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「IDENTITY名古屋」という表舞台を陰ながら支える立役者の素顔ーー編集者・小山和之、WEBディレクター・城後建人 対談インタビュー

今朝ポストに入っていた手紙、昨日乗った電車、今飲んでいるコーヒー。

私たちが日常的に触れ、見ることができるものは全体のほんの一部だけだ。ポストに手紙を入れる配達員の姿は見れても、郵便局で手紙を仕分けするひとの顔は見れない。電車の配線を管理しているひとの顔も、今飲んでいるコーヒーの豆を栽培しているひとの顔もそうだ。

私たちが可視化できるすべてのモノやサービスを表舞台だとすれば、その裏には舞台を支える重要なキーパーソンが必ずいる。

「IDENTITY名古屋」というメディアの表舞台にも、ステージ裏で陰ながら盛り上げる人たちはたくさんいるが、なかでもその根幹を支えるうえで欠かせない人物がいる。

直線距離にして約260km。名古屋とは文化も風土も異なる“東京”という地で生活を営みながら「IDENTITY名古屋」の運営に携わる、小山和之(こやま かずゆき)と城後建人(じょうご けんと)だ。

もともと、名古屋に縁もゆかりもなかった二人がどうして名古屋のローカルメディアに関わることになったのか?本業とは別に、副業として名古屋のメディアコミュニティに属する感覚とは?二人が今後目指す先とは一体・・・。

編集部メンバーからも一目置かれる存在の二人にスポットライトを当て、インタビューを決行した。メディアの立ち上げから約3年。今まで語られることのなかった「IDENTITY名古屋」の表舞台を支える立役者二人の率直な考えが垣間見えた。

−−小山和之(こやま かずゆき)
編集者・ライター。1989年生まれ。建築の意匠設計を経て、WEBデザインコンサル会社にてディレクション、メディアの企画・立ち上げ・編集等に従事。傍ら個人でフリーの編集者・ライターとして活動し、現在に至る。
−−城後建人(じょうご けんと)
プロジェクトマネージャー・ディレクター。1993年3月生まれ、福岡県久留米市出身。中央大学商学部卒。株式会社U-NOTEで人材系ウェブサービスのプロジェクトマネジメント・開発ディレクションに従事。傍ら個人で「IDENTITY名古屋」「UNLEASH」「soar」など複数メディアのディレクション・マーケティングに携わる。

縁のなかった“名古屋”を舞台にしたメディアに関わるまで

ーーまず初めに、お二人の自己紹介も兼ねて「IDENTITY名古屋」でどのような仕事をしているのか教えてもらえますか?

小山和之(以下、小山):「IDENTITY名古屋」に掲載される記事の編集を担当しています。文法的な誤り、誤字脱字、事実と異なる表記はないかなど、ライターさんが書いた原稿をチェックする作業ですね。普段は、週の半分を東京のWEB会社でディレクター・編集として働いていて、残りの時間でフリーランスとして編集やライティングの仕事もしています。

城後建人(以下、城後):僕は、小山さんが担当している編集業務以外のプロジェクトマネジメントを行なっています。例えば、編集が終わった記事の入稿管理であったり、プロジェクトの進行やマーケティング周りなど。小山さんと同じく「IDENTITY名古屋」とは別に、本業は事業会社で人材系サービスのプロジェクトマネージャーとして、プロジェクト全体のビション化や方向性の決定、プロダクトの開発ディレクションを担当しています。

ーーお二人とも「IDENTITY名古屋」の運営的な部分をサポートしつつ、本業は別にあると。そもそも「IDENTITY名古屋」で働くようになったきっかけは何ですか?

城後:僕の場合は、碇さん(弊社共同代表)が当時運営していた会社で一年半ほどインターンをしていて。結局その会社は途中で抜けることになったけど、別の機会で碇さんと偶然再会したときに、声をかけられたのが始まりでした。小山さんは、僕の少しあとにジョインしましたよね?

