「つぎまた来る日も徒らに」制作後記

 こんにちは!いえふです。

 日々思い連ねていることは、いつのまにか失われていくから、制作した作品のエトセトラは文字で残しておいた方がよいと思いながら、作品のブランクを空け続けて前作(瘴気元年Ω)から早6年となろうとしています。やば。
 というわけで、今回こそはとせっせとここに入力しているのですが、今回は「のんびりリハビリする」というのがメインだったので、以前の作品ほどには計画的に取り組んだわけではないので、このメドレーが記録する最初にふさわしいのかはわかりません。しかしながら、のんびりと作っていたわりには苦しみながら制作したことは、人に分かち合わせたいと思いました。ほぼ自分用の制作後記はありますが、メドレー本編と併せて、楽しんでもらえたら幸いです。


制作期間

 2019年ぐらいから2021年ぐらいまで、結構いろんな苦しみがあり、メドレーを作るのがしんどかったので、作っていませんでした(正確には作っていたのですが、没か宙ぶらりん状態になっています。没になったものは今度アップロードしようと思ってます)。
 そういうこともあって比較的元気になった2021年末に、ゆったりとした『14平米にスーベニア』を起点としてゆったりとしたメドレーをリハビリがてら作りたいと思い、作り始めました。
 そこから2~3カ月に一回触るかどうかで製作自体にはほとんど進捗を生み出さず、結局2023年、しかもその下半期にほとんどの部分を作成しました。途中途中に2023年の曲を挟めているのが良い証拠ですね。
 しかしながら、それまでは作っては没になっていたメドレーが、2021年にぼんやり思い浮かんでいた案から膨らんで、10分越えのメドレーになったのはもはや意外というか、再び空中分解してしまうかもしれない峠を越えてよく顕現できたな、という念を抱きます。
 ちなみに、自分が今は大丈夫か、というと、そういうわけでもないですが、これを機に良い方向に転んでいくといいなと思っています。


総評

 まず、メドレーってこんなに作るのしんどかったっけ?というのが一番最初に来ました。
 暫くメドレー制作をしていなかった期間、作曲はある程度やっていたのですが、それに比べるとメドレーは次に展開できる自由度が楽曲に制限されてしまっているということに気づきました(念のため、メドレーのダメなところとは思っていないです)。そのため、次に進むための楽曲が見つかるまでもがき探さないといけないという点で、繋ぎに魘され続けました。また、局所的にはともかく、全体としてはアレンジもある程度楽曲のオリジナリティを担保したアレンジをほどこさなければならないということと、自然な展開を目指すには全体を通してアレンジが均されてしまうということから、やはり自由度に制限を受けて苦しんだ気がします。
 メドレーというのは既存楽曲の力学を活かす必要があるため、楽曲のパワーを的確に評価し、どのように用いるかを決定するうえで、楽曲に真摯に向き合い続けないといけないと思った点ではありました。そんなこと言っておきながら耳コピミスは結構残っている気がしていますが……。
 ただ、苦しんだ分だけ、比較的自然に繋ぎやアレンジができたかな?とも思います。
 選曲に関しては、ジブンテキを作ったときの精神性と同じく、「なるべくオタク文化に寄り添いつつ、そこまで王道すぎず」の感じで行ってい……たようないなかったような、まあ最終的にはこういう気持ちも解放して、繋ぎ重視にした気がします。

各パート評

 何個かのパートにわけて、各パートごとに工夫したポイントなどを書き記します。

14平米にスーベニア〜14平米にスーベニア

 完全に『14平米にスーベニア』に乗っ取られたパートです。動画の方に演出を入れようとして忘れていましたが、『かくしん的☆めたまるふぉ~ぜっ!』の裏にも『14平米にスーベニア』のイントロが隠れています。このメドレーで一番音数が多いパートになっていて、ギターとベースがかなり動いているので、聴き応えは結構あるパートかなと思います。同時に、ミックスに悩まされたパートのひとつです。
 『14平米にスーベニア』の「カシャ」の音を、カメラのシャッター音ではなく、銃の装填の音にしている(激オモロポイント)のですが、「"猫"が大きくあくびした」と併せて、『もぐもぐYUMMY!』の歌唱者「"猫"又おかゆ」さんと「"銃撃戦"の真ん中で もぐもぐ」に実は意味的にも繋げられています。
 『かくしん的☆めたまるふぉ~ぜっ!』と『ひたむきマイノート』の繋ぎは、かなり一致度が高かったので、どう展開してもよかったのですが、比較して知名度の高い『かくしん的☆めたまるふぉ~ぜっ!』を先に持ってきて、自然に繋がれたことを強調できる順番に仕上げられたのは、良い選択だったなと思いました。

