【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第一部 第五話「祖母の家」
第五話「祖母の家」
「はい、仕事場の近くにアパートを借りています」
「そうですか。
もし処分されたいのでしたら、
伍代さんにお願いされればいいと思います。
ただ、おばあさまは最後まで、
あなたにとおっしゃっていましたので。
土地に思い入れがあるのだと思いますよ」
「祖母はどうして私に連絡をくれなかったんでしょうか。
父は祖母の事を知っていたんでしょうか」
瑠璃はぽつりと言った。
「私にもその辺はよくわかりませんが、
私の祖父母とおばあさまは若い頃からの付き合いだそうです。
そのあとから蒼川エリス様に関しては、
うちで代々引き継いでいます」
「そうですか。ちなみに祖母は病気で亡くなったんでしょうか」
「いえ、ご自宅で伍代さんとお茶をされていた時に、
ちょっと席を立ったら座椅子に持たれていて、
最初は寝てるのかと思ったんだそうです。
そのあとに異変に気付いて主治医を呼んで、
そのまま………
御年九十歳で老衰とのことでした」
米倉はそういうとお茶を一口すすった。
「祖父母ももう亡くなっていますし、
父もおばあさまと祖父母の事については、
ご友人という事だけで、
あまり話したがらないので、
何か事情があるのかもしれません。
なので私も詳しいことは」
「そうですよね。
祖母がそれほど思っていた土地なら、
一度見てから考えさせていただきます」
「分かりました。
必要な書類だけ揃えていただければ、
相続手続きはこちらですべて行います。
生前おばあさまにはお世話になりましたので、
金額の方もいりませんので」
「えっ? 」
瑠璃が顔をあげると、
「負動産かもしれませんが、
この辺りは土地も値上がりしてますから、
それなりに財産価値はありますよ。
数百万ということはありませんから、
ゆっくりお考えになってください。
ただし、固定資産税、修繕など家にかかるものはありますが、
それも少ないですが預貯金が多少残ってます」
米倉が笑った。
瑠璃にとっては思ってもみなかった幸運話ではある。
「有難うございます」
「で、遺言書の方ですが、
弁護士から預かってまいりました。
遺言書というよりお手紙のようです。
これは今お渡しします。
権利書などの書類は、
手続きが終わりましたらお渡しします」
「はい。あの………」
瑠璃が静かに口を開いた。
「祖母は一体、どのような暮らしをされていたんでしょうか」
話を聞いていると、それなりに暮らしていたようだ。
「おばあさまはかなり御高名な占い師でしたよ。
国中のお歴々が列をなすぐらいの、
その界隈では有名な方でした。
そういう方々を占っていたので、
取材もNGでご存じないですよね。
なのでお金に困るという事はありませんでした」
「そうですか」
瑠璃の小さな吐息を見て、
米倉が話した。
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