タイのGDPや経済の将来性は?景気も政治も解説
近年成長と発展を遂げている東南アジア。その中でもタイのこれからはどうなるのか? GDP、主力産業、政府が掲げているビジョン、新型コロナウイルスの影響、そしてタイに進出している日系企業の現在について徹底調査。タイ進出の判断の一助となれば幸いです。
実質GDP成長率で見るタイ経済
タイの実質GDPについては以下の通りとなっており、東南アジアの中ではシンガポール、ブルネイ、マレーシアに続く成長率となっています。
また、1 人あたりのGDP成長率(年率)は安定的なプラス成長となっております。
CEICによると、タイの一人当たりGDPは2019年の8,176.714米ドルと最高値となりましたが、2020年は新型コロナウイルスの影響もあり7,549.962米ドルと減少しています。
タイの主力産業について
① 自動車
1960年代に日系のメーカーがタイに進出したのをきっかけに、1970~80年代にかけてASEAN最大の自動車生産国に成長、「アジアのデトロイト」と評されるまでになりました。
実際、自動車生産台数は2009年から2016年まで平均で年9.93%の成長を遂げており、2019年の自動車生産台数は世界第11位、東南アジアの中では唯一の200万台を超えています。
2030年のまでの目標として、自動車生産台数の30%以上を電気自動車にする事を掲げています。
タイでは現在日本だけに限らずアメリカや中国など多種多様な国のメーカーが参入しており、ピックアップトラックなどの商用車の生産の割合が多くなっています。
生産台数は2018年に200万台を突破したのをピークに、2019年より減少。
2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で大きく数値を落としていますが、2021年は回復を見せており、1~10月累計で、前年同期比22.9%増の136万5,984台となっています。
② バイオプラスチック産業
タイはバイオプラスチック関連の原材料が豊富にあることと、輸出の為の地理的な優位性を活かし研究開発への支援を積極的に行った結果、タイのバイオプラスチック輸出量は2016年から2019年にかけて107倍に増加、世界第3位まで急成長を遂げました。
タイ政府は環境などに配慮した持続可能な成長を目指す「BCG(バイオ・循環型・グリーン)経済」政策も新たに掲げており、2019年から2021年にかけてバイオプラスチックの免税を実施しています。
③ メディカル・ツーリズム
メディカルツーリズムとは、疾患を持つ患者が他国で医療サービスを受けることを前提とする旅行の事です。
タイでは2002年からメディカルツーリズムを新規産業として力を入れたことにより、中東や欧州から多くの患者を獲得することに成功、タイの一大産業として発展を遂げています。
JCIに認定された病院の数は、東南アジアの中ではタイがトップの世界第4位。
医療行為ではないものの健康増進を目的とする「ウェルネスツーリズム」もタイでは盛んに行われており、スパやフィットネス、健康食などを通しこちらも健康志向の高い人たちを多く迎え入れ、タイの景気に貢献しています。
タイの新しい経済モデル「タイランド4.0」とは?
タイランド4.0は、タイ経済社会のデジタル化を加速させることで、今後20年間に先進国入りすることを目標とする野心的な長期ビジョンです。
それまでのタイらしさを重視した産業から、外国企業の先進技術を積極的に取り入れる方向性へシフトしており、その「ターゲット産業」と呼ばれる10業種は以下の通りです。
次世代自動車
スマート・エレクトロニクス
医療・健康ツーリズム、
農業・バイオテクノロジー
未来食品
ロボット産業
航空・ロジスティック
バイオ燃料とバイオ化学
デジタル産業
医療ハブ
このうち、①~⑤の既存産業の競争力を強化し、⑥~⑩の未来産業を育成するというフローになっていますが、この⑥~⑩の産業の発展には外国企業の役割が大きく、外資誘致政策が必要になってきます。
それに伴いタイ政府はタイランド・プラスと言う政策を2019年に施行しており、BOI(タイ投資委員会)が税制優遇策の詳細を発表しています。
その内容は、大型の投資案件についての5年間の法人税軽減や、機械の輸入税の免除などが挙げられ、今後もタイへの生産拠点の移転を促進する政策が期待されています。
新型コロナウイルスとタイ経済
新型コロナウイルスによるタイ経済への影響は大きく、2020年はGDP成長率がマイナス6.1%と、2009年以来のマイナス成長となりました。
2021年もその余波が残るものの、新規陽性者数が頭打ちになった9月以降は前年比でのプラス成長が見込まれており、底からは脱している状態になっています。
タイの新型コロナウイルスワクチンの接種状況は、2021年11月中旬時点における完全接種率は51.29%、部分接種率は64.20%となっています。
新規陽性者数は8月末をピークに減少傾向ですが、収束にはまだ遠いとされています。
一方9月以降はポスト・コロナに向けての制限緩和が進んでおり、バンコクを含む感染リスクが高いと指定されている地域でも小売店や飲食店の営業制限が解除されています。
また観光業への対策として、7月から一部地域でワクチン接種済の外国人観光客への隔離義務を撤廃。
11月からは首都バンコクなど9地域が加わり、経済の回復を促しています。
また、JCCの『2021年上期日経企業景気動向調査』によりますと、2021年度前期の業況については新型コロナウイルスの影響が多いながらも、タイ経済や世界経済に持ち直しの動きがみられたことで製造業を中心に業況が上向いたと回答する企業の方が多く、設備投資の投資増を見込む企業は40%、輸出増加を見込む企業は46%となっています。
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