うろちょろ~独りんぼエンヴィー

 さっきのパートで一旦区切りがついたような展開になったので、このパートは結構展開が付いたパートになっていて、アレンジやBPMが変化します。このあたりから始まるロックなアレンジは、最後まで音作りとミックスに悩まされます……。
 チップチューンなアレンジは今までもいろんな場所で使ってきましたが、今回は中途な部分で使いました。個人的に、AメロBメロサビを超えた後の構成を作るのが、メドレー内における確立された楽式がないため難しいと感じているのですが、今回はチップチューンな『うろちょろ』を挟むことで、展開にメリハリが出せたかなとも思います。
 『うろちょろ』から『勘冴えて悔しいわ』までは、メロディがド-シ-〇…と下降する始まり方をする曲同士を繋げることで、なんとなく一体感が出るようにしています。
 『独りんぼエンヴィー』のあと、『ただ君に晴れ』→『グロウアップレース』という流れにする予定もありましたが、繋ぎ的に使いたかった『天翔ける虹』や『リコリス・リコイルのテーマ』などが使えなかったので、実際には取りやめました。

ラグトレイン~人マニア

 『独りんぼエンヴィー』からのロー気味な雰囲気をこのまま続けたいと思ったので、ラグトレインでそのまま続けることにしました。ずとまよ含めボカロ界隈の曲のナイーブさみたいなのがメドレー内でも出せてよかったと思っています。ただし、ロックアレンジには引き続き悩まされました。この辺はちょっとギターを抑え過ぎたかもしれません。
 『Got The Groove』×『強風オールバック』を、焦らさせて次の展開を俟つようなアレンジにして、『人マニア』で爆発させました。そして、この展開が十分な長さになったと判断して、バラードゾーンに行くためにピアノで抑える感じでアレンジしました。

私は最強~鍵穴ラボ

 バラードゾーンです。基本的に過去作では16小節行くか行かないかぐらいで打ちとどめる傾向があったので、自主的にここまで長いバラードゾーンを作るのは初めてになります(長いバラードゾーン自体はちょっとだけニコらせてもらってます。でやらせてもらってます)。
 全体的に転調が多いパートです。まず『人マニア』の「すまんね」とメロディが一致している曲を探索すると、『私は最強』の「さあ」が合っていましたが、同主調にずれていたので、そのまま同主調に行くことになりました。次に、ドビュッシーの曲を何か入れたいなと思っていた(特にアニメ『スーパーカブ』関連から『アラベスク 第1番』を想起していました)のですが、『私は最強』の「最強」が、キー変更後の『私は最強』と、そのキーとキーずれした『月の光』と一致していることに気づいたので、『私は最強』のコードを転調先のⅦdim→Ⅳ→Ⅴと進行することで、比較的自然に転調して移行することができました。
 この後もまだまだ転調して、『メインテーマ』で何度も転調します。ここらへんは、ほぼそのまま『メインテーマ』原曲の力を借りて展開したかったので、原キーのまま使いたいと思いました。繋げた箇所が偶然キーの変更した『月の光』の近親調になっていたので、キーが違いましたが自然に移行することができました。
 ただ、バラードゾーンだから仕方ないとはいえ、全体的に楽曲の使用時間が長くなってしまったのは反省です。特に『メインテーマ』が長くなってしまったので、もっと曲をうまく見つける必要があったと思いました。
 ちなみに、『鍵穴ラボ』がこのメドレーで最後に打ち込んだ曲です。『メインテーマ』からの曲に悩みまくりましたので、最後まで保留していました。思ったより変な拍子でびっくりするなどしました。

