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<論文>血液培養のタイミング

Does This Patient Need Blood Cultures? A Scoping Review of Indications for Blood Cultures in Adult Nonneutropenic Inpatients
Clin Infect Dis . 2020 Aug 22;71(5):1339-1347.
doi: 10.1093/cid/ciaa039.

アブストラクト
初回またはフォローアップ血液培養の適応に関するガイダンスは限られている。我々は、2004年1月から2019年6月の間に発表された、非好中球減少症成人入院患者における発熱および一般感染症の臨床マネジメントにおける血液培養の有益性および/またはその影響を報告した論文を対象としたスコーピングレビューを実施した。合計2893件の論文がスクリーニングされ、50件が含まれた。報告された菌血症の発生率に基づいて、症候群は菌血症の検査前の確率が低い、中等度、高いに分類された。菌血症の可能性が高い症候群(例えば、血流感染)および可能性が中等度の症候群では、原発巣からの培養がとれない場合、または原発巣からの培養をとる前に抗菌薬の迅速な投与開始が必要な場合には、ルーチンでの血液培養が推奨される。血液培養の有益性が低い症候群では、菌血症を見逃した場合に有害事象のリスクがある患者(例えば、ペースメーカーを使用している患者で重度の化膿性蜂窩織炎の患者)では、血液培養を考慮してもよい。十分にソースコントロールされ、危険因子や血流感染の懸念がない場合、ほとんどのレンサ球菌や腸内細菌による菌血症では、ルーチンのフォローアップ血液培養は不要である。

<菌血症の事前確率>
5%未満(非常に低い)…術後48時間以内の発熱,単発の発熱
10%未満(低い)…非複雑性の蜂窩織炎(眼窩周囲を含む),下部尿路感染症,CAP・HCAP
10%から20%未満(低い-中程度)…重度の並存疾患のある蜂窩織炎,VAP
20%から50%未満(中程度)…重症敗血症,急性腎盂腎炎,胆管炎,化膿性肝膿瘍,重症CAP,非血管性シャント感染,悪寒戦慄を伴う発熱
50%以上(高い)…椎間板炎,脊椎炎,硬膜外膿瘍,急性非外傷性感染性関節炎,髄膜炎,VAシャント感染,敗血症性ショック,CRBSI

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<非好中球減少症患者における血液培養推奨アルゴリズム(上図)>
(臨床的判断の代用ではない)
*US Centers for Medicare and Medicaid ServicesのSevere Sepsis and Septic Shock Early Management Bundleの重症敗血症基準
†カンジダ陽性の場合は、ルーチンでフォローアップ血液培養(FUBCx)が必要
‡敗血症性血栓性静脈炎、感染性血栓、植え込み型除細動器(ICD)/ペースメーカーリード感染、血管内カテーテル感染、血管グラフト感染
§感染性心内膜炎が疑われる場合は2セット以上を検討
||血流感染のリスクがある患者:ICD/ペースメーカー、血管グラフト、心臓人工弁、感染性心内膜炎の既往、心臓移植レシピエントの弁膜症、修復されていない先天性心疾患、修復された先天性心疾患でシャントや弁膜逆流が残存しているもの、修復後6ヶ月以内
¶単発の発熱エピソードではBCxの採取前に病歴と身体検査で感染性/非感染性を特定し、BCxの利益を検討する
£人工物:人工関節や人工血管
**菌血症が疑われる場合や人工物がある場合を除き、免疫不全患者の皮膚細菌叢(例えば、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)に対するルーチンのFUBCxは不要
††併存疾患のある蜂窩織炎:免疫不全または黄色ブドウ球菌菌血症の見逃しにより転帰不良となるリスクのある患者
略語:BCx…血液培養、CAP…市中肺炎、HCAP…医療関連肺炎、PSI…Pneumonia Severity Index、UTI…尿路感染症、VAP…人工呼吸器関連肺炎、VO…化膿性脊椎炎

<感想>
S.lugdunensisの重要性もさることながら,S.aureusやカンジダであってもFUBCx(陰性化の確認)が必須であるということが抜け落ちがちと感じます。血液培養の入口と出口,どちらも確認できるよい論文と思います。



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