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ideaboard® 開発ストーリー連載 #9_外部パートナー編 | GK Kyoto

この連載では、中西金属工業株式会社(以下、NKC)が、2019年に発売した新しいホワイトボード『ideaboard®(アイデアボード®)』の開発に関わったプロジェクトメンバーから広く話を聞き、ideaboardが世に生み出されるまでのストーリーを記録します。
第1〜8回は開発者であるNKC 社長付 戦略デザイン事業開発室 KAIMENの長﨑 陸さんに、第9回以降は外部パートナーのみなさまにインタビューしています。

過去の記事はこちらから

今回お話を聞くのは、総合デザイン事務所 GK Kyotoのプロデューサー山本さんと、デザイナーの石田さん。長﨑さんの以前の職場でもあるGK Kyotoで、どのようにideaboardの原形となるボードが運用されていたのかお伺いしました。

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(左) 山本 尚志 / Hisashi YAMAMOTO
GK Kyoto 第2デザイン部 プロデューサー
(右) 石田 祐基 / Yuki ISHIDA
GK Kyoto 第1デザイン部 

1. 社内ではホワイトボードではなく持ち運び可能な簡易ボードが主流

ーまずはお2人の普段のお仕事について教えてください。

山本さん(以下敬称略):社内でやってることは”何でも屋”です。肩書きはプロデューサーとなっていますが、要は仕事を取ってきていろんなメンバーをつなぐ仕事です。

GK Kyoto(以下GK)はもう20年くらい前から、自分たちの仕事は「経営支援型デザインサービス」だと言っているんです。形や色はもちろんですが、クライアントと共同でデザインするプロセスそのものをひとつの資産として認めてもらおうという考え方です。そのために、社内外で人やアイデアをつないでいくというのが最近のメインの仕事ですね。

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山本:うちの社員はほぼ全員がデザイナーで、会社経営としてプロフェッショナルがいるのは、経理や総務の数人だけなんですよ。だから私も基本はプロダクトデザインがベース。水上バイクのデザインをずっとやっていました。アメリカでは、夏の乗り物として各家庭で水上バイクを持ち、年間数万台売れているような商材なので向こうに駐在したり、アトランタのオフィス立ち上げもやらせていただきました。

石田さん(以下敬称略):僕はまだ、山本さんのようなプロデューサーの下について動き回っている現場のデザイナーです。今アメリカに駐在している社員と代わる形で2020年から、KAIMENチームの一員としても一緒に仕事をさせてもらっています。

ー以前、事務所にはホワイトボードがなかったとお聞きししました。使う文化ではなかったのでしょうか?

山本:なかったですね。昔はA全サイズのスチレンボードに、持ち手のように穴をあけたり、グリッド状にテープを貼ったり工夫しながら使ってたんですよね。今でいうフリーアドレスのように、プロジェクトごとになんとなく人が集まって作業する事が多かったので、ホワイトボードだとその場所にゴロゴロ引っ張って運んでいくのが大変で。
ただホワイトボードを使っていなかった一番の理由は、保存できないことだと思います。ホワイトボードは、次の人が使うときに前のものを消すのが当たり前じゃないですか。パネルやボードなら、そこにたくさん書いたり貼ったりしていてもそのまま自分のもとで管理できるので便利で。それぞれ複数のプロジェクトが同時に動いているので、今日はこのプロジェクト、と各自引っ張り出して使っていました。

その頃は、『もうアイデアは出ない!と絞り尽くしてから出るアイデアにこそ価値がある!』という時代。だからそこに至るまでの努力も含めて可視化できるのがA全サイズのボードだったんです。今のプロデューサー世代は、「それ、朝までに満タンにして(ボードをラフアイデアで埋め尽くして)。」って言われて夜中に泣きながらアイデア出したりしてましたね。

石田:今もそんな風にそれぞれがボードを使ってそのまま保存しておくので、たまっていく一方です。レイアウト変更や大掃除のときには、終わったプロジェクトのボードから資料やポストイットを外していくのが最初のスタートみたいな感じ。2-30年前のポンチ絵とか、商品やサービスが生まれる前のスケッチとかが出てくると、歴史を感じますね。

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ースチレンボードを使っていた頃から、より使いやすいようボードが改良されていったとお聞きしました。

山本:まずスチレンボードは価格が高いのと、すぐ汚れたり破れたり割れたりするんです。
そこでまず安いプラ段(プラスチック段ボール)にしようと。最初はすごくいい感じ。安いし、使い捨てでもどんどん使える。でもしばらく立てかけて保管していると、だんだん反っていって一人で立てなくなって、それが重なってさらにどんどん反って倒れてしまうんです。
これはダメだと、スタッフの1人がアルミのCチャンネルを使って、周囲を補強し始めたのがフレーム付きプラ段ボードの最初だと思います。
それを一番使っていたのは、やっぱりその前後に入社してきた長﨑さんですよ。そこに書き始めたのも長﨑さん。他の人は資料やポストイットを貼ることが多かったです。
今も社内では当たり前のように「ボード持ってきて」「スケッチ貼っといて」「確保しといて」みたいな会話は飛び交ってますね。

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石田:大体みんな使って貼りっぱなし、抱え込みっぱなしにしてしまうんです。だからまず「ボードを確保する」という準備が生まれますね。事務所に10数枚は常にあるはずなんですが、大掃除のあとに置き場を決めても日に日に無くなっていきます。

2.使い慣れたボードがまさかの商品化 !?

