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【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第一部  第九話「王子と小人?」



第九話「王子と小人?」

「今度遊びに行ってもいいですか? 」

「いいわよ。言っておくけど狭いわよ。
老人が一人で暮らしていた平屋だから」

瑠璃は笑うと、

「注文てどうなってるの? 」

と聞いた。

「今週は天然石のブレスとネックレスが売れてるから、
ずっとゴム通してて目がしょぼしょぼ」

翠が笑った。

「社長は昨日からタイに行ってる。
優子さんも同行してるからサボらないと思う」

優子は営業も担当しているので、
買い付けの際には同行することも多い。

「そっか」

瑠璃は美津子を見て笑った。

「ちょっと抜けてもいい? 」

「いいけどどこ行くの? 」

翠が瑠璃を振り返った。

「田中さんの所」

近くの不動産屋の名前を言った。

「アパートの事? 」

「ん~それもあるけど、
もう一つお願いしたいこともあって。
帰りに千佳ちゃんの所でお団子買ってくるけど、
何食べたい? 」

千佳とは近所のお団子屋の看板娘だ。

「私はみたらしとゴマ」

「私は~ヨモギと海苔」

美津子と翠が言うと、

「俺は粒あんときな粉~」

パソコン画面から顔をあげて春木が手をあげた。

「分かった~」

瑠璃はスマホにメモすると会社を出た。

――――――――

瑠璃は道を歩きながら、
竹から現れた子供の事を考えていた。

竹林から赤ん坊を抱えて出てきた瑠璃は、
誰にも見られないように家に戻った。

さて、どうしよう。

そんな事を思っていると、
赤ん坊の胸が光り輝いた。

驚く瑠璃がその胸に手を置くと、
そこには見たこともない鉱物があった。

なにこれ………

ジオードの様なそれは中から光を無数に放つと、
小さな何かが飛び出てきた。

えっ? 小人? 

赤ん坊と変わらない? 

いや、もう少し小さな………

白雪姫に出てくる七人の小人? のように見えた。

でも、一、二、三………十四? 

小人は十四人飛び出してきた。

「はぁ~やっと出てこれた」

「ここどこ? 」

「王女に守れって言われて無理矢理来たからね」

小人たちがぶつくさ文句を言うように喋りだした。

そしてその中の一人が瑠璃に気が付くと、

「誰? このおばさん」

おばさん? まぁ、間違いではないけど、

小人ってこんなに失礼な生き物なの?

物語では可愛いのに。

おばさんと言った青い髪と瞳の男の子? 

が瑠璃を見上げた。

「あなた達こそ誰? 
私の家に勝手に現れて好き勝手に。
失礼な小人ね」

「小人? 失礼なのはあんたよ。
私達は宝石王国の由緒ある妖精よ」

「宝石王国? なにそれ。アニメみたい」

瑠璃はふき出すと笑った。

もうこうなると何が起こっても驚かない。

「そういえば………この女、
王女に似てる………? 」

先程のおばさん発言の男の子が首を傾げた。



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八雲翔
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