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最高のフィナーレ 〜高円宮杯 JFA U-18 サッカー プレミアリーグ2023プレーオフ観戦記〜

ご存知のとおり、日曜日に行われた高円宮杯 JFA U-18 サッカー プレミアリーグ2023プレーオフにおいて、我らがファジアーノ岡山U-18は京都サンガF.C.U-18を1-0で撃破し、見事に来期からのプレミアリーグ昇格を掴み取りました。

試合の速報的なレポートはFrom OKAYAMA( @fromokym )のアカウントで書きましたが、ここではそれなりにファジユースを追いかけていた(と勝手に自負している)自分の、湿度高めのレポートを書き記したいと思います。


・組み合わせ抽選

プリンスリーグ中国最終節玉野光南高校戦を勝利で飾り、初優勝を遂げたファジアーノ岡山U-18。昇格をかけたプレーオフの組み合わせ抽選は12月4日に行われた。

1回戦の相手はコンサドーレ札幌U-18に、そして昇格が決まる2回戦の相手は京都サンガF.C.U-18と日章学園高校の対戦の勝者となった。

組み合わせ発表時点において、少なくとも僕はチャレンジャーとしてどれだけやれるか楽しみな気持ちより、強豪揃いのブロックでどうやったら勝ちを拾えるのだろうかと半ば運を天に任せるような心境だった。

初戦の相手である札幌U-18は2011年のプレミアリーグEASTの覇者である。コンスタントにトップチームに選手を送り込み、チーム強化のサイクルにユースで育成された選手が軸になっているという、育成型クラブのお手本のようなチームである。

ファジアーノ岡山との縁も深く、これまでに松原修平選手(2011〜2016年在籍)、山下泰明選手(2016年在籍)、井川空選手(2023年現在在籍中)がこのチームで育っている。

そして、2回戦の相手もどちらも強豪となった。

まずは日章学園高等学校にはU-17ワールドカップで活躍し世界に名を轟かせた高岡伶颯選手が在籍している。彼を中心とした攻撃力は驚異的で、プリンスリーグ九州で今期合計57ゴールを挙げた破壊力を有している。

そして京都サンガF.C.U-18は今年のファジユースにとって因縁の相手と言える。今年夏に行われたクラブユース選手権において、ファジアーノ岡山U-18はベスト4進出の快挙を遂げたものの、グループリーグ2戦目において京都U-18に1-3で敗れている。

この大会に出る以上強豪揃いであるのは当然のことであるが、その中でも特に骨のあるチームだらけの組み合わせになったように感じた。

・念を送った1回戦札幌戦

本当ならば1回戦も現地観戦したいところであるが、この日に限って状況的に自分が仕事を休めない状況になってしまった。普段なら気軽に有給が取れる職場だけに、「なんでこういうときに限って…」と愚痴りたい気持ちを胸に仕舞い、現地に念を送りつつデスクワークの合間1分毎にタイムラインを更新しながら現地からの吉報を祈り続けていた。

タイムラインで追いかけた札幌戦は3-1の快勝だった。前半に相手のゴールで先制点を与えたものの、岡山の南稜大が2ゴールで逆転に成功。後半ATに石井秀幸の追加点で見事に締めた試合だった。(あくまでもタイムライン観戦)

勝利の瞬間、土曜日に宿泊するホテルを確保し、12月10日に向けて準備を整えた。

・決戦は日曜日

前日の夕方に広島入りし、駅前のWINSで気がつけば財布の中身が減っていたというアクシデント以外は順調に決戦の地にて過ごした。

朝10時頃にエディオンスタジアムに到着。

スタジアム。ここに来るのは2度目。サッカーで来たのは実は初めて。
トーナメント表。1回戦の結果が記載されています。

スタジアム内に入ると、そこはまるでファジアーノ岡山のホームのような光景だった。バックスタンドには2枚のビッグフラッグと数多くの横断幕。隣県とはいえ、これだけの旗や幕を運ぶのはかなりの大仕事だったであろう。頭の下がる思いである。

準備完了した横断幕たち。改めて見てもすっげぇなこれ

・激闘の果てに

試合開始。試合は立ち上がりから京都ペースで進む。ファジユースはリーグ戦で見せたインテンシティの高さで攻撃のチャンスを狙う時間が続く。転機が訪れたのは前半15分。右サイドで得たスローインの流れからミキヴィトルと村木輝が繋ぎ、朝露で湿ったピッチを生かしたグラウンダーのクロスをペナルティエリアに送る。

ゴール前に飛び込んだ南稜大はこれをまたいでスルー、その外に控えた楢﨑光成が足元で受け、細かいステップでキーパーを交わし、ゴールへ流し込み先制点を挙げた。

早い段階での先制点をあげたものの、その後はひたすら京都の攻撃を耐える時間が続く。

クラ選で脅威となった、高さを生かしたセットプレーで岡山のゴールをこじ開けんとする京都だったが、岡山の守備陣は慌てることなく着実に相手の攻撃を抑えていた。

正直なところを言えば、自分は後半途中くらいまでは不安な思いでいっぱいだった。

いまの3年生になる世代にとってはこれが最後の公式戦となる。だからこそ、なんとか勝利で終えてくれないものか、という少し後ろ向きな感情を抱いていたのが正直なところであった。

