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Celica 2000GT改


152Eを搭載し、あのワークスセリカが再現された

日本が新たな成長時代を迎えようとした1970年。
スペシャルティカーというジャンルを確立するようにセリカ1600GTが誕生した。
パワーユニットには世界でも高い評価を受けた2TGを搭載し、
ゴージャスなパーティーカー的GTではなく、走りのイメージを強調したものであった。
その資質は、1973年に18RGを搭載した2000GTへと進化。
クーペモデルに加えリフトバックモデルが登場し、ライバルに道を開けさせるのであった。
レーシングフィールドにおいては、グリーンボディのターボセリカが有名だが、
幻のワークスエンジン「152E」を搭載したこの一台があった。
本稿に登場するセリカは、そのパフォーマンスを再現したものである。

セリカの誕生と背景

 中東やベトナム、中・南米、アフリカに戦争が続き、欧米そして日本でステューデントパワーが吹き荒れた1970年は、日本においても安保条約の延長が可決し、西側の世界秩序の一員であることが確約された年であった。
 国内においては、大量生産、大量消費による経済成長が続き、1ドル360円という固定相場の恩恵もあって輸出が大きく拡大し、その拡大が国内に還元されるという好循環の経済環境に満たされていた。

 その勢いは、1964年の東京オリンピックに続く2度目の国際舞台として用意された大阪万博に象徴されていた。政府も官僚も、そして、国民も、いまだ債務国ではあったが、まさに戦後から抜け出し、欧米に並び追い越すことが実感され始め、さらに新しい日本スタイルを生み出そうという気概に満ちていた。

 この気概は自動車産業界にも満ち、また、自動車がそうした意識を先導する役目を担っていた。1969年にニッサンからはフェアレディZやスカイラインGT-Rが登場し、ミツビシからはコルト・ギャランGTOが、マツダからは新しいサルーンを提案するルーチェが誕生。1971年には、トヨタ・クラウンが「白いクラウン」というキャッチフレーズの下、黒い社有車イメージから白いパーソナルカーへの拡大を図ろうとしていた。こうしたモータリゼーションの拡大と生活意識の変化の中で、1970年、セリカが誕生する。

 当時のトヨタは、パブリカをベースとしたスポーツモデル、トヨタ・スポーツ800に続き、初の本格的なスポーツカーとなる2000GTを’67年に発売、トヨタセブンによる快走やコロナベースの1600GTで日本グランプリを闘い、カローラにスプリンターという脱大衆イメージモデルを発売するなど、徐々にそのスポーツイメージを高めていた。

 セリカの概要を紹介すると、2ドアハードトップ(後にテールゲートを備えたリフトバックも追加)のボディ形状をベースと、本格的なスポーツカーというよりはスポーティ的なキャラクターが与えられたクーペ、いわゆるスペシャルティカーの先駆けとして登場したモデルであったが、2000GTに搭載された3Mエンジンの基本設計を踏襲したトヨタの代表的なスポーツユニット2T-Gが搭載されたスポーツグレード「1600GT」も設定され、レースシーンでも活躍を見せるなど、その高い基本性能は本格的なスポーツカーにも引けをとらないものであった。

 セリカのパフォーマンスを紹介する時に欠かせないのが、1973年の豪雨の富士1000キロである。2000GTをベースにターボを搭載したターボセリカリフトバック(高橋晴邦/見崎清志)と1600GT(舘 信秀/竹下憲一)がサバンナRX3(片山義美/岡本安弘)との激闘の末、ニッサン240Z組やGCマシンを従え、1位と3位を獲得したのである。

 現在でもダルマセリカでサーキット走行を楽しむといえば1600GTがベースとなることが多いが、ここで紹介する一台は、2.0の18R-Gエンジンをワークスユニット152Eのパーツで武装させた異色のマシンだ。

メソッド1:ワークスエンジンをさらにチューン

 このマシンのオーナー、井上剛氏は、もともとS130やR32GT-Rなど比較的新しめのモデルで走りを楽しんでいたチューニングフリークであったが、10年ほど前にこのセリカと出会ってから、その趣向は一転した。何とそこに搭載されていたエンジンは、TRDの前身であるトヨペットサービスセンターで組み上げられたワークスエンジン、いわゆる「152E」で、当時のワークスカーに搭載されていたものとまさに同じ仕様であったというのだ。それからというもの、そのエンジンの性能を存分に引き出し、現代風のアレンジを加えることで当時のワークスカーと同等か、それ以上のポテンシャルを引き出すため、エンジン本体はもちろん、それを支える補器類やボディ、シャシーなど、あらゆる部分にモディファイを加えてゆくこととなった。

インパネのデザインはオリジナルのスタイリングを保っているものの、各メーター類は精度の高い社外品に交換されている。
室内は、ドア内張りを除き、アンダーコートやカーペットなどを取り除くことで軽量化が図られている。助手席後部には、バッテリーが移設される。

 まず、注目のエンジンだが、ブロックは打刻のないワークスブロックで、クランクキャップには剛性を高めるためのスティフナー加工が施されている。そこに組み込まれるクランクはストロークこそスタンダードと同じ80mmだが、フルカウンタータイプが奢られ、ピストン径がノーマルの89φから92φへ拡大されることで、排気量は2.2リッターにまで高められている。そこに搭載されるヘッドも、バルブ挟み角を狭めるなどノーマルとは全く異なる設計が施されたツインカム4バルブのワークスヘッドだ。

152Eのワークスブロックは、打刻のない専用品となる。ウォーターポンプやオルタネーターなどの各プーリーは、新たに製作されたもの。

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