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ホームステイ #10

この街には一軒の不動産屋があり
その不動産屋が
只今、解体作業真っ只中の
競馬場のオーナーでもある。

その競馬場オーナーの家の庭には
色々な国から集めた
珍しい鹿が飼われていて

飼われているというか自宅の敷地内に
森の様な広大な庭があって
そこにフェンスを張り
放し飼いになっていた。

角がスクリューの様になった
美しい鹿からバンビまで
たくさんの珍しい鹿が放されていて
たまに姿を現し森の中に佇む
その鹿の美しさに息をのんだ。

時々ボスと仕事で
その鹿達の様子を見に行ったり
フェンスの修復をしたり
していたのだけど
ボスは元猟師だけあって
動物の習性には誰よりも詳しい。
国も種類も異なる鹿の習性を
全て把握し、いくつかある鹿の群れ
それぞれに適した干し草を用意する。
色々な種類がある餌の干し草も
一度自分で食べて選ぶ程だ。

その日も鹿の様子を見に
オーナーの自宅を訪れた時
珍しくオーナーに声を掛けられた。

YUTA、よかったら僕の家で
ホームステイをしてみないか?

え? 突然の誘いにびっくりした。
直ぐに返答はできなかったので
考える、とだけ答えてみた。

ただ、この頃の僕は
このオーナーの様な感じの
大人が少し苦手だった。
今どきの言い方をすると、陽キャ?
とでも言うのであろうか。
いや、ちょっと違うな。
調子の良いイケメンの大人
とういうイメージだった。

帰り道にボスに相談すると、
自分で考えろ
答えが出たら伝えてやる、と。
僕は、こんな感じの
ぶっきら棒なボスや
寡黙なミックの方が
一緒に居て落ち着くタイプの
子供だった。

でも、オーナーの自宅からも
仕事に通える距離だし
毎日ボスの家で夕飯をいただくのも
割と迷惑なんじゃないか?
と思っていたので
悪い話ではないなとも思っていた。

一日考えて、
何か変化を求めていた僕は
オーナーの家に一か月間
ホームステイをすることにした。

夕飯の時にウェインが
オーナーの家には
同級生の女の子がいるよ。と、
ニヤついた顔でこっそり僕に伝え
肩を軽く叩いてきた。

次の日、仕事に行くとミック達から
YUTA、女の子がいるから
引っ越しを決めたんだって?
と一日中揶揄われた。。
ウェインは、そういうところがある。

引っ越し当日、
荷物を持ってオーナーの家に行くと
小奇麗なオーナー夫妻と
同い年の脚の長いキャサリンが
手を振って僕を迎えてくれた。

オーナーから
僕は男の子供も欲しかったんだ
だから、たくさん一緒に楽しもう!
と握手をされ、僕も笑顔で応えた。

でも
何故僕がこの家に呼ばれたのか
オーナーの企みが
段々とわかったのだった。

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