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④お茶漬け

真昼間に家に帰った私に、夏休みで自宅にいた娘は「仕事は?」とすぐさま聞いてきた。「今日は研修で午後は帰れてん。」と嘘をついた。ふーんと、娘はたいして疑うこともなく、リビングでの勉強を再開した。娘は高校3年生、一応受験生だ。
私は無気力に横たわった。心も体も疲れ切っていた。その疲れは、もちろん歩いたことではない。腐り切った自分、情けなく、腹立たしく、悔しく、そして大切な彼に対してことごとく相手の想いを踏み躙り、苦痛を与え続ける自分の考えと行動に、疲れ果てていた。気がつくと少しの間そのまま眠っていた。
どのくらいたっただろうか、頭に〝ガンッ〟という激しい衝撃で目が覚めた。目が覚めてハッとした、衝撃など受けていない。夢???夢を見ていた記憶は一切ない。今の衝撃は何だったのだろうか。今朝の彼の怒りを思い出した。

休みの度に彼のところへ行っていた私は、家に帰ることが少なくなっていたので、早く帰ってきた私に娘は喜んでいた。もしかしたら、何かを察知していたのかも知れない。リビングで勉強しながらも、〝何か飲む?〟〝お腹すいた?〟などと私を気に掛けてくれていた。
夕食の時間になり大してお腹も空いていなかったが娘が「何食べる〜?」と聞いてくれたので、「お茶漬けが食べたいなぁ、あったかいお湯かけて…」と言うと、「OK♡」と言い、準備をしてくれた。
そんな様子を見て、心も体も腐った私はこんな優しさをもらって良いのか?私は今独りではないが、彼は店に独り。私が行かなければカウンターの中は独りだ。きっと怒りと苦痛と寂しさに耐えながら仕事をしている。それを分かっていてここでお茶漬けを食べる私は、やはり腐りきっている。情けなかった。
娘が作ってくれたお茶漬けは、めちゃくちゃ美味しかった。ひと匙づつ、腐り切った心と体に沁みわたった。涙が出た、それを隠しながら〝美味しい〜❣️〟と大袈裟に言い誤魔化した。少なからず、歩き失われた塩分も補給されただろう。どこまでいっても自分が情けなかった。食べ終わり、再び横たわり目を閉じた。眠るでもなく起きるでもなく、彼への想いをめぐらせながら、ただ時間が過ぎるだけだった。それを繰り返し、そしてようやく朝を迎えることが出来た。

✳︎読んでくださりありがとうございます。
続きは次回の投稿で。

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