風景と詩①:小豆島・坂手港の丘の詩碑と歌碑
風景と詩碑と歌碑
〜『海図』(生田春月)・『桃栗三年』(壷井栄)〜
生田春月詩碑『海の詩』
甲板にかかってゐる海図。
これはこの内海の海図だ。
じっとそれを見つめてゐると、
一つの新しい未知の世界が見えてくる。
普通の地図では、海が空白だが、
これでは陸地の方が空白だ。
ただわずかに高山の頂きが記されてゐる位なものであるが、
これに反して海の方は水深やその他の記号で彩られてゐる。
これが今の自分の心持をそっくり現してゐるやうな気がする。
今迄の世界が空白となって、
自分の飛び込む未知の世界が、彩られるのだ。
壺井栄歌碑『桃栗三年』
桃栗三年、柿八年、
柚子の大馬鹿、十八年
『小豆島の坂手港の丘にある詩碑と歌碑』(碁石山)
静かに黙ったまま見詰めていた
白銀に輝く瀬戸内海を
小豆島の坂手港から出発して神戸港へと向かうフェリーの航路の跡が
いつまでも消えないのがとても不思議だ
瀬戸内海は母親の胎内ように温かくて穏やかな海なのだ
この美しくて穏やかな海をこよ無く愛した人々のことを思うと心が熱くなってくる
涙が頬を伝ってくるのだ
あの坂手港近くの高台のどこかに
小豆島を愛した二人の作家の詩碑と歌碑がある
断崖絶壁に建立されている第2番霊場「碁石山」の小さな御堂にお祀りされている波除不動明王
静かに心を込めて頭を垂れて掌を合わせた
お導き下さいましてありがとうございます
やっと幼い頃の両親に出会うことが出来ました
さあ生田春月と壺井栄に会いに行こう
自ら飛び込む「未知の世界」は永遠に輝いている
だからこそ絶対に自ら飛び込んではならない
天から与えられた「命」(みょう)は自分だけのものではないのだから
佐藤 克文
【備考】(ウキペディアより拝借)
①生田 春月(1892年3月12日 - 1930年5月19日)・鳥取県産まれの詩人。
ハインリヒ・ハイネなど、外国文学の翻訳も多い。妻生田花世は平塚らいてう主宰の「青鞜」同人作家。本名は清平。
②壺井 栄(1899年8月5日 - 1967年6月23日)小豆島・坂手産まれの小説家・詩人。旧姓、岩井。
主に一般向小説および児童文学(童話)を主領域に活躍した作家で、戦後反戦文学の名作として後に映画化された『二十四の瞳』の作者として知られる。夫は詩人の壺井繁治。
③生田春月は大阪港を出港した船から消えて、小豆島の坂手港に流れ着いた。
壷井栄は坂手港から大阪港へ向かった。
壷井栄は故郷の坂手を訪れた時は生田春月の詩碑を訪れて花を手向けて掌を合わせた、と言う。
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