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【放送後記】#03 『1分で話せ』に学ぶ、アントレプレナーシップ学部の思想【ゲスト:伊藤羊一先生(アントレプレナーシップ学部長)】


『1分で話せ』の著者はおしゃべり

2023/06/19に収録した伊藤羊一先生ゲスト回が公開となりました!
今回は伊藤先生の著書『1分で話せ』を種本として、伊藤先生の核をなす考え方を伺いました。また、後半ではまだできたばかりのアントレプレナーシップ学部についても詳しくお話しいただいています、受験を考えている方は必見かも…?
『1分で話せ』の動画なのに35分になっちゃいました…ぜひご覧あれ…!

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イドバタコウギでは、いつもパーソナリティでない学生スタッフは撮影側に回っています。今回は、動画に入りきらなかったQ&A~撮影側に回っていた中の人セレクション~をお楽しみください♪

経済学部とアントレプレナーシップ学部の違いは?(by大石)

先生:
 経済学部は経済の仕組みをしっかり外から分析しますよね。そういった、どういう経済政策を打っていったらいいんだろうみたいなところは、ある意味俯瞰的に見る経済学部の方がたぶん圧倒的に優れたものだと思います。俯瞰的に見るから、学として成り立ちやすいんですよね。
 ところが、アントレプレナーシップはあくまで個人なんですよね。個人が志や倫理観、志ってどういうことよ? みたいなところから始まって、自分なりの志を持って、そして失敗を恐れずにぐいぐいって踏み出してみるときの一歩ってのはどうやって踏み出せるんだろうとか、じゃあ新たな価値っていうのは何なんだろうみたいなことを考えて、イメージしてやっていくっていうところは、あくまで個人のシップの部分です。
 俯瞰的に見る経済と、個人として突っ込んでいくアントレプレナーシップ。分かりやすく言うとそんな違いかなと。

あくまでシップ、ということですね。
そういえば経済学部が何をやっているのか、ちゃんとは知らない気がします…。経済学部の先生もそのうちゲストにお招きするかも?

『1分で話せ』を素人が鵜呑みにしても上手くいく?

大石:
 私の考えだと先生はいろんなご経験をされているので、それを踏まえたうえでこういうロジカルなお話の仕方ができるんじゃないかと。
江端:
 土台があったうえで?
大石:
 そうです。例えば、私たちみたいにまだ社会に出たことのない学生が、これを真似しようと思っても上手くいくのか、みたいな気持ちもあります。
先生:
 ぶっちゃけ申し上げますと、これをそのままパターンとしてパクるだけだと超薄っぺらくなると思いますよ。ただ一方で、型ってすごく大事で、例えば僕らはいま学部で授業計画を作っているんだけど、こうやって仕入れてこうやって売るとこういうパターンになるよ、みたいなのって驚くほどみんな理解できていないんですよ。だから、本当はクリエイティブに考えてほしいんですけども、まずパターンを叩き込む。
 で、それって別に学問とかビジネスとか、そういう世界じゃなくてもみんなそうで、ピアノでクリエイティブに何か弾きたいと思うじゃないですか。でもピアノ弾かれる方はわかると思うんですけど、来る日も来る日もハノンを練習するわけですよ。ギターでも運指をやるわけです。それってものすごく機械的です。でも機械的なところがなければクリエイティブもない。
 だから両方なんですよね。パターンを学びながら、一方で、それだけで終わったら薄っぺらい。だけどそれを踏まえて、どうやって表現するのかともがいてみて、そしたら頭が混乱するからまた型に戻れと。この繰り返し、行ったり来たりだというふうに思います。
江端:
 じゃあ『1分で話せ』はその型を教える本なんですね。
先生:
 そう。
大石:
 基礎がしっかりしてないと何も始まらないというのは、何事にも共通することだと思います。
先生:
 能力って個体差だから、人によってはそういうこと考えずに広げてもまた自分のところに戻ってこられるような人もいるわけです。それはそれでいいとして、でも、そうでない人はやっぱり型を意識しながら表現してっていうね。
 小説とか書くときも多少そういう型みたいなのはあるんじゃないですか?
大石:
 起承転結だとか、そういうのを学んでからというのはあります。
江端:
 先生がとにかく本を読めと。そこからいろいろな文体が出来上がっていくみたいなことを仰っていました。
先生:
 それですよ!