小山:そうだね。僕は碇さんではなく、ジュンヤさん(弊社共同代表)経由で「IDENTITY名古屋」を紹介してもらって。今働いている会社関係の仕事で初めて知り合ってから、WEB周りの相談を持ちかけたり、ジュンヤさんが開講しているライター講座「sentence」の第一期生として参加したのちに声をかけてもらったのがきっかけでした。

ーー小山さんと城後さんが、お互いに顔を合わせたときの印象って覚えてますか?

城後:小山さんと最初に会ったのは、オンライン上だった気が。

小山:そうそう!オンライン上でやり取りをしてから、実際に会ったのはinquire(※1)の集まりだったかな?印象か・・・。覚えてないな。(笑)

城後:正直、初めて会ったときのことはよく覚えてないですけど、すごく仕事を任せやすいひとだなって印象は初期から感じてました。

小山:それで言うと、僕も城後くんに対してはちゃんと仕事を回せるひとだなって印象が強かったかな。何よりオンライン上でのメッセージのレスがめちゃくちゃ早い。(笑)

ーーお互いにビジネスパートナーとして、信頼できる印象を抱いてたんですね。お二人とも副業として「IDENTITY名古屋」に関わるようになったわけですが、本業とは別に働くことに関して躊躇しませんでしたか?

城後:僕は、副業をすることに対してネックに思うことはなかったです。「IDENTITY名古屋」にジョインしたときは、今とは別の会社で新卒として働いてたけれど、思っていたよりも忙しくなくて時間的にも余裕があったので。むしろ、本業で発揮するスキルとは違う部分が鍛えられるかなって期待する気持ちのが大きかったです。

小山:僕も「IDENTITY名古屋」に関わる前から副業の経験はあったので、副業をすることに対して抵抗を感じることはなかったです。ただ、「IDENTITY名古屋」のように副業として長期で携わるのは初めてだったので、楽しみに感じる反面、少し不安でもありました。

ーー「IDENTITY名古屋」にジョインする以前に、名古屋という地域と関わる機会はありましたか?

小山:実は、乗り換えで降りたことがあるくらいで。(笑)名古屋とは縁もゆかりもなかったです。

城後:僕も生まれは福岡、大学は東京だったので、名古屋との関わりはゼロでしたね。旅行で行ったことすらなかった。

ーーそれまで関わりのない地域のメディア事業に携わるのは、相当大変だったのでは?

小山:そうですね。最初は「IDENTITY名古屋」編集部内のチャットツールで話される地元トークも全く理解できず。分からないことがあるたびに、必死で調べてました。ただ、調べ出したらキリがなくて。

途中からは、名古屋の市民性や土地柄に関わる疑問はすべて「IDENTITY名古屋」の地元ライターさんに聞くように切り替えたんです。現地のライターさんをより信頼するようになった。そしたら、思いのほか気持ち的にも楽になりましたね。

城後:大変っていう感覚は、僕の場合はあまりなかったです。「IDENTITY名古屋」に関わるようになってから、東京にいても自然と名古屋のニュースに敏感になったり、愛着が湧いてきて。(笑)初めて知ることが多かったから、そこは面白いと感じました。

ーー「IDENTITY名古屋」に携わるようになって、名古屋という街に親近感を持ち始めたわけですね。具体的に名古屋へのイメージに変化はありましたか?

城後:観光スポットが意外とない。(笑)

小山:それは、僕も思った!

城後:でも、ご飯は本当に美味しいですよね。「IDENTITY名古屋」に入って、実際に名古屋に来るようになってそう感じました。街のひとに対して広めていきたい、発信していきたいと思う魅力的な情報で溢れてるところだなって思います。

小山:コンパクトシティだよね。色々とすてきなものが名古屋駅を中心に凝縮されている感じがします。


「IDENTITY名古屋」に関わるなかで、見えてきたもの

ーーお二人は、「IDENTITY名古屋」以外のコミュニティでもお仕事をされていますよね。ほかと比べて「IDENTITY名古屋」の組織としての強みって何だと思いますか?

