オーナーの企み #11
オーナーの家での夕飯は
ボスの家とは違ってとっても静か
ボスはいつも鳴りっぱなしの
電話に追われていて
ゆっくり食事をする事がなく
それに合わせて僕達も
夕飯を食べると言うより
食事を済ませる。という感じで
それが逆に気を使われている
という感覚がなく
流れ作業の様で意外と気楽だった。
だけど、オーナーの家では
ゆっくりと食事をし
ワインと会話を楽しみ
終始オーナーが気を使っていて
それは僕に対してだけでなく
奥様に対してもそうだった。
その日の夕飯では、
ホームステイ中の1か月の間に
何処に行くか色々と話をしてくれて
そのスケジュールには
自家用クルーザーから
自家用セスナまでと
豪華ラインナップが並び
たくさん楽しもうじゃないか!
と提案してくれたのだけど
僕はミックの家のソファーに
寝っ転がりながら
出された缶ジュースをラッパ飲みして
ポテチを食べる休日の方が好きで
セスナもクルーザーも
そんなにテンションが上がらない。
今考えればこの頃の僕は
斜に構える年頃も相まって
こっち側とか、あっち側とか、
人や物事にどこか線引きをする
癖があり、その癖が抜けるのには
かなりの時間を要した。
いや
今もまだ多少あるかもしれない。
次の週末
朝からオーナーと約束していた
隣町のベイエリアまでお出掛けをして
午前中はクルーザーで海を散歩し
気持ちの良い海風に当たって
リフレッシュ。
お昼は海沿いのレストランでと
陸に戻り食事をしていると
知らない綺麗な女性が
こちらに近寄ってきた。
どうやらその女性は
僕の存在を知っているらしく
笑顔で話しかけてきたのだけど
てっきり僕はレストランのオーナー
だと思い込んでいのだが、、
オーナーと2人で過ごすはずだった
休日がいつの間にかテーブルには
知らない女性が一人増え
オーナーから2〜3時間
この街を観光しておいで
とお金を握らされ
軽いウィンクと共に
そのまま二人は海へと消えて行った。
なるほど。
ようやく意味がわかった。
このホームステイは
僕とではなく
オーナー自身が楽しむ為の
僕はカモフラージュだったのだ。
僕はとりあえず貰ったお金で
何する訳でもなく
町を徘徊しながら時間を潰し
海沿いのベンチで
オーナーの帰りを待った。
僕はさほど
この事に興味がなかったので
帰りのドライブ中はお互い何も触れず
家路に。
帰宅するとオーナーと僕は
2人でオーナー自慢のクルーザーで
一日中クルージングを
楽しんだ事になっていた。
そしてオーナーは
あっち側から
僕にまた軽いウィンクをした。
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