20年間ゴールドマンサックスで活躍したプロが語るトレーダーの仕事とは
金融業界のトレーダーとは
「トレーダー」「ディーラー」 聞いたことはあるがあまりイメージしにくい仕事ではないだろうか。「車の売買、競り市での売買、不動産や金融商品の売買をする人でしょ」という答えがよく返ってくるが半分正解という感じだろうか。物の売買にはその売買をする主体と仲介をする人と2つのプレーヤーがいて、ここでいうトレーダーは前者、つまり価格の上下によって損益が振れる人である。
結果が全てであるプロの世界で求められること
私が所属していたゴールドマンサックスという会社でのトレーダーは金融市場において時々刻々と価格が動く金融商品を相手に市場環境を見極めながら売買し収益をあげていくという仕事であった。
「安く買って高く売ればよい」ただそれだけの簡単な事なのだがプロで構成された市場はあらゆる情報が瞬時にその時点の価格に反映されており、目の前にある価格が安いのか高いのかわからない。いやなんとなく分かってはいるのだが確信には至らない。
確信に至るまで売買はしないとするならば、恐らく売買のチャンスは1回もないままにキャリアを終える事になる。アクションをしなければリターンが生まれる事は決してなく、リターンを生まないトレーダーの存在意義はない。
自分の中で確からしい事を行動に移すのだがなかなかうまくいかない。自分の計算で7割勝つという目算があっても3割負ける。2回連続負ける事も9%ある。そして連続で負けるとそもそもの7割勝つっていう計算自体が何の根拠なの? 自分の思い込みじゃないの?となる。かくして自信は失われる。数字に強く、頭が良いと思っている人であればあるほどその衝撃は大きい。
そのような葛藤の中で数字の客観性を調べ、自分の気持ちを立て直しながら日々勝負の世界に繰り出す。それがトレーダーの仕事の本質である。雇っている会社からしたら結果が全てである。心の中のそんな葛藤なんかどうでもよい。
大事なことは一歩先を予測している少数派かどうか
そこで鍵となってくるのは自分の考えを客観的に見るもう一人の自分である。物の値段は100人のうち50人以上がどう動くかで決まる。何が正しいかではなく世の中の多数がどう思い動くかが正解を決める。トレーダーにとって大事なのは自分が大多数の動きを一歩前に予測している少数派かどうかなのである。今は少数派だけど今後多数派の考えになるならそれはマーケットの世界では正解なのだ。
自分なりの難しい定量的な分析からそれを導くものもいれば、たくさんの市場参加者と会話する中で自分が多数派か少数派かをかぎ分けようとする心理学者のようなプレーヤーもいる。
主観的な自分と客観的な自分の対峙
主観的な自分の考えを空から見る客観的な自分がいてその二人を会話させることができる人が最終的に強い。単発的に市場で勝つ人はたくさんいるが、長い年月継続的に勝つ人はほぼ全てこの主観と客観の自分の会話ができている。そしてそれができる人は勝負の世界での持続性が高い。
このように書くと意味不明な仕事に聞こえるかもしれないが、トレーダーとはつまり自分の考えを定量的なアプローチからなるべく客観性の高いものにして、それを世の中の鏡に照らし合わすことをして取捨選択する仕事なのである。
この考えは実はあらゆる実業にも当てはまる。情熱をもってビジネスに挑むがそれが世の中の人々の共感や同意がなければそのビジネスはうまくいかない。
皆さんが知っているAmazonのCEOのジェフベゾズやシリコンバレーの教祖とも呼ばれるペイパルの創業者ピーターティールも元々はトレーダーだった。
象徴的な時代の先駆者であるが、見事なトレーダーである。当時少数派であった主観的な自分が時間と共に多数派になると分析して勝負に打って出たのだろう。
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