【特集:島しょ国プロジェクト】日本が持つ治水の知識経験をフル活用し洪水と雨水浸水を防ぐ
フィジー:ナンディ川洪水対策プロジェクト
八千代エンジニヤリング株式会社
約30年前から洪水対策に取り組む
フィジー第三の都市ナンディは国際空港を有する重要都市だ。街を貫流するナンディ川流域では洪水対策事業が行われておらずたびたび水害が発生。気候変動によるさらなる被害激甚化も懸念されていた。そこで同社はフィジーに対し、1990年代からさまざまな形で調査や支援を実施。本プロジェクトでは川の流域全体を見据え、氾濫解析や経済分析を通じて河道拡幅や遊水地整備などを行う「洪水対策」、雨水排水路や雨水貯留施設の整備から集中豪雨などによる浸水被害を軽減する「雨水浸水対策」という二つのアプローチで被害の軽減を図る。同時に上流域の水源林の保護や保全、土砂動態の管理、環境保護・保全などの流域マネジメント、洪水リスクマップの作成、啓発活動も実施した。
早急な治水安全度の向上目指す
自らも洪水被害や気候変動によるリスクにさらされながら、海面上昇で水没の危機にあるキリバスやツバルからの移民を受け入れることを表明するなど、優しく温和な国民性を持つフィジー。一方で優しすぎるが故に決断しきれない一面もあり、同国の行政関係者や商業・公共関係者、地域住民、NGOなどのさまざまなステークホルダーと合意形成を図りながら優先事業を選定するのは大きな苦労があった。それでも、洪水対策のマスタープラン策定に際しては日本の治水の知見・経験をすべて活用し、統合水資源管理を念頭に置いた計画とした。
同社はフィジーの人々の心に応えるためにも、今後も早急な治水安全度の向上で、同国および太平洋島しょ国地域の発展に寄与することを目指す。
掲載誌のご案内
本記事は国際開発ジャーナル2024年9月号に掲載されています
(電子版はこちらから)