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【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第一部 第十二話「魔法使い」
第十二話「魔法使い」
「大体守るって何から守るの?
まぁ、違う世界に飛ばされてるんだから、
そういう意味では守らないと危険が伴うと思うけどね」
彼らも首を傾げる。
ここがどんな国かも分かっていないし、
妖精にとっても初めての場所。
祖母は王子が飛ばされることを予見していたのだろうか。
有名な占い師だったと言うし………って、待てよ。
ということはだ。妖精が来ることも分かってた?
祖母がどうしてもこの家を私に残したかったのは、
そういう事?
瑠璃は王子と生意気なガキの妖精を見つめた。
「ふぅ」
小さなため息をつくと口を開いた。
「あなた達この子を守るって言ったけど、
その小さな体でどうやって守るの。
王子もここじゃ少し異質な子ってだけで、
殺される目にあうことないと思うわよ。
事実、祖母も父も普通に暮らしてたし………」
瑠璃はそこで少し考えた。
問題があるとすれば、
昔と違って戸籍のごまかしがきかない。
無戸籍調査もねぇ………
成長が早いのはかなりマズイ。
下手をしたら人体実験されちゃう?
あははは………まさかね。
でも、祖母と父は、
人間と変わらず成長してたんだよね。
という事は、この子も一定の大きさまで成長したら、
通常の人間並みになるのかな?
!!
瑠璃は祖母が残した手紙を思い出すと、
慌ててバッグから取り出した。
後で読もうとこれだけバッグに入れておいて、
すっかり忘れていた。
瑠璃は封筒を開けると中身を取り出した。
だが、出てきたのはネックレスと、
何も書かれていない便箋が一枚だけ。
なに………これ。
瑠璃がじっと見つめていると、
「おお~これはエリス様の紋章のネックレス」
緑の子が驚きの顔になった。
瑠璃は便せんを透かして目を細めた。
どう見ても何も書かれていない。
どういう事?
瑠璃が眉間にシワを寄せていると、
「それは魔法で文字を浮かび上がらせなければ、
読むことは無理よ」
黄色い髪の女の子が言った。
「魔法? そんな力ないもの。
あっ、だったらあなた達魔法使えるんじゃないの?
これ読んでよ」
「それは無理」
「なんでよ」
瑠璃が赤紫の髪の男の子を見た。
「それはエリス様の血縁者しか読めません」
「だったらどうすればいいの? 」
そこまで言って膝に座る王子を見た。
「血縁者ならこの子も読めるわよね。
どうせすぐに大きくなるでしょ?
だったら読んでもらえば」
瑠璃が妖精たちの顔を見回した。
「どうだろう。
血縁と言っても血が遠いから読めるか分かんないよ。
それに魔法使えるようになるのは何年も先だよ」
ピンクの髪の男の子が紙をのぞいた。
「だったらどうすれば………」
瑠璃がそう言ったところで、
妖精たちの視線が集中した。
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