錠剤~春風とペトリコール

 この辺からのアレンジは結構最近(?)の自分のアレンジっぽく、ピアノと矩形波音源でテンションノートを塗り固めたようなアレンジになっています。自分らしくアレンジができたように思います。
 バラードゾーン設計段階では、この後の『天翔ける虹』以降の展開をなるべく原キー(正確に言えばD maj / B min key)のまま使いたいという思いがあったので、「このままEb maj / C min keyで進んでまたガツガツ転調する必要があるか……?」と悩んでいた(例えば、『春風とペトリコール』の後に『エクラン・ルブラン』などを挟んで転調する)のですが、『錠剤』の「アアアア」部分で無理くりキー変更できるなと気づいたので、要らぬ心配となりました。
 『ビビビビ』の「コピーの……」は、重ねで使うことによって重ねられている他の曲の部分もコピーされて、聴感上でも面白く響くように工夫できたと思います。

天翔ける虹~コネクト

 このメドレーで一番動的なパートです。構成案自体を作っておいて、だいたいこのあたりに埋め込みたいと考えていたパートです。
 前半は『天翔ける虹』Aメロのド-ソ-ド-レ-……と共通したメロディ(『グロウアップレース』や『戦闘!チャンピオン』)と、Bメロのラ-シ-ド-レ-……と共通するモチーフの曲(『リコリス・リコイルのテーマ』や『ただ君に晴れ』)を中心に組み上げています。個人的に、基本的にモチーフが似ている(例えば旋法が異なるだけ、など)ならメロディが違っても繋ぎにも違和感なく繋げられそうという考え方があります。
 途中で転調をする曲も自分で転調した部分も含めて、転調が多くなっています。ここでは、『祝福』の原曲のAb maj / F min keyの勢いを借りて展開したかったので、このキーに向かうために次々と転調を行っています。結果的に贅沢に盛り上がるパートになったかと思います。なんとなく『グロウアップレース』の耳コピが大変だった記憶があります。

星座になれたら~星座になれたら

 前のパートで盛り上げ終わったので、ここから終わりに向かっていくような構成にしようと考えました。基本的にはバックを『星座になれたら』のようなアレンジにし、繋ぎ重視にして展開しました。『廻廻奇譚』の「まだ"止めないで" まだ"止めないで"」の部分と『星座になれたら』の「"いいな" "君は"」が完全一致ではないですがなんとなく部分的に一致していて、気づきにくいですが若干お気に入りの繋ぎ(?)です。
 この周辺は、『15の夜』と『廻廻奇譚』で「夜の帳」で繋がっていますし、『ヒーロー』は「ギターヒーロー」を連想できますし、あと後藤ひとりは(アニメでは)15歳だしで、音楽的な繋ぎ以外にも結構いろんな結び目を見つけることができました。
 このパートは、本当はもっと長くする予定でした。「『ヒーロー』→『ビタミンSUMMER!』→『手紙 ~拝啓 十五の君へ』→『星座になれたら』のソロ→『星座になれたら(ライブver)』のソロ→『星座になれたら』のサビ」のようにするつもりでしたが、ちょっと冗長かと思ってやめました。
 『コネクト』からキーを揃えていたら自然に展開できるかと思っていましたが、BPMの変更のせいで存外自然に繋がりませんでした。BPM変更は慎重に行う必要性に気づきました。

百葉箱~光の中へ

 『星座になれたら』から最終盤に向かおうと思って、転調して雰囲気変えようと考えました。Ab maj / F min keyから転調できる曲に、百葉箱が思い付き採用しました。めちゃくちゃドタイプな曲なのですが、複雑な曲だったので耳コピにとっても苦労しました(ステムの配布に助けられました)が、原曲をうまいこと落とし込めているかには自信がありません。
 そして、『ドレミファロンド』の最後あたりから『転がる岩、君に朝が降る』にかけて、降り積もるようにしっとりとしたロックアレンジにして、そのままラッシュゾーンに行き、しっとりとしたまま終わるという運び方にしました。ラッシュゾーンは、このメドレーでそれまでに使った曲と、アーティストや作品で関係のある楽曲で構成しました。
 『転がる岩、君に朝が降る』が、結果的にこのメドレー制作のマインドのコアとなる曲になりました。今回は自分のメドレーを作って何になるだろうな~とか、いっぱい良い作品がある中で自分が作って意味あるだろうか~とか、いっぱい悩んでいましたが、歌詞のやるせなさと、その受け皿になったぼっち・ざ・ろっくという日常作品の綿々と続く何気なさに、自分も何かは作って、何かを変えられたら良いよなと元気づけられた気がしました。ぼっち・ざ・ろっく、ありがとうがそのままメドレー終盤の構成になっている気がします。

