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「雑誌撮影裏話」


1990年頃、講談社の看板雑誌で、モデルがらみのジュエリー撮影をすることになった。
打ち合わせも終わり、帰宅するとしばらくして電話がかかってきた。
担当編集者からだったが、「イデさん、ごめん。あの特集は物撮影だけお願いします」。
理由はこうだった。

ある、当時有名だった女性専科の写真家が、たまたま、その特集の事を耳した。
そして、
懇意にしていたその編集者に、「そのモデル撮影、自分に回してくれないかな」
とお願いしたらしい。

こちらは、仕事をいただく立場だから、仕方ないと思ったが、大御所も大変なんだな。と思った。

その写真が掲載された時に
やはり、作家は、個性を100%出せる自分の土俵でないと、平々凡々な写真を撮るもんだな。
と思った。しかし、さすがに美しい写真だった。

その頃の女性専科の写真家は、
高度成長時代に物や建築やいろんな写真を撮っていたから。
みんな、上手かった。
氷山ではないが、水面下の部分の厚さがよく分かる写真だった。

今、そんな現役、ほとんど見かけない。
多分、仕事量が原因だと思う。
カメラマンは仕事に比例してしたたかに上手くなっていく。

仕事経験が豊富なカメラマンは、その才能に関わらず写真を見るとすぐに分かる。
自分が発注する立場に立って作品を見ることがあるが、多少のセンスや才能の差より、発注する側は、そのカメラマンの経験量からくる安定性、安心感を考慮して仕事を依頼する。


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