【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第一部 第四話「祖母の残したかったもの」
第四話「祖母の残したかったもの」
「はい、間違いありません。
おばあさまは遺言書も残されておりますので、
一度こちらに来ていただけないでしょうか」
「遺言書? 」
遺言書に残すほどの秘密でもあるの?
「あの、失礼ですが、
この番号はどこで? 」
「おばあ様は瑠璃さんの御住まいもご存じでしたよ。
私も一度ご連絡をしたらどうかと聞いたんですが、
迷惑をかけてしまうと言われて」
迷惑?
瑠璃は怪訝そうな顔をすると、
「その場所はどちらでしょうか? 」
と聞いた。
「○○県です。蒼川様がお住いの場所から、
一時間ほどかかりますが通勤圏内です」
一時間!?
瑠璃はびっくりしたものの、
一度お伺いしますと言って電話を切った。
電話から三日後。
半日休暇をもらって伍代がいる不動産屋へと出かけた。
電車の乗り継ぎが数回。
駐車場があるなら車の方が早い。
駅を降り、少し歩いた先にその不動産屋はあった。
住居兼事務所なのだろう。
地元に古くからある会社のようだった。
瑠璃がドアを開けると、
中から六十代くらいの女性が椅子から立ち上がった。
「蒼川様でしょうか」
電話と同じ声だ。
「はい」
瑠璃は頭を下げて中に入った。
「お電話を差し上げた伍代です。
御足労頂き申し訳ありません」
「いえ、こちらこそ全てして頂いたそうで、
申し訳ありませんでした」
「立ち話ではなんですので、どうぞこちらに」
彼女はそういうと奥の部屋へと案内してくれた。
中には瑠璃より少し若いくらいの男性が一人、
ソファーに座っていた。
「どうぞ。お座りください。
今、お茶をお持ちしますね」
「あっ、これつまらないものですが、
どうぞお受け取り下さい」
瑠璃は手土産の袋を差し出すと、
「お心遣い有難うございます」
と受け取り、伍代は部屋を出て行った。
瑠璃がこの人は誰だろうと思っていると、
「申し遅れました。
私は蒼川エリス様の資産管理をしております米倉です」
瑠璃は向いの席に腰を下ろすと、
テーブルに差し出された名刺を手に取った。
「あの私にお話があると聞きましたが」
そう言ったところで伍代がお茶を運んできた。
「どうぞ」
「すいません」
瑠璃が頭を下げると、
「私は向こうにいますので、
何か御用がありましたらお呼びください」
伍代はそういって事務所に戻って行った。
「書類関係は全て私どもが処理しましたので、
問題はありません。ただ一つ。
あの土地だけはお孫さんである瑠璃さんに、
残したいという事でした」
「相続と言われても………」
瑠璃が口籠ると、
「あの土地は基礎控除内のものなので、
相続税の問題はクリアできますが、
そういう土地なので売るとしても、
大した金額にはなりません。
それでも裏に竹林がありまして、
家も小さな平屋ですが、
三年前に作り替えをされていますので、
十分綺麗ですし住むのに困ることはないと思います。
え…現在お住まいは東京だそうですが」
米倉が瑠璃を見る。
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