小山:インターン生が積極的に仕事を回しているのは、僕が関わっている他の組織と比べて大きな強みだと感じますね。

城後:同感です。とにかく、インターン生のコミットメントが高い!一人ひとりが主体性を持って仕事に取り組んでいるのが分かるし、インターン生主導で事業をちゃんと進めていくスタイルは珍しいと思います。

ーー逆に「IDENTITY名古屋」のインターン生からは、お二人を本当に尊敬しているという声をよく聞きます。忙しいなかでもテキパキとタスクをこなす姿からは想像できませんが、仕事の面で壁にぶつかることってありますか?

城後:大きな壁にぶつかったことは、特にないです。もともと、仕事が嫌だなって感じるタチでもない。あ、でも社会人1年目で副業としてフリーランスの活動もしてたときに、学生時代のインターンでお世話になった波多野さんというかたのもとで働いていた時期があって。

当時、波多野さんが手伝っていたIoTプロダクト会社でプロジェクト管理やディレクションに関して指導をしてもらっていたんですが、思い返すと結構キツかった。(笑)もちろん、得るものも大きかったんでいい経験だったと思います。

小山:僕の場合、「IDENTITY名古屋」の仕事に関して言うと、記事のクオリティをどこまで求めるのかについて悩むことが多くて。正直なところ、自分の手元にあがってくる原稿は自分で書いてしまったほうが早いものもあるんです。

けれど、編集者としては原稿を書いてるひとの良さをできるだけ出してあげたいので、そこを考えながら個人に合わせたフィードバックをするのが大変。ただ単に「ここを修正してください」というのではなく、理論的に説明することも頭を使うので。

城後:確かに、自分以外のメンバーにどこまで仕事を任せるかは難しいポイントですよね。自分で全て請け負ってしまえばいい話なんだけど、それではインターン生やライターのスキルは伸びなくなってしまう。他のメンバーを信頼して、ある程度のタスクを任せながら事業を進める大切さは「IDENTITY名古屋」を通してより感じてます。

ーー組織メンバーのオペレーションに関して、学ぶことが大きかったと。

城後:そうですね。あとIDENTITYという会社は「IDENTITY名古屋」の運営だけに留まらず、「cocorone」(※2)や「Tity」(※3)のように事業を多角化する動きが活発で。自分たちがどういう体験をつくって、ユーザーに届けられるのか。それがどう伸びて、ユーザーの価値に繋がるのかを考えて実践する風土を肌で感じられたと思います。

小山:城後くんが言ったように、IDENTITYには実践する機会がとにかく多いから、そこから学べるものは多いですよね。机上の空論じゃないというか。一つのメディアとして、真っ向から勝負している部分も面白いし、スタートアップカルチャーの気風も感じられる。あとは、人との出会いも。

それまで、「文章を書くことが好きだからライターをやりたい」という人と知り合うことはあっても「名古屋が好きだからライターをやりたい」という人には出会ったことがなくて。(笑)改めて、色んなひとがいるんだなってことを感じられました。

働き方の変化。二人が見据える先にあるものは

ーー「IDENTITY名古屋」に入ってから、1日のタイムスケジュールに変化ってありましたか?

小山:僕の場合、以前は日中は会社で働き、副業は夜にというスタイルだったんですが、今は少し違って。会社での働きかたも変わったので、本業と副業を1日のなかで交互にこなすようになりました。

それ以外、あまり変化はないです。休みの日には奥さんと買い物に行ったり、ご飯を食べに行くこともあります。体を壊すこともあまりないんですが、奥さんにはもっと休めって言われます。(笑)

城後:僕も、1日のタイムスケジュールに大きな変化はないですね。強いて言えば、無駄な時間が減ったかな。テレビを見ながらだらだらする時間とか。正直に言うと、仕事とプライベートは分かれてないです。

よく「IDENTITY名古屋」内のチャットツールで、メンバーと何かしらの連絡やコミュニケーションをとっているし、電車のなかで自分が抱えてるタスク関連のことを調べたりもする。常にぬるま湯につかってる感じですね。仕事の息抜きに、仕事をすることだってあります。(笑)でも、それを苦痛とも感じてないです。

ーー小山さんも、城後さんも自分に合った方法で適度に休息はできているんですね。将来的にも、今のような働きかたを続けていきたいと思いますか?