「型の習得」の普遍性がわかるやりとりでした。私はなにかにつけ、無着成恭という人が「全国こども電話相談室」で答えたとされる「型破り」と「形無し」の違い(型がある人間が型を破ると「型破り」、型がない人間が型を破ったら「形無し」)を思い出すのですが、これもそのひとつですね。

リーダー教育の弊害?

江端:
 先生のインタビューに、リーダー教育をやる弊害としてどんどん人材が流出していってしまうということが書いてありました。
先生:
 僕!?
江端:
 はい。リーダー教育を受けたことで、自分のあるべき姿、やるべきことに気づいて、そうするとここは僕のいるべきところじゃない、とどんどん離れていってしまうと。
先生:
 それはまず解説が必要です。まず、弊害と僕は言ってないんですね。例えば、ヤフーアカデミアでは自分自身をリードしようぜっていうことを対話し続けるわけですよ。そしたら「めっちゃヤフーアカデミアで学びになりました。学んだ結果、ヤフーじゃなかったです」って辞めていく人間がめちゃめちゃ多くて。で、それは普通のヤフーの社員の退職率より有意で退職率が多いわけですよ。気づいてヤフーから出ていく人が多い。
 最初は考えましたよ、これ何のためにやってんだっけって。考えたんだけど、当時のトップとかといろいろ話して「いや、これはおめでとうって話なんじゃないか」と。つまり、これホント大事なことなんだけど、企業の人事部は気づいちゃうからそういうことを施さないって平気で言ってる企業のトップとかいるわけですよ。おかしいだろって。
江端:
 縛り付けるために?
先生:
 そう。思考停止させたいのかって思う。僕はそういう会社に行って、もうそれ違うでしょって話して。気づいた結果、別のところでしたとなったら、もうどんどん出て行ってもらうべきで。だからおめでとうです。
 ただ、経営としては「気付いた結果、ヤフーですね」っていうふうになってもらうように会社を作っていかなきゃいけない。だからそれは経営陣とか幹部の仕事です。ということで、気付くこと自体は正しい。だから、僕は弊害でもなんでもないと思います。
江端:
 あくまで前向きだということですね。

 これはちょっと目から鱗なお話でした。伊藤先生がなされているリーダー教育は、その企業におけるリーダー教育ではなく、社会に通用するリーダー教育、ということですね!
 本編の、アントレプレナーシップが学となっていくには、というお話の中で、人材の「流通」という言葉が出てきました。社会も同様、リーダー教育を受けて気づきを得た人材の「流通」が社会全体の成長に繋がるのかもしれません。

リスクマネジメントは必要ないの?

森貞:
 伊藤先生の考えるアントレプレナーシップは、生涯学習的な考え方に基づくもののように感じました。そうすると、やはりチャレンジするにはリスクマネジメントも同時に必要だと思うんですけれど、ともすればそれは保守的にもなってしまう。では先生はリスクマネジメントについてどう考えているのか、あるいはその方法は学生に教えているんでしょうか?
先生:
 なるほど。これは本当に大事な話で、「失敗を恐れずにチャレンジし」って言うけど、いきなり大怪我するような失敗をしちゃいかんわけですね。だから、ちょっとずつちょっとずつ。
 実は自分ができる失敗っていうのは、自分のできる範囲でしか起こらない。そんなにいきなりおっきなことやっておっきな損失をさせるっていうことや、リスクを顕在化させるっていうことは、実は人間そんなにできません。自分が思う「これだったらそんなに死ぬまでのことにはならんよな」っていうレベルでやろうよ、っていうのはかなりしっかりやってます。そこを超えるような、「これそのままやってたらきついね」みたいものは、僕らとしても目を光らせながらやってる。これは個別です。学生を個別に見ながら、ただ大怪我すんなと。このぐらいですかね。
森貞:
 授業の科目で扱ってはいないんでしょうか?
先生:
 リスクマネジメントそのものを授業として何かやっているってことはないですね。個別のメンタリングの中で「いや、それちょっと行き過ぎちゃう?」みたいな話はしています。
 あとは、人様にご迷惑かけるようなことするなっていうことについては、それもリスク管理だとすれば倫理観ですよね。倫理観はかなりしっかりやらないときついなっていうことで、2年生でも3年生でも必修で倫理観をしっかり学ぼうと。色んなケースに触れて、これをやったら何を生むか想像力を持って考えようよ、っていう話はかなり徹底してやっていますね。
森貞:
 法律とか、そういったこともちょっと噛んできますか?
先生:
 そうですね。例えば独占禁止法っていうのがあるとか、賄賂ってこういうのになるとかですね。
 それから法律だけではなくて、モラルとしての部分もやっぱり僕自身はすごく気を使っています。例えばわかりやすく言うとスシローペロペロ問題とかね。あと、みなさんご存知ないかもしれないけれど、昔雪印っていう会社の「私だって寝てないんだ」っていう社長のひとことで会社が吹っ飛ぶっていう問題が起きたりしているんですよね。ともすると「そういうのも関係なくバーンって突っ込むんだ!」みたいなふうになっちゃうので、それは全然違うぜっていう話は日々言っています。

