【BOOK INFORMATION】開発政策研究機構の開発戦略ペーパー
『地域空間の開発を計画する営み―新時代に向けた新たな地平』
IDPS(開発政策研究機構)の戦略ペーパーは、開発コンサルタントが多くの時間をかけて試みてきた「総合政策アプローチ」を振り返りつつ、その先に見える新たな世界の中で、進めるべき開発援助の方向性を見つめている。
NPO法人開発政策研究機構(IDPS)から、“IDPS開発戦略ペーパー06”として、「地域空間の開発を計画する営み―新時代に向けた新たな地平」が今年5月に発刊された。
最初にIDPSを紹介しよう。本書によると、地球社会の開発問題は、ますます多岐にわたり、深刻度が深まり、その広がりは拡大しており、紛争予防や平和構築、人権擁護や民主化、貧困削減、環境保全、人間の安全保障など、グローバルな課題とされている問題に対して、地域や国レベルでの取り組み、個別プロジェクトやプログラムの取り組みを強化・推進する必要性が以前にも増して高まっている―という認識の下で、2007年4月に本機構が設立されている。
その目的は、広く国内外の市民と開発関係者を対象として、国家間、国、地域、コミュニティで国民や住民のニーズと意見を反映した開発と保全を行うために、調和のとれた開発と開発協力に関する調査研究事業、開発事業評価とフィードバック事業を行い、持続的な開発や支援を実現して、地球市民の平和と安全、安心が保障される共生社会の構築に寄与すること―としている。
目指す調査研究事業は次の通り。①効率的かつ効果的な国際協力を推進するための施策と戦略、②広く国民の意向を開発協力政策に反映するための方策、③紛争予防、紛争解決、平和構築、人権擁護及び民主化の方策、④民主的かつ持続的な国づくり、地域振興、コミュニティ活性化の方策、⑤国、地域、コミュニティの環境政策と環境管理の方策、など。
機構代表は石田洋子(元広島大学教授)、副代表は長山勝英(アルメック相談役)。
筆者を紹介すると次の通り。前書き(長山勝英)、巻頭寄稿「国益と戦略性:ODA政策のアップ・ダウン」(荒木光弥=国際開発ジャーナル主幹)、第1章「地域空間の開発を計画する営み」(長瀬要石=開発政策研究機構理事)、第2章「地域総合計画というODAが果たした貢献とその意義」(薮田仁一郎=国際開発センター顧問)、第3章「グローバル秩序を形づくるアプローチ―地域総合開発計画の視座からの考察」(小泉肇=開発政策研究機構顧問、元日本工営コーエイ総合研究所を創設し、顧問)、第4章「災害に強い地域・都市づくりを目指した国際協力に向けて」(高千穂安長=開発政策研究機構理事、経営コンサルタント)。
同機構の出版実績を見ると、開発戦略ペーパーとして、「戦略的な国造りフレームワーク策定と支援策」(2008年)、「紛争と開発協力」(2011年)、「IDPS設立10周年記念・成果を高める開発協力のあり方」(2018年)、「ポストコロナの開発協力を問う」(2021年)、「開発協力の現場から提案するソフトパワー強化策」(2023年)、「地域空間の開発を計画する営み―新時代に向けた新たな地平」(2024年)など。その他に、注目すべき出版物として次の2つを挙げることができる。「心を耕す―八田與一に学ぶ開発協力の取り組み方」(2010年)、「開発は事業と捉えよ―久保田豊に学ぶ開発協力のあり方」(2008年)。
(本誌主幹:荒木光弥)
『地域空間の開発を計画する営み―新時代に向けた新たな地平』
開発政策研究機構 編著
DTP出版
1,000円+税
ISBN:978-4-86211-847-9 C3031
■開発政策研究機構(IDPS)ホームページ
※「出版物」タブから開発戦略ペーパー、および出版物の一部をダウンロード(閲覧)できます。上記写真の書籍は含まれておりません。
掲載誌のご案内
本記事は国際開発ジャーナル2024年9月号に掲載されています
(電子版はこちらから)
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