持ち家と賃貸どっちがお得?に関して不動産会社で働く私なりの答え。
築50年のボロボロ木造戸建が3棟建っている古屋付き土地を買って自宅と貸家にした話を忘備録的につづっていきます。
@いえくにの築古戸建購入ブログ No5.
今日は持ち家と賃貸どっちがお得?というこすり尽くされた問いに対しての私が考える答えを書いていこうと思います。
(ちなみに私は現在、不動産会社のリノベーション部に勤めており、昨年築50年のボロボロ木造戸建が3棟建っている古屋付き土地を買って自宅と貸家にしたという経歴の男性です。30代半ば既婚、愛娘一人です。)
と、私の持論を述べる前にちょうど先日、ダイヤモンドオンラインに以下の記事が載っていたので転載させていただきます。
【「マイホームは資産」というウソ】普通のサラリーマンが家を買うべきじゃないシンプルな理由
4/17(日) ダイアモンドオンライン6:01配信
〈結論〉
・普通のサラリーマンなら「持ち家」より「賃貸」のほうがお得
・不動産の目利きができないと、結局資産にはなりえないから
・場所的にも経済的にも縛られ、フットワークが重くなってしまうから
・とはいえ、お金以外の価値を感じるならマイホーム購入もアリ
【「マイホームは資産」というウソ】普通のサラリーマンが家を買うべきじゃないシンプルな理由→https://news.yahoo.co.jp/articles/1853d2fb9585dca1f44ebde871f0e4e89ad9241f
これは、私もよく聞いている「サラリーマンYouTuber」、サラタメさんが書いた著書「シン・サラリーマン」に書かれている内容を抜粋して書かれたもののようです。
まず、大前提として私はこの意見に概ね賛成です。
前回の記事でも書いた通り、日本の住宅を買うと、支払った金額の大部分が手元に残らない純粋な支出となってしまいます。
もちろんこれには様々な意見があると思います。実際上記の記事にも「私の知人の家は購入後数年住んだ後で購入価格より高い金額で売れましたが?」といった内容のコメントもありました。
これに関しては私も物申したいことがありますので、次回以降の記事で書かせていただこうと思います。
さて、早速本題ですが「持ち家と賃貸どっちがお得?」という質問に対しての私の答えは、上記の記事で書いている通り
「不動産の目利きができないと、結局資産にはなりえないから、普通のサラリーマンなら「持ち家」より「賃貸」のほうがお得」
というものです。
まんまパクリかよ、と思った方もいるかもしれませんが、私がお伝えしたいのは「不動産の目利きができないと」←ここの部分です。
そう、目利きができないと資産価値にならないんです!反対に目利きができれば資産価値にすることができ、賃貸より持ち家のほうがお得、ということになり得るわけです。
ということで、補正すると
「不動産の目利きができないと、結局資産にはなりえないから、持ち家より賃貸のほうがお得。ですが、不動産の目利きができれば資産になり得るから持ち家のほうがお得」
ということになります。
では、実際に不動産の目利きができる、というのはどういうことなのか。
個人的にはこれには2つのポイントがあると思っていて
1.その不動産にかかる費用を正確に把握する
2.その不動産の資産価値を正確に予測する
上記の2点です。
なんとなくわかるかもしれませんが、以下で少し詳しく説明していきます。
1.その不動産にかかる費用を正確に把握する
これは、持ち家を持った場合、住宅ローンの支払い以外に支払う必要がある金額を把握するということです。
なぜこれを把握する必要があるかというと、これらの金額は基本的には資産としては残らない費用となるからです。
資産になるのであればその支払った金額が自分が払うことができる範囲内であれば、いくらか払ったかはさほど気にする必要はありませんが(いわば貯金と同じです)、費用となれば話は別です。
では、実際に住宅ローンの支払い以外に支払う必要がある金額には何があるのでしょうか?
