バーこみみ 4
この前ね面白いことがあってさ
こういう話の切り出し方はだいたい面白くない
面白くないと言うのは失礼だから、オチがいまいちと言っておこう
もちろんそんなこと当人には言えないし
そんな勇気もない
つまらない自論を展開しつつも、声を発する人の話に耳が反応してしまう
いや反応するとは違う、耳が声のする方へ行きたがっているそんな感じ
こんな感覚は初めてだ
混乱いやパニックだ
どうしたのだろう
心が立ち振る舞いに惹かれるというなら
耳が声や話に惹かれているのだ
この店の雰囲気がそうさせているのか
はたまた変な魔法をかけられているのか
とにかく
わたしは誰かに操られている
いや、感覚を操作されているのだ
しかも聴覚を重点的に
勝手な想像をしただけなのに
鳥肌が立った
誰の仕業だろう
想像しただけなのに他人に責任を押し付ける
悪いと思いつつ
この場合は誰のせいにするのが正解かな
必死で耳を話しから逸らすように
思考を巡らせる
飲み込まれてはいけないと