もちろん、この試合に勝って今まで見たことがない景色を見たいという思いはあった。

だが、「圧倒的な戦力差をなんとか乗り越え一矢報いて勝ちを拾ってほしい」といういわば「悲壮な覚悟」に近いものであった。

しかし、この試合でピッチ上の選手たちにに共有されていたのは「悲壮な覚悟」といったものではなく「強者としてのプライド」であったように見えた。

彼らはイギョラカップやプリンスリーグやクラブユース選手権で手にした揺るぎなき自信を胸にこの試合を戦い抜いた。

ファジユースの選手たちは、相手に臆することなく、ただ「この試合に勝利する」ことだけを目的としてピッチで走り続けていた。

相手のセットプレーを抑えるたびにピッチ内やベンチの控え組から聞こえる雄叫びは、この試合を勝ち切ろうとする執念すら感じた。

後半AT、左サイドに流れたボールをこの試合途中投入された磯本蒼羽が全力で追いかける。

ぼくは思わず「鹿島れ!」と叫んだ。

戦術的なセオリーで考えるならこの局面でのプレーの第一選択肢は「キープして時間を消費する」ことだと言う点は疑いない。

これがリーグ戦の数多い試合の中の一つであったならば間違いなくそれが最善策となることはここで主張しておきたい。

だが、2年生のサイドアタッカーである彼が選んだプレーは「ゴールに向けてサイドを押し上げて突破する」ことであった。

結果的にシュートまで持ち込むことは出来なかったものの、この試合に賭ける彼らの執念に近い想いを感じさせられた。

「そうか、自分は無意識のうちに彼らの前に『壁』を設定していたのかもしれないな」と気付かされた。

悲観的思考に「現実主義」というラベルを貼って自分自身を誤魔化しがちな自分の価値観を砕いてくれた。

「半信半疑=傷付かないための予防線」という歌詞の曲があるが、殻を破るためには自分たちがこれまで積み上げてきた実績と実力をどれだけ信じられるかが必要であることを実感した。

後半のATも3分が過ぎ、試合終了を告げる笛の音がスタジアムに響いた。

終了直後、京都の選手はみなピッチに倒れ込んだ。彼らもまた、この試合を勝ちたいという想いを抱いていたことを感じさせられた。
この画像、当面の間保存しておきたい。

「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。」

かつて、とあるプロ野球監督がこう述べたそうだ。

負けるときは相応の理由があり負けるべくして負けるものであるが、勝った場合は当人も思い寄らない勝ち方があるという意味である。

この試合のスタッツを見れば、シュート数3-22と圧倒的に京都ペースの試合であった。

しかし、ピッチにいた若きファジ戦士達は、「プレミアリーグ復帰を目指すプリンスリーグ関西王者」に対して臆することもなく90分闘っていた。

守勢に回る時間が非常に多い試合であったが、いわゆる「引いて守る」戦いではなく、前線でチェイスし、サイドのライン際で何度も上下に走り、中盤で激しく身体をぶつけ、最終ラインで水を溢さない守備を続けた賜物であった。

間違いなくこの試合は「勝つべくして勝った、必然の勝利である」と、現地に居合わせたものとして述べておきたい。

試合終了後、スタジアム外でサポーター仲間や保護者の方々としばらく勝利の余韻に浸り、帰路へ。

時間まで微妙に時間があったのでお好み焼きをササッと食べて新幹線に乗車した。

「広島焼き」と呼んではいけない食べ物

・そしてクラブのDNAの礎となる

基本的に「勝っても負けても楽しんで帰る」ことをモットーとしている自分であるが、プレーオフのような「どうしてもこの試合に勝ちたい」と願うときに聞くプレイリストがある。

ウカスカジーの「勝利の笑みを 君と」のようないわゆるフットボールアンセム的な曲や、ファジのチャントの原曲、スタジアム内BGMや煽りVTRやスタメン紹介などで使われていたことのある曲、その他自分が好きで聞いたら無条件でテンションが上がる曲などを集めたプレイリストである。

大阪までかなり時間があることもあり、それをBGMに現地組の感想や念組の歓喜の声を眺めるため、Xのタイムラインを追っていた。

そんなとき、こんな歌詞が耳に飛び込んできた。

茜空に舞う花びらの中
夢だけを信じて駆け抜けろ
瞳とは未来そのものだから
輝かせて

レミオロメン『茜空』

もともとこの曲は2007年上期にJRAのブランド広告のCMソングとして使われた曲である。

「なかなか勝てないが、いつもひたむきに走るとある競走馬」とその馬に声援を送るファンを描いたCMである。

オンエアされていた当時は自分が今でも大好きな「なかなか勝てなかった馬」(某ソシャゲで美少女化されて、今年主人公としてアニメ化されたけどそれはまた別のお話ということで)と重ねて見ていた。

ファジアーノ岡山というクラブ自体はビッグクラブでもなく、常勝軍団というわけでもない。

だけど、「最後までひたむきに走るクラブ」であることは疑いがない。

広島で見た試合を通じ、この「最後までひたむきに走る」という部分はクラブのDNAの一部として強く刻まれていることを実感した。

ユースの1・2年生は来年、高校生年代の最高峰の舞台でプレーすることになる。

もちろん、そこには楽な戦いは一つも存在しないだろう。

だが、この大会を通じて得た経験は必ず自信となって彼らの力になるだろう。

また、3年生はこの試合がファジユースでの最後の試合となる。

残念ながら今年はトップチームに昇格する選手は現れなかった。

だが、進学先(+もしかしたらどこかのクラブに入る子もいるのかな?)で経験を積み、いつの日かファジアーノ岡山のエンブレムを再び背負う日が来てほしいと願うばかりである。

チームの昇格に歓喜する彼らの目には、きっと輝かしい未来が映っていたに違いない。

みんな、本当におめでとう!!

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