例えば、税金。
住宅を所有すると、購入時に不動産取得税という税金が、さらには所有しているだけで固定資産税という税金が課されます。
私のケースだと、不動産取得税が30万円かかり、毎年の固定資産税が10万円程度かかっています。不動産取得税は一過性のものなので、きちんと把握していれば大したことはないのですが、この固定資産税というのは毎年、それも所有している間はずっと課税されます。
その他には、マンションであれば管理費、修繕積立金(戸建住宅の場合は自分で積み立てていく必要ががあります)、火災保険料やさらには住宅ローンの支払い金額の中の金利もそれにあたり、これらは支払ったものの、そのほとんどが資産としては残りません。
さらに突っ込んで考えると、実際には支払いが発生しませんが、災害があった際に家が破損する、消滅するといった災害リスクや将来売却するときの価格変動リスク、築年数に応じて減少する建物の資産価値も所有していることによる負担です。
つまり、持ち家の場合に必要な支払い金額は
●持ち家の場合
一定期間に支払う住宅ローンの支払い元金(純粋な住宅の購入代金)+金利+税金+火災保険+管理費、修繕積立金+(災害リスク+不動産価値下落リスク+使用年数における建物の価値の減少)
となり、対して賃貸物件の場合に必要な支払い金額は
●賃貸物件の場合
一定期間に支払う家賃+火災保険、更新料等の諸費用
のみとなります。
見て分かると思いますが、持ち家を持つためには住宅ローンの支払い以外にも多くの費用がかかってきます。
ちなみに私の場合(リノベーションした築50年の木造戸3棟を所有)純粋な住宅代以外にかかる年間の費用はざっくり37万円で、これ以外に災害リスク+不動産価値下落リスク+使用年数における建物の価値の減少(もともと価値0円の物件を購入したのでさほどではありませんが)も負担しています。
私の場合は自宅以外に2棟の建物を所有しているので少し特殊かもしれませんが、代わりに建物にかかる税金がとても安い為(築50年の木造戸建にはほとんど税金が課税されません。)総額でみると、新築の不動産を所有している人と大差ないかもしれません。
ちなみにこれって、月3万円を住宅購入元金の返済以外に支払っているってことなんです。これは決して安い金額ではないですよね。
これを購入前に把握することが、その不動産にかかる費用を正確に把握するということです。
今買おうとしてしているこの物件が本当にお得なのかを判断するための一つの指標となると思います。
では次に
2.その不動産の資産価値を正確に予測する
について説明します。
これは、その不動産が将来いくらで売れるのか、もしくはいくらで貸せるのかを予測する、ということです。
人生100年時代と言われて久しい昨今。30代で購入した家に死ぬまで住む可能性は低い、というのが私の考えです。
なぜかというと、長い人生の間で家族構成や職場など、自分を取り巻く環境が変わっていくから、さらにこれから先の世は変化のスピードが加速度的に早まっていくことが予測されるからです。
10年後も今と同じ環境で生きていると確信できる人は少ないと思います。
その際に、所有している持ち家をいくらで売ることができるか、もしくはいくらで貸すことができるかを事前に予測しておくことで、その不動産の資産価値をある程度把握することができます。
※SUUMOサイト内より抜粋
ちなみに、上記資料のように20年たつとマンションは新築時の半値となり、その後横ばいに。
戸建ては25年くらいで建物価格が0円になり土地の価格がだけが残るというのが、現在の通説です(現在、首都圏や一部の地方都市ではその限りではありませんが)。
これを基に、自身が購入した不動産が十年後、二十年後にいくらで売れるのかを予測してみましょう。
ちなみに言うまでもなく、資産価値の高い不動産というのは購入時から価値が下がりづらい不動産のことです。
一方、賃貸に出した場合の賃料というのは計算が難しいですが、これは同程度の広さ、仕様の建物で築年数が自身が購入した物件より十年、二十年古い物件がいくらで貸し出されているのかを見ることである程度予測できます。ただし、正確な金額はプロの不動産会社に依頼しないと査定ができませんのであくまで参考までに考えておいてください。
上記2つの方法でその不動産が将来いくらのお金を生むことができるのかを把握することで、その不動産の資産価値を予測することができるはずです。
そうすることで初めて、その不動産がどのくらいにお得なのかを知ることができるはずです。
以上の情報を加味すると
一定期間に支払う住宅ローンの支払い元金(純粋な住宅の購入代金)+金利+税金+火災保険+管理費、修繕積立金+(災害リスク+不動産価値下落リスク+使用年数における建物の価値の減少)-売却益もしくは賃料収入
というのが、その不動産(≒持ち家)を所有するために必要な純粋な費用の計算式となります。
そして、初めの問いに戻ります。
「持ち家と賃貸どっちがお得?」
それに対する私の答えは
一定期間に支払う住宅ローンの支払い元金(純粋な住宅の購入代金)+金利+税金+火災保険+管理費、修繕積立金+(災害リスク+不動産価値下落リスク+使用年数における建物の価値の減少)-売却益もしくは賃料収入
が、賃貸で現在支払っている賃料より安いのであれば持ち家のほうがお得、そうでなければ賃貸のほうがお得。
です。
いかがでしょうか。
これはあくまで私の考えですが、ここまで考えて持ち家を購入すれば、ある程度不動産の目利きができているといえるのではないでしょうか。
さて、長くなりましたが、最後にまとめをしておきます。
「持ち家と賃貸どっちがお得?」に対しての答えは
「不動産の目利きができないと、結局資産にはなりえないから、持ち家より賃貸のほうがお得。ですが、不動産の目利きができれば資産になり得るから持ち家のほうがお得」
で、その目利きの為には
1.その不動産にかかる費用を正確に把握する
2.その不動産の資産価値を正確に予測する
の二つが必要で、それを把握、予測した上で
一定期間に支払う住宅ローンの支払い元金(純粋な住宅の購入代金)+金利+税金+火災保険+管理費、修繕積立金+(災害リスク+不動産価値下落リスク+使用年数における建物の価値の減少)-売却益もしくは賃料収入
が、
賃貸で現在支払っている賃料より安いのであれば持ち家のほうがお得、そうでなければ賃貸のほうがお得。
というものです。
答え長いですね笑。
以上、「持ち家と賃貸どっちがお得?」に対しての私の答えでした。
次回は、冒頭でもちらっと触れた「不動産の価値は本当に築年数に応じて下がるのか」ということに関して私の意見をお伝えしたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事が誰かの持ち家購入時の参考になれば幸いです。
ではまた。