城後:フリーランスとしての働き方にも興味はあるけど、本業という一本の太い軸を持ちつつ、その枝先に副業があるほうが、自分の肌に合ってるかなと感じているので、今のような働きかたを続けていきたいです。

朝早く起きるのが辛いと思うことはたまにあるけれど、自分の好きな仕事ならば毎日楽しいし、副業をやっていくことで新しいスキルも身につくので、自分自身の成長にも繋がるかなって。

小山:実は、僕はもうすぐで会社を辞めてフリーランスになるんです。だから、本業という本業はなくなるんですが、もともと自分が抱えてる仕事のなかでプライオリティを人につけられるのが嫌で。あくまでも仕事の優先度をつけるのは自分。何が自分の本業なのかを決めるのも自分だと思ってます。

新しい働きかたになっても、ちゃんと睡眠時間をとれる、人間らしい働きかたを続けていければなとは思いますね。(笑)

ーーお二人とも、ちゃんと自分という人間を捉えたうえで働き方を選択されているわけですね。最後にそれぞれの夢や目標があれば教えていただけますか?

小山:短期的なものでいうと、今年からフリーランスとして働くうえでアシスタントについてもらうことになったので、自分がいなくても仕事が回る仕組みを、自分が所属するコミュニティのなかで作っていければなって思います。自分がやったほうが早いというタスクでも、相手を信用して任せる。

中長期的な目標としては、noteでやってるデザインメディアを起点に、何かできればと考えていますね。

城後:僕は、叶え組(※4)の代表格になりたいと思ってます。自分がやっているプロジェクトマネージャーという仕事は、あまり表舞台に立つことはないんですよね。でも、だからこそ、裏でしっかり表舞台を支えていけるひとでありたいなと。やりたいことがあるひとの支えになりたいなと思います。

あとは、東京にいながらも名古屋以外の地域に関わる仕事もやっていきたいですね。やっているうちにだんだんと愛着がもてるので。(笑)

ーー今だけでなく、しっかりと前を見据える姿勢。すごく刺激になります。今日は、本当にありがとうございました!

縁もゆかりもなかった名古屋での挑戦。「IDENTITY名古屋」という表舞台を陰ながら支える人物の口から発せられる言葉は、どれも確かな覚悟と自信が感じられるものばかりだった。

対談を終え、撮影のためにオフィスの屋上に移動すると、二人の背景に名古屋駅を取り囲む高層ビルが映り込む。東京からはるばる来た舞台裏の立役者を、名古屋という地が心から歓迎しているような。そんな光景が、目の前に広がっていた。

※1:株式会社inquireは、社会課題の解決や事業の成長、組織の変革に貢献する編集デザインファームである。株式会社IDENTITYの共同代表モリジュンヤが代表を務め、コミュニティメンバーとして小山氏と城後氏も所属している。
※2:「日常にある、素敵な瞬間を切り取る」をコンセプトに、明日の朝が楽しみになるような情報をお届けするインスタマガジン。2017年10月から株式会社IDENTITYが運用をスタートした。
※3:名古屋地域特化型のインフルエンサーを活用したPRサービス「Tity」(2017年10月リリース)は、IDENTITY名古屋のインターン生によって立ち上げられた事業。コミュ二ティにはファッションリーダーからフリーモデルまで多種多様なメンバーが在籍し、情報を発信したい企業のPRをサポートしている。
※4:「SAC about cookies」経営者の桜林直子さんによるnoteの記事中で生まれた言葉。夢中になる能力がある「やりたいことがある人」を「夢組」、やりたいことがない人を「叶え組」だと定義した。「やりたいことがある人」が良しとされる風潮に疑問を呈し、「叶え組」は“気持ちだけでやり方がわからないという人に手段や優先順位を見せることができる。やりたいことがある人の助けになれる”と述べた。

文:なかがわ あすか

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