反省点

 反省点を書きます。

v.s.ラウドネス・ノーマライゼーション

 自分の作品に足りないものを考えるときに真っ先に思いつくのは、音圧感のなさです。昔から合作とか聞いていて、自分のパートだけ音圧感が足りない感じがあって、これは自分のアレンジのどこかが悪いのですが、なぜかわからないままラウドネス・ノーマライゼーションの時代を迎えてしまいました。今回メドレーを作るとき、よく進捗ぶんのメドレーの音源を書き出していたのですが、LUFS値を測定して他の楽曲と比較するたび、「自分の音源の方が小さい……」と落ち込んでいました。
 次回以降は、もっと音圧感を出せるようにしたいです。

構成

 基本メドレーを作るとき、比較的小規模の構成案を何個かを評価してふさわしいと感じた場所におおまかに配置して、それらがつながるようにメドレーを設計するという手法を取っているのです(ジブンテキとか駆け合作のいえふパートがその手法で作成しています)が、今回はほとんど前から順番に構成していきました。こうしたのはそういう意志があったわけではなく、今回のキーワードのひとつである「リハビリ」のためにメドレーを作る感覚を取り戻すためだったので、手探りで作ったからでした。なので、今回はそれほどパワフルな構成に仕上げられなかったように思います。
 別の作品で、もっと盛り上げられるようなメドレーを作れたらと思います。

ファイル構成


今回、プロジェクトファイルを6つに分けていて、

  1. 14平米にスーベニア~人マニア

  2. 私は最強~鍵穴ラボ

  3. 錠剤~コネクト+星座になれたら以降のwavファイル

  4. 星座になれたら以降

  5. 錠剤~コネクト+星座になれたら以降のwavファイルの「コピーの……」部分のカット編集用

  6. マスタリング用

のようになっています。これは、今回のメドレーは、雑に勘定した結果、計223トラック使っているので、途中で読み込み負荷の問題がありそうと判断して分けていました。3.がちょっと特殊なのですが、これは『コネクト』のBPMが連続した変化をしているのと、BPMが変化するタイミングと楽器隊がガラリと切り替わるタイミングが同じになっているため、音源を結合するときに他のプロジェクトファイルで管理するのが難しかったからです。これが厄介で、耳コピミスを発見したときに、ファイルの書き出しをするときに最悪の経路が4→3→5→6と4回書き出しする羽目になって大変でした。特に、3はオーケストラ音源を使用しているため、リアルタイムプロセッシングという実際に再生する時間分を使って書き出す方式でないと不具合が生じたので、書き出しに時間がかかり、とっても面倒でした。
 次からは、これもまた面倒ですが、ミックスダウンファイルの統合用プロジェクトを設けてそこでBPMも管理することと、そもそもBPM変更を減らしてまとまりのある構成にすることを心がけたいと思います。

おわりに

 久しぶりに作り終えた感じを体験しています。こういう余韻と、投稿前の緊張感とがあって、体を震わせながらTwitter(新X)を見ていた記憶がよみがえります。
 改めて振り返ると、メドレーってかなり体力と時間を費やして制作していたのだなというふうに感じました。ジブンテキとコケラオトシを1年で作れていたのは若さゆえだったのかもしれません。
 もしかしたらもっと作り込めた部分もあったのかなとか考えたりしていますが、どうでしょうか。上では、次回作だとか言っていますが、どうなんでしょうか。作れるでしょうか。こうやって制作後記を書いてますが、どれだけの人のためになるでしょうか。
 現在、まだまだ結構苦しんでいる時期なので、これからのことはどうなるかわからないですが、それでもいろんな案もあったりして、それらも何か形にしていけたらいいなとも思っています。

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