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【連載小説】『お喋りな宝石たち』~竹から生まれし王子様~第一部  第十六話「宝石料理」


第十六話「宝石料理」

やだ!

瑠璃が驚いて手のひらを口に置く。

ローレントーマサイト? 

ボレアイト?

希少な石がゴロゴロ出てきた。

も~宝の山じゃん。

瑠璃が声も出せずにいると、
杖を振り、あっという間にゼリーのような、
美しいケーキが現れた。 

「これ………食べられるの? 」

瑠璃が聞く。

「食べられるわよ。
口の中でとろけるような食感で美味しいのよ。
瑠璃にもこれくらい作ってもらわないと」

「む、無理でしょ。
杖もないし、どうやるか分からない」

瑠璃が手と顔を同時に振って否定した。

「杖は代々受け継がれていくからエリス様が残してるはず。
魔法が使えれば、自然と杖が出てくると思うわよ」

魔法って………一体どうやれば扱えるの?

私が知ってるのは………さくらちゃん? どれみちゃん?

あれ? なんか呪文唱えてた?

あ~どうすればいいの。

誰か助けて~

この役立たずな妖精は所詮は王子の付き人?

いきなり魔法ばばあになっても、
何もできないんですけど~

瑠璃が頭に両手を当てて悩む姿を、
妖精たちがじっと見ていた。

「な、なに? 」

「面白いばばあだなと思って」

リチアが笑った。

「あのね~
誰でもいいから私に魔法を教えて下さい」

「魔法って言われても…パッとやってサッとやって、
ポンって感じ? 」

レモンが杖を振りながら言った。

そ、それって天才がよく言うやつだよね。

フィギュアスケートで、
サーと滑ってポンって飛ぶみたいな? 

全然分からない~

そんな事で悩んでいると、

「王子がいない! 」

「えっ? 」

ラピスの声に瑠璃と他の妖精も慌てて振り返った。

「王子? 王子どこ? 」

瑠璃が慌てて和室を見ると、
祖母のキャビネットに上ろうとする姿があった。

「危ない!! 」

瑠璃はフォスを守るように飛び込んだ。

するとどういう訳か、
時間がスローモーションのようになり、
フォスは瑠璃の腕の中に落ちた。

瑠璃は抱き止めるとリビングへ転がって行った。

ゴンッ!! 

瑠璃の頭が軽く床に当たる。

「痛っ~」

瑠璃は頭に手を振れる。

片手は王子をぎゅっと抱きしめていた。

子供は十秒目を話したら、
何が起こるか分からない生き物だ。

瑠璃は王子を膝に乗せると、

「どこか痛くない? 」

小さな体を隈無く調べた。

ちょっとした怪我ならすぐに完治するのは分かったが、
大怪我してもここに大魔法使いはいない。

王子はニコニコ笑うと、

「はい」

と木の棒を瑠璃に渡した。

「えっ? 」

ハッとしてその棒を手に取ると眺めた。

もしや………これが魔法の杖?

どこにあったの?

まさかあのキャビネット?

瑠璃は驚いたままフォスを見つめた。

「瑠璃の魔法は凄いな。
空間魔法だ。上級じゃなきゃ使えないぞ」

エメが言った。

いつの間にか妖精たちが二人を取り囲んでいた。

「えっ? 私が魔法? 
違うでしょう? 王子がこの杖でやったのよ」

「王子にはまだ無理だ。
魔法が使えるようになるのは、
最低でも十歳になってからだ」

「王子には杖の隠し場所が見えていたのね。
この小ささで見えるなんて、
さすがはリノン様の子だわ」

ザクロがモルガを見た。

「これで瑠璃は大魔法の使い手だと分かったぞ。
安心して王子を見てもらえる」

笑顔のネルに、

「ちょ、ちょっと私魔法なんて使えない」

「今使ったじゃない」

否定する瑠璃にクリソスが言った。

「さぁ、これで安泰です。王子、食事をして、
体に宝石の免疫を付けましょう。
ここは宝石王国とは違います。
この国の宝石王子に負けるなんて王子にはあり得ません」

フェーンはそういうと、
王子と一緒にテーブルに向かった。



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八雲翔
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