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【特集:廃棄物管理プロジェクト】ベトナム初のごみ埋め立て処分場建設で生活環境を改善

ベトナム:ベトナム国ハイフォン市都市環境整備事業(Ⅱ)ザーミン廃棄物処理施設整備コンサルティングサービス(円借款)

八千代エンジニヤリング株式会社


日本の技術でごみを適正に処理
 ベトナム北部の大都市・ハイフォン。同市は、人口200万人を超えるベト
ナム第三の都市で、国際港湾都市として発展している。しかし、急速な都市化と人口増加により、廃棄物の大量発生が問題となっていた。既存のごみ埋め立て処分場はすでに満杯で、適正な運営管理ができず、悪臭や害虫発生などにより生活環境が悪化していた。
 2011年から、同市での廃棄物の迅速な回収と適正な埋め立て処分、生活環境改善を目指したプロジェクトが日本の円借款により開始された。八千代エンジニヤリングは廃棄処分場などの詳細設計、現地での入札の補助と技術評価、工事の施工監理などコンサルティングサービスを提供した。
 プロジェクトのメインとなる「ごみ埋立処分場」の建設では、ベトナムでは初となる衛生的な埋め立て処分場として、日本の開発技術である「準好気性処分場(福岡方式)」を採用した。これは、処分場内部の通気性を良くし、生ごみなどの有機物の分解を促すことで、処分場から発生する汚水や温室効果ガスによる環境負荷を低減させる特徴を持つ。
 また、処分場用地はほとんど人が住んでいない大きな川沿いを選択。湿地帯に見られる地盤沈下のリスク回避を目的に処分場全域で大規模な「地盤改良」を提案し、詳細設計を行った。

浸出水(ごみからの汚水)処理設備の全景
浸出水処理設備の薬剤撹拌(かくはん)機
処分場底部の遮水シートの敷設工事
現場内道路の締固め工事

総合力を活かし完成に導く
 
プロジェクト期間中は、全世界で新型コロナウイルス感染症がまん延し、エンジニアを含む日本人の渡航が禁止されたほか、ベトナム国内でも行動規制が敷かれた。チームメンバーの安全・健康を気遣いながら、ベトナム政府の指針に従って渡航する日本人エンジニアの人員調整を行ったほか、オンラインミーティングなどを活用し、プロジェクトを遂行した。
 工事は、ベトナム国内の建設業者が受注、実施したが、慣習や文化の異なる現地の建設業者とコミュニケーションを取って業務を進めることには、大きな苦労もあった。プロジェクトを担当した同社海外事業部資源循環部門の荒井隆俊氏は、「普段から対話することを心掛けたほか、業務外でも交流をはかることでお互いを理解するように努めた」と話す。
 同社は、完工の2021年まで、10年以上にわたり本プロジェクトに携わってきた。土木、建築、廃棄物、水処理、電気、機械など、多様な分野のエンジニアが力を合わせて取り組めるという、同社の総合力の強さが、プロジェクトを成功に導いたと言える。
 完成した埋め立て処分場や処分場へのアクセス道路、調達したごみ収集車両などはハイフォン市によって活用され、市民の生活環境の改善や環境保全に大きく寄与していく。

ごみ埋立エリア底部の工事の様子
ごみ埋立エリア底部の工事完成時
廃棄物処分場の全景

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本記事は国際開発ジャーナル2024年11月号に掲載されています
(電子版はこちらから)

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