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【株式会社パデコ 重永 智之・新社長に聞く】パデコの独自ネットワークとPCKKの総合力でシナジーを創出
(株)パデコは1983年の創設以来、40年以上にわたって開発途上国の発展
に貢献してきたが、より一層世界と戦えるコンサルティング企業となるため、2023年12月にパシフィックコンサルタンツ(株)(PCKK)のグループ企業になった。子会社化に伴い、2024年1月にパデコの代表取締役社長に就任した重永智之氏に今後の抱負などを聞いた。
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代表取締役社長
重永 智之(しげなが ともゆき)氏
強みは豊かな人材とネットワーク
――2024年初頭の社長就任から1年ほど経ちます。パデコの強みや特徴をどのように捉えていますか。
1983年に設立されたパデコは、タイでのアジア開発銀行(ADB)のプロジェクトを皮切りに、インドやインドネシアなどに事務所を立ち上げ、海外での開発コンサルティングサービスで豊富な実績がある。前会長で現在特別顧問を務める本村雄一郎氏は、日本の国際開発コンサルタントのパイオニアの一人であり、海外ネットワークを駆使して事業を展開し、国際的に認められる開発コンサルティング企業に成長させた。
まず驚いたのは、世界中に広がるパデコのバラエティ豊かな人材とネットワーク、そしてユニークな働き方だ。先入観や偏見にとらわれることなく、多様な専門分野の人材が融合して普遍的な価値を見極め、その上で解決策を追求する。これがパデコのアプローチだ。国際事業は一つ一つが競争であり、プロジェクトの形態・専門性に応じて、世界各地の組織や専門家が随時参加できる体制をとっている。この手法とそれを支える独特の幅広いネットワーク・技術力は他のコンサルタントではなかなかまねできない特長である。
――注力していく地域や分野については。
パデコはADBや国際協力機構(JICA)、相手国政府、民間企業などをクライアントに多様な事業を担ってきた。
力を入れている地域の一つに南アジアがある。インドの高速鉄道や地下鉄、港湾横断道路など大型円借款案件をはじめ、バングラデシュの都市インフラ整備事業などで実績を残してきた。インドでは鉄道の整備が長期にわたって広範囲に進められているが、今後も鉄道などインフラ事業を軸にこの地域の発展に貢献していきたい。
併せて外せないのが脱炭素や気候変動対策だ。この分野はPCKKに豊富な経験や技術、ノウハウがある。例えば、世界全体で温室効果ガス排出削減を目指す「二国間クレジット制度(JCM)」のメカニズム策定にあたっては私が本部長時代、力を入れて取り組んだ。PCKKは経済産業省の「JCM実現可能性調査」を受託してアジアや中東、南米の国々に温室効果ガス削減のための技術や製品、システムを普及するなど地球温暖化対策に貢献してきた。国際的なネットワークを有するパデコとの連携を通じて、この分野の事業拡大を見込めると期待している。
東欧での事業にも注力しており、2023年にはポーランドに現地法人を設置した。旧社会主義国にはまだまだ多くのインフラニーズがある。ウクライナの復興にも携わっていく。最近では世界銀行が公示したウクライナ国営送電公社の送電網の調査事業を受託。名古屋のドローン専門企業(プロドローン社)と連携して点検調査を行う予定だ。
――パデコは教育分野でも豊富な実績があります。
パデコには「教育開発部」という部署があり、特に理数科教育事業ではアジアやアフリカなどで高い評価を得ている。経済・社会開発や中小企業の海外展開支援、日本企業と途上国のエンジニアとのマッチングも手がけてきた。
ソフト面ではPCKKが防災分野に強いため、両者の経験を組み合わせた「防災教育」の切り口で開拓できる領域もありそうだ。また、「ゴミを捨てない」といった生活習慣から変えていく環境教育も必要だと思う。
グループビジョン2030と連動
――パデコをどんな会社にしていきたいか。抱負を教えてください。
「インフラ」「経済・社会開発」「教育」の3つの軸はぶれずに続けつつ、売り上げを伸ばしたい。目標は新規事業やM&Aなどの10億円も含めて2030年には110億円。達成するにはJICAの仕事だけでなく、大型インフラプロジェクトの積極的な受注を目指していく。
私は大学卒業後に造船会社に入社して主に国内事業に携わる中、PCKKのことを知って転職。トンネルや都市管理システム、さらに新規事業の立ち上げなどさまざまな仕事をした。PCKKは「建設」という冠を軸に、より広く多様な分野とコラボレーションしながらインフラ全般にコミットできる会社になれば、との思いでやってきた。
海外経験の少ない私がなぜ今、パデコの社長に就任したのか、それはパデコが大きくなっているからだ。パデコの社員は120人ほどで、インドの子会社では約250人が働いている。利益を上げて組織の経営をしっかり担っていくことこそ、私に与えられた使命だと感じている。
パデコには途上国の人々に役立ちたいと熱意ある社員が多く、その強みや魅力を大事にしつつ、スピード感のある経営判断や大胆な経営戦略にシフトできる体制を整えていく。不確実な変化や危機に対する準備や適応の力も高めたい。
――もうすぐ組織の新しいビジョンが完成すると聞きました。
PCKKが策定した「グループビジョン2030」と連動して、パデコの中長期経営ビジョンであるPADECO VISION 2030を策定した。
パデコは過去にソフト部門からハード部門にも事業領域を拡大した歴史があるが、相当な議論を重ねた上での決断だったと思う。今回は社員全員との意見交換を行いながら、ボトムアップの手法でビジョンをまとめている。部署ごとのヒアリングでは若手の本音が見えにくいため、役職階層ごとで10回以上にわたり意見交換会を設けて意見を聞いた。
組織にとって、事業の前にまず人が大切だ。一人一人異なる意見や思いをできる限りビジョンの中に盛り込みたい。
――人材育成について。
パデコは、これまで即戦力を中心に採用してきたが、現在は技術者の高齢化と人材不足が課題だ。毎年新卒を採用しているPCKKとの連携で、現場をリードできるエンジニアなど、より多様な人材を育てられると思う。
若手は今、かつてのように「背中を見て覚えろ」では育たない。ていねいに伝えていく姿勢が求められるし、下働きとしての時間が続くと悩んで辞めてしまう。一人一人が将来を見据えたキャリアプランを描き、目標に向かって進んでいけるような仕組みが必要だ。
効率的な働き方を重視する若者が増える中、クライアント業務には提出書類が細かすぎるなど非効率な業務も少なくなく、社員の負担になっていると感じる。この点、私はこれまで建設コンサルタンツ協会の副会長として国交省などと意見交換しながら要望を出して相互に改善してきた経験がある。国際協力事業ももっとスピード感を持って実効性のあるやり方に変えていけないかと考えている。
世界における競争力を高める
――パデコと連携する最も大きな魅力は何ですか。
PCKKグループは創業以来70年以上にわたり、インフラエンジニアリングを核としたコンサルティングサービスを提供し、社会に多様な価値や変革をもたらすグローバル企業を目指してきた。
グループ企業は国内に13社あり、海外事業は中国やシンガポール、アメリカの会社がこれまで担っていたが、パデコで4社目となる。世界中に独自のネットワークを有するパデコとの連携で、世界における競争力を高めたい。
パデコの海外経験と実績、そして多種多様な専門性を持つ人材が、グループリソースと一体となってシナジーを創出し、事業展開を加速させたい。
掲載誌のご案内
本記事は国際開発ジャーナル2024年11月号に掲載されています
(電子版はこちらから)
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