守りに入りすぎるのも良くないが、自分勝手に突っ込むのもまた良くない。バランスが大切ということですね。
「人様にご迷惑かけるようなことするな」「倫理観」という観点もお話しいただきましたが、このあたりは寮生活(アントレプレナーシップ学部1年生は全員寮に入り共同生活を送る)でも養われる部分であるように思いました。

伊藤先生、イドバタコウギはいかがでしたか?

伊藤先生に収録後の感想を伺いました。

伊藤先生:
 これをちゃんと企画して、台本を作って、こういう質問があるんじゃないかとディスカッションして、実際に多くのスタッフが関わってやって、それを世の中に出してると。世の中に出すことによって、いろんなリスクとかもあったりするわけで、それをちゃんと抑えつつ、こういうふうにやられてるっていうのはすごいなっていうふうに思います。一方で、本編でもお話ししているんですけど、これをどう生かしていくのかっていうのは自分の課題でもあって、だから今回話したことを全力で拡散しながら、俺はこんなふうに考えてるんだよね、だからこうしようよっていう行動に繋げる。そういうツールに、僕としてはしていけたらいいなっていうふうに思います。
みなさんがたもこのイドバタコウギってのをやりながら、世の中に対して何を訴えていくかっていうのを、「伊藤はこういう風に話しました。で、どうなの?」みたいなところは考えるきっかけになったらめっちゃ嬉しいなっていうふうに思っています。ありがとうございます。

森貞:
 相互還元的に、ということですね。
先生:
 そうですね。

おわりに

今回のイドバタコウギ、お楽しみいただけたでしょうか?
これからも様々な学問の先生にご登場いただく予定ですので、ぜひチャンネル登録のうえ更新をお待ちください。
また、今回から視聴者アンケートを導入しました。みなさまのお声で番組をさらにレベルアップさせていきたいと思っています!YouTube、Spotifyの概要欄、本記事の末尾にURLがありますので、そちらからアクセスしてくださいね。
各種SNSのフォローも、よろしくお願いいたします!

文責:森貞 茜


番組クレジット(収録当時)/SNS情報

1分で話せに学ぶ、アントレプレナーシップ学部の思想【ゲスト:伊藤羊一先生(アントレプレナーシップ学部長)】#03
ゲスト:伊藤 羊一 先生(アントレプレナーシップ学部長、Zホールディングス株式会社 Zアカデミア学長)
企画/パーソナリティ:江端 進一郎・大石 歩果(日本文学文化学科4年)
撮影:伊藤 遥香・長田千弘・森貞 茜(日本文学文化学科4年)
編集:江端 進一郎・長田千弘・伊藤 遥香・森貞 茜(日本文学文化学科4年)
監修:土屋 忍(日本文学文化学科 教授)
参考文献:
 伊藤羊一『FREE, FLAT, FUN これからの僕たちに必要なマインド』(2021年、KADOKAWA)
 伊藤羊一『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』(2018年、SBクリエイティブ株式会社)
 伊藤羊一『やりたいことなんて、なくていい。将来の不安と焦りがなくなるキャリア講義』(2019年、PHP研究所)
 伊藤羊一『0秒で動け』(2019年、SBクリエイティブ株式会社)
 伊藤羊一『1分で話せ2 超実践編 世界のトップが絶賛した即座に考えが"まとまる""伝わる"すごい技術』(2021年、SBクリエイティブ株式会社)
 伊藤羊一『1行書くだけ日記』(2021年、SBクリエイティブ株式会社)
 伊藤羊一『「僕たちのチーム」のつくりかた メンバーの強みを活かしきるリーダーシップ』(2021年、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
 伊藤羊一公式サイト(https://www.youichi-itou.net/)
収録日:2023年6月19日(肩書・学年は収録当時のもの)
提供:武蔵野大学

武蔵野大学発インターネットラジオ番組「イドバタコウギ」
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Ⓒ武蔵野大学インターネットラジオ研究会

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