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【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第一部  第八話「竹から生まれた王子」



第八話「竹から生まれた王子」

「お祖母さん? お祖母さん、どこ? 」

瑠璃の声だけが室内に響き渡り、
呆然と部屋に立ちすくんだ。

そして祖母が手を伸ばした先に向かう。

えっ? 壁? 

あ………裏庭! 

瑠璃は慌てて玄関を出ると家の裏に回った。

そこには小さな木戸があり、
瑠璃は静かにそれを押すと足を踏み入れた。

小さいけれど綺麗に手入れされた竹林だ。

瑠璃の体がふわりと軽くなり輝いた。

その光と合わさって、中央の竹が輝き始めた。

………かぐや姫………? 

まさかね。

瑠璃は笑うと竹に近づいて行った。

これって鎌で割ったんだっけ? 

いや、割ったら死んじゃうわよね。

あっ、竹の中から浮かんで出てきたんだっけ? 

瑠璃がそんな事を考えていると、
竹が突然真っ二つに割れ、
中から赤子が飛び出してきた。

赤子はふわりと浮かぶと、
瑠璃の目の前で止まった。

慌てて手を差し出すと、
その浮かぶ赤子を抱き止めた。

えっ? えっ? えっ? 

驚いているうちに割れた竹が、
再び元の竹へと形を戻した。

ええええ~~~~~~~~っ!! 

瑠璃は声にもならない悲鳴を上げると、
その子供を抱えてオタオタし始めた。

わ、私、子供なんて生んだことない。

育てたこともない。

これどうすればいいの。

け、警察? 

えっ、なんて説明するの?

どうしよう。どうしよう………

瑠璃は暫くあたふたと動いていたが、
少し経って落ち着きを取り戻すと赤子を見た。

すやすやと寝ている。

こ、この子って、やっぱり人間じゃないよね。

竹から生まれた? 出てきた? んだもの。

かぐや姫は宇宙人だという説もあるし、
お祖母さんがこの子を守れって言ったのだとしたら………
お祖母さんも宇宙人?

じゃあ、お父さんも? 

わ、私は………宇宙人と人間のハーフ? 

瑠璃は先程まで光っていた自分の姿を思い出した。

今は私もこの子も光っていない。

瑠璃はどうしていいか分からないまま、
とりあえずこの子を守らなきゃ、
と家へと歩き出した。

――――――――

会社に行くと、

「体調どう? よくなった? 」

美津子が聞いた。

「すいません。もう大丈夫です。
祖母の事とか突然いろんなことが起こって、
どっと疲れが出たみたい」

瑠璃は謝ると自分のデスクの席についた。

竹林で赤子を拾った後、
色々あって瑠璃は翌日会社を休んだ。

「結局、悩んでいた家はどうするの? 」

美津子はビーズアクセサリーを組んでいた手を止めて、
瑠璃を見た。

「一応、通えないこともないから、
そこから通勤することになると思います」

「そう。大変ね。
でも、家賃を考えたら、
そのほうがいいかもしれないわよね」

「ん~分からないけど、あの家リフォームされてて、
小さな家だけど十分きれいなんです。
だから私が住んでもいいかなって」

「地方でも綺麗な戸建てなら、
古くてもいいじゃないですか」

翠もビーズブレスを作る手を止めて、
いいな~と言う顔をした。



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八雲翔
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