ーideaboardについて、一番最初のアイデアを聞いた時の事は覚えていますか ?

山本:覚えてます。天満のスタジオで初期のプロトタイプを見たときが最初かな。
別件で打ち合わせに行ったときに見せてもらって、正直なところ「あ、こいつこれ商品にしたな!」っていうのが最初の感想ですね。笑

ー実際に事務所にideaboardのプロトタイプが持ち込まれたとき、どんな使い方とどんなフィードバックをされましたか?

山本:使い方としてはやっぱり資料やアイデアを貼ることが中心で、ただ、ideaboardの特性もあって書くことも増えたとは思います。

フィードバックとしては、自立させるスタンドがちょっと不安定じゃないかという話は覚えています。片手で書くときに、もう片方の手で抑えずに書けるくらい固定したい、でも持ち運びには軽い方がいい、とか。自立しそうなんだけどしていない、というのが中途半端でいけないんじゃないか、それならいっそ自立させない方がいいと。実際社内では基本的に壁に立てかけて使ってましたしね。

石田:僕は座ったときの目線に横向きでideaboardを置きたいなと思って、無理やり横向きに置いて使っていましたね。自転車のハンドルを90度曲げてハンドルポストとシートの上にのせて。チームで話したあとに自分の席に戻ってすぐぱっと書いて、というのを繰り返すスピードあげようと思ってやっていました。

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ー今は事務所の全壁面がホワイトボード仕様になったそうですね。持ち運びできるideaboardやプラ段のボードはどのように使われてますか?

石田:結局ホワイトボードの面も限られているので、自席の近くでやりたいときにはボードを使わないとできないんですよね。だから事務所内にはプラ段とideaboardがたくさん並んでるみたいな状態です。

山本:これまでのホワイトボードと違って、簡単に動かせることがより良いのは、簡単に裏返せるということもあります。オフィスには時々、機器メンテナンスなどで業者さんが入るので、守秘義務対応のアナウンスがあれば、みんな裏返して隠したりしています。

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3. 開発の要は、堅実な課題解決と周りを巻き込む推進力

ーideaboardの開発を見ていて印象に残っていることはありますか?

山本:ものづくり段階まできて、複雑に入り組んだ製造課題について悩まれていたとき、それらを一発で解決するメーカーを見つけた!て目を輝かせて仰っているのがすごく印象に残っています。長﨑さんらしいなと思いましたね。
僕らデザイナーって、夢のような解決策や今までにないものを生み出すことは何となく得意かなと思うんですが、それを本当にモノにする力というのは実はすごく弱くて。そのためにはいろんな技術や、商流のことまで理解する必要があるから。KAIMENチームはデザイナーなのに、しっかりモノに落として、採算をとって商売にするところまで一気通貫でやるのがすごいなと思います。

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石田:ideaboardの開発の時は、あまり苦労されている面は見てなくて、輝いている部分をずっと見てたかもしれないですね。プロトタイプができた時の紹介の仕方やプレゼンとか、やってる事を語る様とかはやっぱりすごいなと。たぶんその裏で結構色々走り回ったり、板挟みにもなってるんだろうと思うんですけど。

ー最後に、今後ideaboardやKAIMENチームに対して期待することがあれば教えてください。

石田:KAIMENのように、小さい組織で少数精鋭でどんどんまわしていくやり方は今の時代に合っているのかなと思っていて、そこを間近で見られるのは嬉しいですね。一方で業界の抑えどころのような方面にもパイプを持っていて、一発打ち上げるだけじゃないしっかりとした下地もある。両立してるのがいいなと思います。
あとはKAIMENのプロジェクトを通していろんな方とつながったり、一緒に仕事してみたいなって思いますね。やっぱりGK内にはいないタレントの方が外にたくさんいるので、そこで学んで、GKにとってもメリットになるよう持ち帰っていけたらいいかなと思います。

山本:(長﨑さんが)同じ会社にいたときは、やっぱり上下関係がある関係性になってしまうんですけど、今は僕らのクライアントとして、いろんな話を聞けたりして刺激になりますね。長﨑さんは自分を曲げずにしっかり主張しながら周りを巻き込むのがすごくうまい。だから私自身も気付いていないようなタレントの部分を見て、必要な時はうまく巻き込んでくれる人だと思ってるんです。GKの他にもブレーンとなるパートナーがたくさんいるんだと思うし。そういう意味ではビジネスというより個人としても、必要なときに求められることを出せる自分でいたいなという気持ちです。

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次回 ideaboard 開発ストーリー連載_#10 へ続く
(取材・文 / (株)NINI 西濱 萌根,  撮影 / 其田 有輝也)

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