わたしの中のぐるぐるを紹介します
どうも、こちらがわたしの中に巣喰っているぐるぐるです。
わたしは双極性障害、いわゆる躁うつと呼ばれる病気を持っています。
どうしたって、経験のない方には伝わらない病気ですが、
わたしはこいつを「腹の中に巣喰っているぐるぐる」と表現したい。
鬱の時、身体の中心が気持ち悪いほど重たくて、
そんな時、どす黒いぐるぐるはゆっくりと渦を巻いています。
ぐるぐるが動き出し、その色を濃くすると、
わたしはぼろぼろ泣きながら動けなくなる。
わたしの時が止まる。
大好きな服も化粧も音楽もどうでもよくて、
食欲はあるんだかないんだかわからなくて、
会話もできなくなる。
ただ、散らかった部屋と、3日風呂に入れていないわたしと、
1時間かけて駆けつけた誰よりも優しい母親がそこにいるだけ。
軽躁の時、身体はとても軽く、元気で仕方がなくて、
予定を詰めまくり、柄じゃないほどマッチングアプリで知らない人と話し、
勢いで引っ越しを決め、人が変わったような息遣いで話す。
わたしの中のぐるぐるは眩しい色に変わって、
速度を増してキラキラと回転している。
毎日が楽しくて楽しくて、鬱なんてなかったんじゃないかと錯覚する。
毎週末は家を空け、平日は何十時間も残業をしても平気で、
「普通になった、やっとなれた!!!」と思う。
ぐるぐるは眩しくニヤニヤと笑っている。
どす黒いぐるぐるとは6年くらい付き合いがあるけど、
眩しい色のぐるぐるとは去年初めましての挨拶を正式にした。
よく考えたらその予兆はあったけど、
誰もそこまで考えてなかった。
「軽躁状態ですね」
2024年。
何かがおかしい年だった。
わたしは職場のある人と仲良くなりたくなって、
本当によくわからないほど飲みに行ったり、
突然に引っ越しを決めて、
それを夏頃に話したところで友達がざわついた。
普段わたしはゆっくりめに、ぽつぽつ話す方らしいが、
その時は息遣いが急っていて、本気で心配された。
気づいた時には予定がぎっしり詰まっていて、
急に推しのコンサートに行くため大阪まで向かい、
戻ってきてもなお知らない人と電話をし、仕事も残業も難なくこなし、
本当に本当に元気だった。
当の本人は普通になれたんだと思って嬉しかったし、
薬は飲んでいたが、心配することではないと思っていた。
友達に心配だと言われ、
毎年9月ごろに予定を詰める癖があり怒られるのと、
秋は大きく体調を崩すので主治医に相談したところ、
軽躁ですねと言われてしまった。
サイクルに飲まれる
軽躁ですね、ということはこれは本当の自分の元気ではないということ?
あんなに楽しかったのは「症状」なの?
またあのどす黒いぐるぐるはわたしを襲うの?
だとしたら、その崖から落ちるような落差が怖くて仕方がなくなった。
幸い、わたしは去年は緩やかに着地して、そのまま冬になり、
日が短くなるのと同時にわたしの夜も長くなっていった。
頭が働いていない。
12月初旬にはすでに黒いそれは渦を巻いていた。
年が明けるまで、ずっと、加速したりゆっくり蝕んだりを繰り返して、
年が明けてまもない頃、突然、
かつてないほど黒いぐるぐるがわたしを襲ってきた。
気が触れるのかと思う恐怖
その日は朝から調子が悪くて、
大泣きして頓服薬を流し込み、
じっとして泣き止んだところで無理やり会社に行った。
社会に出てしまえば、なんとか人の形を保てることも多い。
あとは帰って、寝るだけだった。寝るだけだったのに。
突然とてつもない不安と恐怖に襲われ、
横になって泣いていたわたしは思わず両手で顔を塞ぎ、
起き上がって声を上げて泣いた。
勘違いされるのだが、悲しくて泣いているのとは少し違う。
感情はほぼなくて、ただ何かに強制的に泣くことをさせられている感覚なのだ。
起き上がって泣き出したわたしはほぼパニック状態で、
頓服薬と眠剤を胃に流し込み、
ガタガタ震える身体と止まらない涙にどうしたらいいのかわからず、
助けてと検索し、当然助けは来ず、母親に電話するもAM1:30は流石に出ない。
そのうち呼吸がしづらくなって、震えは止まらず、
一人で、パニックの中一生懸命考えた。
ふと、一人の仲のいい先輩が似たような症状を持っていて、
幸いにも起きている可能性の高いことを思い出した。
すがるようにLINEでどうしたらいいですかと聞く。
「不安でパニックで震えが止まらず、こういう時どうしてますか」
先輩はわたしが落ち着くまでLINEをしてくれて、
どうにか30~40分くらいで薬が効き、
寝ることができた。
初めましてのぐるぐる(強め)が、挨拶してきやがったのだ。
「パニック症状ですね」
典型的なパニック症状、過呼吸と震え、
気が触れるのではないか、死ぬのではという恐怖、
いつもは穏やかでふわっとしたことしか言わない先生は、
この時ははっきりわたしにこう言った。
「パニック症状では死なないからね。過呼吸では死なないから。」
「その時は辛いけど、絶対収まるからね。」
致命傷
よくある話だと思う。
新卒で入った会社で頑張ってしまって、
適応障害が治らなくてそのうちうつ病になり、
それもそのうち双極性障害になって、
パニック症状も出てきたり、
よくある話、周りにはあまりいないけど
SNSの世界には石を投げたら簡単に当たるほど、
たくさんいると思う。
わたしは幸い、自傷願望だけで留まることができていて、
これは本当に幸せなこと。
中には人生から離脱する人も本当によくある話だから。
わたしがなぜそれだけで留まることができているのかは
よくわからないけど、きっと周りの人とたくさんの好きなこと、
やりたいことのおかげだと思う。
まだわたしのぐるぐるは致命傷にはなってない。
少しの傷は、人としての深みだと信じてみたい。
自分の軌跡を振り返りながら、
わたしは一生、あの時頑張ってしまったわたしを
愛しく抱きしめながら恨み続ける。
てめえを飼い慣らしてやるよ、と睨みつける。