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今日の仕事は、楽しみですか
10月4日から、品川駅に掲載され物議を醸した「今日の仕事は、楽しみですか」という言葉。
すでにこちらは掲載が終了していますが、この言葉が炎上騒ぎになることに問題が隠れているように感じます。
働き方という課題には強く興味をひかれる私ですので、私が考えたことをまとめていきたいと思います。就活を控えた学生さんにもぜひお伝えしたい気持ちです。
仕事の在り方に課題
仕事が楽しみではない、楽しみなわけがないという感情を持っている方が
「今日の仕事は、楽しみですか」
と問われたら、それは文句のひとつも言いたくなるものです。いや、文句のひとつどころかその場で泣き崩れたりしてもおかしくはありません。
その一言で張りつめていた糸がプツンと切れてしまうかもしれない。そんな言葉にも映ります。特に、「楽しみですか」という飾らないがゆえに捉え方が人により異なる言葉がなんとも憎らしいところです。
少しでも仕事に苦痛を抱いていれば、追い詰めるような言葉に感じられるでしょう。仕事を楽しめていれば、いっそう仕事に向き合う活力を生むでしょう。
広告主が意図したのはどちらかといえば後者で、能動的に楽しんで仕事をすることが理想の形であり、そういう事業をしますという宣伝だったわけです。以下は、件の言葉に込められたメッセージについての説明を引用したものです。
これからのイノベーションや新規事業は、経済的価値への貢献だけでは足りません。本来ビジネスは人が創るもの。働く人たちの心がやる気に満ち溢れていなければ、どんなに優れた事業であっても、サステナブルに機能しないのではないでしょうか。
AlphaDrive/NewsPicksは企業変革を通じて、ビジネスの「楽しみ」もデザインしていきます。
引用元;ユーザベースHPより(https://www.uzabase.com/jp/news/alphadrive-newspicks-rebranding/)
そう思うと、今日の仕事を楽しみなものにしたいという気持ちは納得できる部分があります。
Twitterを見ていると、
仕事は楽しみなものではなく生きるために仕方なくやっていることだ
という趣旨の意見も目にしました。
まさに、仕事に縛り付けられているような感覚です。やめたくてもやめられないと感じている人は少なくないのでしょう。
就職において大事なこと
私は、就職する際に大切にされるべきことは企業理念に共感できるかという点だと考えています。
企業理念は、その企業の存在意義です。これを果たすために企業は人を集め活動しています。アウトプットされてくる製品が同じだったとしても、企業理念が違えばそれをどのように産み出したかはもちろん違いますし、今後どのように新たな製品を展開していくかも異なります。
例えるならば、大学のサークルのようなものでしょうか。同じスポーツ、同じ活動をしているように見えるものがいくつかあったことを記憶しています。部活があり、サークルもあるものもありました。
こうして増えていってのは活動理念の違いによるものでしょう。例えば陸上のサークルとでもしましょうか。
数ある陸上のサークルの中には、大会に出て成績を納めることが一番だという理念で集まったサークルや、はたまた、健康のために体を動かそうという理念の下に集まったサークルもあることでしょう。
すると、この二つは陸上をやっているように見えてもその必然性が異なります。健康のために体を動かそうという理念でのサークルはなにも陸上でなくてもよかったわけですから。ですから、例えばサークルの代表が変わったときに、陸上ではなく、サッカーをしようと言い出すかもしれません。しかし根本では運動をすることが目的ですから、それを理解して参加している人からはあまり反発は起こらないでしょう。(もちろん、サッカーだけはやりたくないといった考えでの反発などはあり得ると思います。)
当然企業でも同じことが起こり得ます。
例えば冷凍食品を製造している企業だとしましょう。企業①、企業②はそれぞれ以下のような理念の下、冷凍食品を製造しています。
①お店の味を家庭に届けたい
②家庭の料理の手間を減らしたい
この例では①は冷凍食品でなくとも、宅配という手でも理念を果たせそうです。また、②では家事代行サービスでも家事の手間を減らせるでしょう。
このように同じ業界に属する企業であっても、理念が違えばその後の展開などは大きく異なる可能性があります。
だからこそ、企業の理念に共感できるかという視点は、働く上で非常に大事なものであると、私は考えているのです。
就活・採用の問題
日本は、新卒一括採用という文化が根付いています。それ故に、学業を納めたら、続いて仕事に就くものだという"常識"が深く浸透しています。
これが今回の広告への批判にも繋がるほど重要な問題だと感じています。
新卒一括採用では、就活の期間がある程度限られています。始まりについてはもはや定められていないとも言えますが、少なくとも終わりは決まっています。
そして、この期間は学業に打ち込むべき期間と被っているのです。
期限が定められているなか、国内に数百万ある企業から自分が共感できる理念を掲げる企業を探し当てるのはかなり難しいことだと思います。それも、学業を疎かにすることなく。
そして、そのような企業を見つけきれなければ当然妥協することになります。周りが皆、就職先を決めていく中では焦りもあるでしょう。就活の苦痛に耐えかねて、どこでもいいから就職を決めて安心したいという気持ちも沸いてくるでしょう。
最終的に決めたのは自分だといっても、成り行きで決まったような、なし崩しで決まったような会社で働いて、どれ程の人が楽しめるのかと、私は疑問に思います。
なし崩しになってしまうのも、皆が足並み揃えて就職する、新卒一括採用による弊害なのではないでしょうか。
この流れから逸脱すると、就職しにくくなるといったプレッシャーにも繋がってしまいます。いっそう、思い入れのない会社に入社してしまうだけでしょう。そして、転職は簡単ではない、給料が下がるかもしれないなどとの意識もあり、結局は嫌々ながらも、そこで働き続けるしかなくなってしまうのだろうと想像します。
まとめ
本来、企業理念に共感できる会社に入社できてこそ、仕事を楽しめるスタートラインに立てるのだと思います。
(もちろん理念に共感できても、中の同僚と馬が合わないこともあると思います。企業理念に共感していなくとも目の前のことを楽しめるという方もいると思います。)
しかし、新卒一括採用の形態は、就活生たちをいたずらに不安にさせ追い込むものになってしまっているように思えてなりません。
追い込まれた結果、楽しい仕事を選り好みしている余裕はなくなり、なんでもいいから給料がもらえるところを目指さざるを得なくなってしまっているのではないでしょうか。
私は、どうにか、一人でも多くの方が、仕事を苦痛に感じないような世の中になってほしいと思います。
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