットモード。

さて、話は私が手に入れたおもちゃに戻ります。
先ほどこの型のおもちゃのカラーバリエーションは「メカ戦士」で赤と青、「ミニスパイ」でそれに加えて黄色と白、と挙げました。
しかし、私が手に入れたのはメタリック・グリーン。成形色なので改造の余地はありません。この時点で違和感を感じますが、本題は次からです。

輝く「©️Koma」の刻印。

本体裏側にベッタリ貼られていた¥50の値札を慎重に剥がすと、「©️Koma JAPAN」の刻印が現れました。メカ戦士、ミニスパイ共にタカラが製造していたのでここには本来タカラの刻印が入るはずです。さらに違和感を感じた私はネットでメカ戦士のFX-1タイプの画像を検索しました。

!?

「顔が違う!全然違う!?」
思わず声が出てしまいました。
本家メカ戦士、そしてミニスパイ版ではシルバーに塗装されていた顔は成形色の黒が剥き出しなだけでなく、そもそも顔部分の造形がまるで異なっていたのです。
その他にもステッカーのデザイン、貼られるパターンも全く異なっていました。

メカ戦士、ミニスパイ共に存在しないはずの成形色、謎の「Koma」の刻印、全く別人の顔、デザインも貼り方も異なるステッカー。
私のヘンテコトイレーダーが猛烈に反応しました。
「これはメカ戦士でもミニスパイでもないぞ!」

珍品を手に入れたら見せびらかさずにはいられないタチの私は早速Xにこのおもちゃについてを投稿し、情報収集を開始しました。しかし、そう簡単に情報が出てくるわけもなく、ただ時間が過ぎていきました。

しばらくしたある日、とある投稿が目に入りました。

画像に写っていたのはメカ戦士のバギータイプと同型のロボット、しかし顔の造形が異なっていて、胴体下部の刻印は「©️Koma JAPAN」
正しく私が手に入れたものと条件が一致していたのです。

私は早速投稿者の桃源氏に連絡を取り、この謎のロボットの詳細について質問しました。すると驚くべき返答が得られました。

あまりにも衝撃的な返答に言葉を失いました。
その後、桃源氏により詳しい経緯が伝えられ、その結果Komaカーに関するいくつかの事実が明らかになりました。

まず。Komaという会社についてです。Koma社はタカラの下請けを行なっていた会社で、当時のダイアクロンの一部製品はKoma社によって提供されたものであることが判明しています。

Koma社によって提供された
ダイアクロン製品の一例。


そしてKomaカー本体についてです。何とKomaカーはTF版ミニスパイの没案である可能性が高いとのことです。それがなぜ市場に流通してしまったのかというと、赤いベンディングマシンでお馴染みのコスモス社が関わっていたのです。

コスモスのベンディングマシン。

「Komaカー」が日本で流通した経緯の仮説は次の通りです。
・メカ戦士をTFミニスパイとして販売する際、頭部造形をKoma社を通して改修。
・しかし予定が変更されKoma社版は没となり、ミニスパイはメカ戦士版の金型をそのまま使用して販売。
・過剰在庫となったKoma社版をコスモスが買い取り、未組み立てのままガチャガチャのアタリ枠のプラモデルとして販売。

とても興味深い話です。さらに、TFのミニスパイ付きミニボットのアソート箱に、「KOMA CAR」の表記がある事が確認されており、この事から米国でも販売または配布されていた、もしくはされる予定だった事が判明しています。

TFSource 2018年の記事に投稿された
ミニスパイ付きミニボットのアソート箱の画像。
「KOMA CAR」の表記が見て取れる。
出展: https://tfsource.com/blog/2018/05/13/news-to-me-2018-edition/

さらに、変更された頭部の造形にもトリビアがあります。


上:ダイアクロン リモコンカーロボット
下:「Komaカー」トヨタFX-1タイプ

Koma版FX-1ロボの頭部造形は、Koma社がタカラに提供した「ダイアクロン リモコンカーロボット」のものを流用しており、比較すると縦横の比率などは異なるものの、基本的な造形の要素は一致している事がわかります。

上:「Komaカー」4WDタイプ
下:マーク 合金ロボカー ソアラロボ

さらに、4WDタイプのKomaカーの頭部造形はマーク社の合金ロボカーのものが各部省略されているものの流用されており、この事からKoma社もしくはタカラとマーク社の今までに言及されていなかった繋がりが明らかになりました。

以上が今のところ明らかになっている「Komaカー」の詳細です。
骨董品店で何気なしに買った小さなおもちゃから、ここまで興味深くディープなエピソードが出てくるとは考えもしませんでした。今後もKomaカーとメカ戦士、そしてミニスパイとの繋がりと当時の小型変形ロボットトイの関係性について調査を続けていきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。今後もNoteではXやInstagramでは書ききれなかった蘊蓄を書き殴っていく予定です。それではまたお会いしましょう。

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