イラン出身モンゴル代表
永瀬選手の金の話題が国内では盛り上がっていた東京オリンピック男子柔道81キロ級の決勝で、永瀬選手と対戦し、銀メダルを獲得したイラン出身・モンゴル代表のサイード・モラエイ選手の話。
イラン出身モンゴル代表という少し気になる肩書には、日本では縁がないような独裁国家に生まれたスポーツ選手の歴史がありました。
サイード・モラエイ選手は2018年の柔道世界選手権大会の王者で、翌2019年の世界選手権東京大会では決勝でイスラエルのサギ・ムキ選手と当たる可能性が出てきた為、モラエイ選手は、出身のイラン国家並びにイラン柔道連盟から「辞退しなければ家族を消す」と圧力をかけられていたそうです。
イランは「イスラエル」という国家の存在を認めていないため、世界選手権で対戦するという事が「国家の存在を承認することになる」という事から、
国家としてのイデオロギー、プロパガンダをスポーツ選手であるモラエイ選手にも強要していたという事になります。
しかし、モラエイ選手は
「国家同士に敵意があっても、(スポーツを通して)闘う者同士は友達だ。」とイランの指示に従わなかったそう。実際にモラエイ選手はサギ・ムキ選手のことを「兄弟」と呼んでいるそう。
勝ち進むにつれて政府からの圧力は強まった。「親が住む家に公安組織が待機している」とも伝えられ、心が乱れた。準決勝で敗れ、3位決定戦も負けた。優勝したのは、イスラエルの選手だった。
出典元:「毎日新聞」2021年7月30日
幸いその大会ではイスラエル選手と対戦することはなく無事だったものの、大会終了後、ドイツに亡命、難民選手団として国際大会に復帰し、その後モンゴルからの誘いを受けて2019年末にモンゴル国籍を取得したのだそうです。
その為に、今回の五輪は「イラン出身モンゴル代表」という事になりました。そして、見事に銀メダルを獲得。
本来はイランへ持ち帰るはずだったはずのメダル。それをモンゴル代表として彼は勝ち取り、NHKの新聞によると
「このメダルはまず自分に、次に両親にささげたい」
出典元:NHK 2021年7月28日
と語ったとされていました。しかし、別の報道では
「これをイスラエル人へ捧げます。」
と語ったのだと、私は今日知ることになりました。
日本にとっては、つい最近急逝した古賀稔彦選手が1995年の世界選手権で金メダルを取って以来の20年ぶりの金メダルになり大きな話題でしたけれども、
モラエイ選手の姿も
柔道という日本のスポーツを通して生まれた
いま世界のあちこちで起こっている問題にも問題提起となるような
スポーツ選手としてできることを熟考した末の行動でした。
そして、そこまで勝ち上がったからこそできたこと。
サイード・モラエイ選手はまだ現在29歳の選手で、亡命した2019年には27歳でした。国境や思想を越えた結びつきへの叫び、自分が命がけで国家圧力と闘い、世界レベルの力を獲得したからこそ、世界へ届けることが出来たということ、
本当に、重い重い価値ある銀メダルだなあ、と感じました。
今年のオリンピックは様々な背景を抱えての開催でしたけれども、
サイード・モラエイ選手のような選手が
あるかどうかも分からない大会のために日々鍛錬を重ね、
後遺症が残るリスクがあるとされている
コロナウィルス感染の危険を
まだ未来の可能性がたくさんある若い選手であるのに
覚悟して日本へ来てくれて、決勝まで勝ち進み、
このようなメッセージを届けてくれたことに
日本人として、地球人として感謝したいと思います。
強く美しい精神で、
私たちの世界を照らし出してくださったことへ
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