【Project Focus】高潮や津波被害の軽減と島の水没問題の解消に貢献< 無償資金協力 >
プロジェクト名:モルディブ共和国 マレ島護岸整備事業
コンサルティング:八千代エンジニヤリング株式会社
モルディブ共和国はスリランカ南西のインド洋上に浮かぶ島国で、1,192の島々で構成されている。首都マレ島は、広さ約180ヘクタールでそこに約7万人が居住する世界有数の過密都市で、同島の海抜は1~2メートルと低く、高潮や津波、地球温暖化に伴う海面上昇が脅威となっていた。
マレ島は1987年4月のサイクロンによる高潮で島の3分の1が冠水すると共に、南岸東端区域が内陸深く広範囲に侵食された。これにより、首都機能が麻痺したのに加え、排水の不十分さから浸水が長期化して伝染病が発生し、過去最大の被害に見舞われた。同国政府は緊急支援として日本政府に対し、同島の護岸整備事業にかかる無償資金協力を要請。護岸は高潮の危険にさらされ緊急性の高いマレ島南岸地域の約1.52kmを対象に、高潮災害を軽減することを主目的に計画・整備され、1990年に完工した。護岸の形式は異形コンクリートブロックを積上げた離岸堤(透過式不連続群堤)とし、離岸堤を東西に10基建設し、離岸堤の内陸側に航路を確保できる構造とした。その後、日本の無償資金協力によって2002年にはマレ島全体の護岸整備事業は完了。高潮被害の軽減と同時に、島の水没の問題も解消された。
2004年12月に発生したスマトラ沖地震はマグニチュード9.0の大地震で、インド洋沿岸地域に未曾有の被害をもたらし、被災者は約120万人、死者、行方不明者は32万人を超えるとされている。一方、マレ島では、この津波で約70%が海水に浸かったものの、死者、行方不明者はゼロであった。2006年、首都マレ島の護岸工事支援を含む日本の貢献に対して、モルディブ政府から日本国民に対し「グリーン・リーフ賞(環境賞)」が授与された。
(寄稿:八千代エンジニヤリング(株) 参与 山内 尚)
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本記事は国際開発ジャーナル2023年9月号に掲載されています。
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